player.addtale 2 本物のチート
「まあいいわ、理解が早いのは助かるし。流石に日本人は異世界転移とかに慣れてるわね。
今回の設定は、実はあなたのいた世界、シミュレーターでしたって奴。
まあシ〇シティの規模が大きいやつと考えてくれれば大丈夫よ。
条件とかを設定して知的生命が発展する様子を観察して楽しむ感じね。
というわけで、私のことは管理人さんとでも思ってくれればいいわ。」
って設定言うなよ。
と思いつつ、別にショックも受けずに事実を受け入れているのは、ラノベその他の英才教育があってこそなんだろうか。
暇つぶしに読み漁った小説の中にはSFやらファンタジーを大量にあり、この手の設定はいくらでもあったのだ。
まあでも現実は小説より奇なり。まさか自分がシ〇シティのシ〇になるとは思わなかった。
というか、何かしら宗教信じてる人だったらちょっと受け入れられないんじゃないかなぁ。
逆に信じちゃうかのせいもあるか、だって世界を作って楽しんでるのって、それほぼ神じゃない?
「ちなみに信心深い人には神で通してるわ。まあ面倒だからそんな人は選ばないんだけど。
あなたを選んだ理由の一つね。
あとは、それなりに社会性はあるのに倫理観は薄くて欲望も少ない所もね。」
ほんとに心読んでないのかな…不安になってきたぞ。
お〇ん〇んびろーんとか考えとこ。
「最後の転移の理由なんだけど、あなたのいた世界のデータを使って別の世界を立ち上げたのだけど、それが上手くいってないから、という所かしら。」
『シミュレーターなら直接いじればいいと思うんだが…。』
「そうもいかない理由も説明するわ。あとから立ち上げた方は、あなたの世界の地球をベースにファンタジー要素を付け足した世界でね、人種をエルフとかドワーフとか獣人にしてスキルとか魔法とかを付け足してモンスターがポップするようにしたの。」
「ゴールとしては5つある大陸にそれぞれボスとなるモンスターを配置して、それを倒すことにしたんだけど、ある程度文明が発達して生存域を広げたところで拡大が止まっちゃったのよね。」
「一応いくらでも変更はできるけど、システム変更は全体に反映されちゃうから弄りにくいし。
それに生命体の意思自体は膨大な量になるから個別にいじってられないわけ。
なにより面倒だしね。」
『もう少し情報が欲しいけど、そもそもボスを倒す動機が人類側にあんまりないんじゃないか?
もしくはボスモンスターがいる事によるデメリットとかさ。』
「ボスに近いほど出現するモンスターが強くなるように設定してあるのよ。
繁栄したいならいずれは倒さなければならない仕様になってるハズなんだけどね。
人類同士で争ったりなんだりで全然なのよねー。人種分けたのがいけなかったのかしら。
神託めいたアナウンスで煽ってみたり、あなたの前にも地球から何人かチートをあげて送り込んだけど、それでもダメでもう面倒になっちゃって、リセットする前にって所であなたの出番ってわけ。」
人種が無くても人類は差別しちゃうし仕方ないね。
しかし何人かすでに地球人がいるのか…。
チーレム無双の酒池肉林でボス倒す気無くなっちゃったかな?
というか面倒になった所で出番というのが引っ掛かるな。
『面倒になった所で俺の出番ってどういう事だ?
俺に大した才能はないし何度も転生して世界を救った経験とかもないんだけど?』
「いいえ、あなたは適任よ。
転移特典にあたって、コンソールの使用権限をあげるわ。
とは言え、一部は使えないし、ステータス・スキルシステム用なんだけどね。」
『ええ…マジモンのチートじゃん…』
もちろん何かしらのチートなスキルとかそういうのを期待していたのは確かである。
でもチートそのものが来るとは思っていなかった。
コンソール使えるって管理者権限を貰うようなもんだと思うんだが、いいのだろうか?
「あなたならわかると思うんだけど、ゲームしてて攻略が行き詰って飽きてきたけどクリアだけはしたい時、どうする?
さらに何度かクリアした上で手元にチートを使う用意がある場合だったら?」
ははぁ、なるほど。
わかってきたぞ…この管理人さん、俺と同類だ。
飽き性な俺はゲームをやっていても途中で飽きる。特にレベル上げとかできないタイプだ。
難易度低いゲームならクリアまでは一通りするけど、やりこみ要素とかはほとんど埋められない。
とはいえ買ってしまった以上残っている要素は見ておきたいという事で色々なチートを使う。
昔は裏技としてデバックコンソールが使えたりしたが、今ではネットで検索するだけでコンソールを出す方法や外部ツールを使った数値のいじり方などいくらでも方法は出てくる。それらを使ってレベルをMAXにしたり、死ななくしたり、死なないはずのNPCを殺してみたり色々やる。
そしてひとしきり遊んで満足したらおしまいである。
チートを使ってゲームをするとなんでも出来てしまうが、それは制限から来る達成感を得る機会を自ら捨てている事でもある。
ゲーム自体の楽しさも、チートの使い始めこそ色々出来て盛り上がるが、使っていくうちにだんだんと「何やってるんだろう俺」というような虚無感に襲われてしまうのである。
使わずに楽しめるのが一番いいのは確かである。俺も一応最初は使わないように自制していたし。
ちなみにオンラインでは絶対に使わないようにしている。金と時間をドブに捨てる行為に他人を巻き込むのは犯罪だと思う。というか実際犯罪だし。
つまりこの神的な人は最後にめちゃくちゃやって終わりにするのに俺を巻き込んでいるというわけだ。
『なるほどな。やらせたい事はわかった。
しかし把握してると思うが俺はかなりの面倒くさがりだぞ?
途中で飽きて投げだす可能性だってある。というか投げだしそうだが…』
「その点もご心配なく。一部のチートは使えないと言ったと思うけど、その一部には自殺コマンドも含むわ。
なおかつあなたの寿命は無制限に設定してあるの。」
「ここまで言えばわかると思うけど、あなたはボスモンスターを倒さない限り死ねないの。
もちろん倒した後は自由にしていいけどね。」
『さっき言ってたクリアしたいという要望と矛盾していないか?俺が不老不死でずっと生きているという事もあり得るはずだ。』
「それこそあり得ないわ。
あなたの思考は読ませて貰ったと言ったけど、必ず飽きて終わりにしたくなるわよ。
チートもあるんだからなおさらね。」
「それに、シミュレーターなんだから時間の加速もできるのよ。
我慢比べならあまり分のいい勝負ではないと思うわ。」
若干の反骨精神から聞いてみた疑問だったが、答えは俺の性格を完全に把握した対策であった。
人によってはご褒美の不老不死だが、すでに人生に飽きが来ている上でなんでもできるチートを与えられたとなると真逆になってしまう。
できない事だらけであれば達成感もあるだろうが、それすらないのでは精神の牢獄となるだろう。
『はいわかりました山田太郎ボスモンスターを倒します。』
「素直でよろしい。」
2000字台に収めたくて分割してしまった。
話数を稼ぎたいとかそういう事ではない。