player.addtale 4 未知との遭遇
突然現れた美少女…のフィギュアがのような存在が浮いている事に一瞬戸惑ってしまった。
まあ順当に考えれば管理人さんが言っていた説明役なんだろうけど。
見た目は管理人さんそっくりだが、身長は約30㎝、耳がエルフのように尖っている。背中に妖精のような羽が生えているが、直接生えているわけではなく、体から少し浮いている状態。羽の見た目も昆虫の羽とかではなく、透明な板という感じで、生物的な印象がない。
管理人さんはヒロイン候補にしてもいいのよとかなんとか言っていたが、さすがに身長30㎝は守備範囲外である。困った奴だ。
「おっ、起きたっスねご主人。いやー、いつまでたっても起きないから面倒になってどっかにいく所だったっスよ」
まさかのっス喋りのご主人呼ばわりである。
管理人さんは俺の人格データから作ったとか不穏な事を言っていたが…。
俺はこんなキャラじゃないぞ。
というかどこまで俺なんだ?
まったく一緒なら自分自身と会話する不毛な状態になるが、しゃべり方からしてそんなことはなさそうだし。
ちょっと試してみるか。
俺はまじめくさった顔を作ると右手を挙げて、中指と薬指、人差し指と親指の間を開いた状態で手のひらを相手に向けた。
するとそれを見た美少女フィギュア(仮)も同じような表情になり、同じポーズをとってこう言った。
「長寿と繁栄をっス」
「って何やらせるんッスか!わたしは異星人じゃないっスよ!
いや確かにエルフ耳はついてるっスけど…。
そもそも初対面なんスからもう少し聞くこととかあるっスよね!?」
うーむいいノリツッコミ。
しかもネタをちゃんとわかっている。
と言っても俺もそこまで詳しいわけでもなく、劇場版を何作か見た程度なんだけどな。
どこかで人格の形成には記憶が必要と聞いた事があるが、おそらくこの子は俺の記憶を一部かもしれないが引き継いでいる事は確認できた。
『すまない、初めて目にするしゃべる美少女フィギュアだったからつい。
管理人さんが言ってた説明役…なんだよな?』
「人を美少女フィギュア扱いとかちょっとご主人の人格を疑うっス。
そしてこんな人がわたしの元なのかと思うとショックを受けるっス。
まあそれでも役目を果たそうというわたしの健気な所に自分で感心しちゃうっスよ。」
「コホン、改めまして、初めましてご主人。
わたしは管理人さんに作られた案内役っス。
名前はまだないのでこれから考えないといけないっスけど、よろしくお願いするっス。」
『ええ…名前ないのかよ…』
「そうっスよ。ご主人が考えてくださいっス。」
まずいな。俺はこの手の名前を考えるのがとても苦手だ。
面倒くさくて「ああああ」で済ませるタイプだ。
流石にかわいそうなのでそんな事はできないし、とりあえず思いついた端から言ってみるか。
『じゃあ、花子で』
「ご主人が山田太郎だから、私は山田花…って誰が新喜劇の姐さんやねんっスよ!
ちょっと安直すぎないっスか?!」
いいと思うんだけどな花子。エルフ耳で妖精っぽい見た目だし花とつながりある感じするから。
うーん、他にはフラワー子とか。いや単純に英語にしただけだし、なんか小麦粉っぽいな。
フェアリーぽいからフェア子とか説明役だからメイ子とか…いかんな、子つけるのから離れよう。
ボスを倒すまで、かどうかはわからないけど、長い付き合いになりそうだしちゃんと考えるか。
『フィオ、とかどうだ?』
「30分くらい悩んでたっスね…。
まあでもフィオっスか…悪くないっスね。
フィオ…フィオ…私はこれからフィオっス!」
結局少しフェアリーを引きづってる気がしないでもないが、本人が気に入ったしヨシとする。
『よし、俺の名前は山田太郎だ。って知ってるか?
まあいいか、よろしくな。』
そう言って俺は握手のつもりで人差し指を差し出した。手の大きさ違うもんね。
するとフィオは目を細めてゆっくりと人差し指を俺の人差し指に近づけ…。
「E.T.」
違う。そうじゃない。
未知との遭遇だからね。仕方ないね。
フィオの見た目に関する記述を付け加えました。