player.addtale 32 次の大陸へ
あれから一か月が経ちました…ちょっと待てよ時間の流れ早すぎない?
皇帝の側近ズをけしかけて帝国を共和国に降伏させ、他種族への差別禁止を徹底させるのにやたらと時間がかかったんだよなぁ。
皇帝の側近ズは公爵とか伯爵とか色々名乗っていたが、もう覚えていない。その場にいなかった他の貴族たちはもちろん反発したが、大抵は証を見せればおとなしくなった。まあならなかった奴はいなくなるからね。
末端の兵士やら住民が蜂起することもあったが、大抵は残っていた軍に鎮圧させ、どうにもならないときはゴリ押しで解決した。勧告して脅して、ダメなら殺害だね。蜂起するほど思想が凝り固まった連中に残られても後々に面倒が起こりそうだし。
そうそう、共和国の代表にも会ったよ。最初は信じられないみたいだったが、証と俺にへーこらする貴族連中を見て信じる事にしたようだ。共和国側へも帝国民への差別はしないように言っておいたが、しばらく自治区として運用して、徐々に慣らしていく方向になりだってさ。ちなみに会談場所はなんと我が砦、名前はタロー砦に改めさせた。フィオには呆れられてしまったが。
住居は帝都内の持ち主が居なくなった屋敷を勝手に借りて生活しているが、街中に出ると最初のうちは逃亡奴隷とみて因縁つけてくる奴が大量に居た。全部返り討ちにしているうちに布告が出たらしく、今では遠巻きに見られるようになってしまった。
買い物もしづらいから貴族連中に文句を言ったら美人のメイドさんをダースで送り込んできたんだよな。エルフの美人のメイドだよ!やったね! と最初は喜んだんだけど、返事が全部「はい、かしこまりました。」なんだよな…。
「つまり何してもOKって事っスよ! エロゲーで覚えた鬼畜プレイの試しどころっスね!グヘヘ。」
とかなんとかフィオが言っていたが、全員目が死んでいるか怯えているかだったので、流石に何かする気にもなれず、家の事だけ頼んでおいた。
と、そんな感じで一か月が過ぎ、共和国側の官僚と、駐屯軍が来るのが今日である。
ここまでくれば変な事は起きないだろうと思うので、そろそろこの国ともお別れかな。
メイドさんたちに金貨を何枚かづつ配って礼を言って屋敷を後にし、城へ。
勝手知ったる他人の城の中を歩き、執務室としている部屋へ入る。
中には大抵何人かの貴族が書類仕事に追われているので、俺が入って来た事を見つけるや帝国式の敬礼で出迎えてくれるのである。その敬礼が気を付けから右手を頭の高さに上げる奴なんだよなぁ、因果というものを感じるよ。
『諸君、楽にしてくれたたまへ。これから共和国側の人々が訪れる。
邪悪な皇帝に騙されていた諸君が新しい未来に向かって歩き出す第一歩となるだろう。
俺のような力を持つものが押さえつけるのではなく、自分で考え、話し合ってすべての人類が共存しあえる国を作ってほしい。』
どうだ。すごくソレっぽいだろう。ここ1か月へりくだられまくったので自然と偉そうな口調が出せるようになったのだ。まあ文面は昨日の夜に考えておいたんだけど。
『そんなわけで、俺はこの国から去る。だが、いつでも見守っているので心配はしないでくれ。』
この国から去る、の所で全員が嬉しそうな顔になり、いつでも見守っている、の所で青ざめる。
君たち貴族なんだからもう少し表情を出さない工夫とかしなさいよ。
『では、さらばだ。』
コンソールを起動し、movetoコマンドで移動する。
行先は、ケイとレオのいる、シーファの町。
町の近くに移動し、近づいていくと、壊された城壁の周りには木で足場が組まれ、修復工事が始まっていた。街道を山脈側に向かっていく馬車や人々もいる。
城門は瓦礫が撤去され、木で仮の柵が作られており、衛兵が立っている。
どうやら最初に来た時にいた兵士のようで、俺の顔を覚えていて、すぐに隊長を呼んでくると引っ込んでいった。しばらくすると守備隊隊長が顔を出す。
「タロー、いや、タロー様か。まさかレオが連れてきたのがこんなにすごい奴、いや方だったとは…。」
『今まで通りでいいぞ。そもそも俺は何かの役職についた訳じゃないしな。』
「わかった。…そうだ、礼を言い忘れていた。この町を救ってくれてありがとう。」
『そういやそれがきっかけだったな。あの男、今どうなってるんだ?』
「あの男、名前はタケルと名乗っていたが、最初は俺は騙されたんだとか家に帰してくれと喚いていたが、しばらくするとブツブツと何か呟くだけになってな。どうしようもないので首都の方へ移送されて今は牢に入っている。そのうち裁判をやるとは聞いているが…。」
『まああいつも被害者っちゃあ被害者だが、やらかした分はどうしようもないな。』
「おっと、門の前で立ち話もなんだな。中に入ってくれ、レオもケイも呼んでくる。」
促されるまま門をくぐると、最後に見た時には瓦礫の山だった街並みは城壁と同じように足場が組まれて再建が進んでいた。
「「タロー!」」
と、ハモって呼ばれたのでそちらを見ると、ケイとレオがこちらに走ってくる所だった。
『おっと、君ら息ぴったりだな。もう結婚したの?』
そうやってからかってみると、二人は顔を見合わせて赤くなって俯いてしまった。
隊長の方を見ると肩をすくめている、って事は進展なしか。
「無事だったのね、タロー、フィオも。あの後タローに助けられたって難民の人たちが来たり、今度は帝国の使者が来て降伏するなんて言い出したりして大変だったのよ。」
「久しぶりっスね、ケイ。また胸でかくなったんじゃないっスか?
はー、ご主人のロリコン趣味のせいで貧乳なんスからちょっとは分けて欲しいっスね。」
たまに会話に入って来たと思ったらこれだよ。ちゃんと召喚獣のフリしててくださいよ。
それはそうと、難民とか助けてたな。懐かしいわ。道に迷ったの。
「タロー様、この度はこの町やケイだけではなく、国まで救って下さり、ありがとうございます。」
『うわっ、なんだそのキャラ。やめろレオ、どちらかというとお前はツッコミ要員だぞ。』
「は、はあ。」
『大体俺は礼を言われる為に何かしたわけじゃない。腹が立ったからタケルとか言う奴をぶん殴り、ついでに皇帝もぶん殴っただけだ。』
「いや、しかし…。」
「もう、レオったら、折角タローが戻ってきてくれたのよ。ずっとその口調で話すつもり?」
「ケイまで…。わかった。
おかえり、タロー。そしてありがとう。」
『だから礼は要らんと…まあいいか、ただいま。
と、言いたいが、俺は町に残るわけじゃないからな。
まだやる事があるので、また通りすがりの旅人になるぞ。今日は挨拶に寄っただけだ。』
「えっ?そうなのか?」
「やっぱり…行ってしまうのね。」
『そういやレオには話してなかったな。まあケイから後で事情を聞いておいてくれ。』
『この大陸のボスモンスターはもういない。
開拓していけば強いモンスターは徐々に減っていくだろう。
帝国側の連中も散々脅したからしばらく平和だと思うぞ。
俺は残り3つの大陸のボスモンスターを倒さなきゃならないんでな。』
「ばいばいっス。」
俺はそう告げると背を向けて歩き出した。
「わかったわ。でも、辛かったり、疲れたらこの町に帰ってきてね。待ってるわ。」
よせやい、俺は純粋だからちょっと優しくされたら簡単に転がるんだぞ。
これ以上の長居はそのまま居ついてしまいそうな気がしたので、俺は片手を上げて振り、呟く。
『コンソール起動』
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
やったー! 一区切りついたー! いやぁ、何とかなるもんだなぁ。
設定を思いついたけどあんまり似たようなの無かったから書いてみたんですが、話を盛り上げようがなくて困っちゃうね。処女作に選ぶ題材じゃないよ。
そして自分のために書いたとか最初に書いておきながら、途中から読まれているか気になっちゃうの。これが承認欲求って奴か。よろしければブクマと評価お願いします。
しばらく読み返してから2章目を書き溜めて再開します。
大体2週間くらい。サブタイトルもちょっと直しておきたいので。
それでは、今後とも拙作をどうぞよろしくお願いいたします。




