player.addtale 19 今度こそ町に入れる
パンイチのおっさんと牢屋でにらみ合う俺。静まり返るモブエルフ達。
「お前は一体…」
『俺の名前は…』
あっ、喋り出しが被ってしまった。ちょっと気まずい。
っておっさんもちょっと気まずそうにするなよ、誰も求めてないよこんなの。
『コホン、俺の名前はタロー。通りすがりの旅人だ。
一晩宿を借りようとしたらいきなり襲われたので、仕方なく拘束させてもらった。』
「えっ、そうなの?」「誰だよいきなり撃った奴。」「いや、自由な人間が居る時点でおかしい。」
「…どうやらソンガルデ共和国の手の者ではないようだな。
しかし、こんな事をしてタダで済むと思っているのか?」
『そんな事は知らん。明日には出ていくしな。
それより、お前ら砦で待ち伏せしてた魔法部隊なんだろ? 包囲してた兵士とかいないの?』
「チッ、あの捕虜がまだ生きていたか。…他の部隊は別の砦で再編中だ。
終わり次第、ソンガルデに攻め込む予定だ。隣国へ逃げ込んだとして安心できると思うなよ。」
『えええ、面倒くさい事しやがって。そもそもなんなの? なんでエルフ以外奴隷にしてんの?』
「劣等種族を導いてやっているのだ! 我々は選ばれた種族なのだぞ!
まあいい、我々の神はすでに降臨された。それに切り札もあるのだ。
劣等種族がいくら集まろうが意味がない…神に背いた同胞も何れは目を覚ますだろう。」
急に興奮しだしたな。宗教でもやってんの?
神って言われても管理人さんなんだろうけど、あの人直接手出しできないはずだしなぁ。
『あー、うん。もう聞きたい事は聞いたし今日の所は帰るね。
飯は置いてってやるから静かにしてろよ?』
アイテムボックスからいくつかの食料を出しておいた。水はスキルがあるから入れてなかったし、湧水のスキルはクールタイムがあるから大量に出せないんだよな…。
仕方ないので泣く泣く頂いておこうと思っていたワインも出しておいた。酔って寝てくんないかな。
連中は何やら喚いていたが、飯を盾に脅すと割と静かになったので地下室を後にする。
そろそろ感動の再開からつもる話も終わった所だろう。
2階に戻ると、ケイとレオは何やらいい雰囲気で見つめ合っていた。
お互い話題が尽きて何を話そうか迷っているけど、見つめ合ってるのも悪くないとかそんな感じ。
まあ戻ってきた俺に気づかないレベルの二人の世界だが、ここは壊させてもらうぜ。
『コホン、お二人さん、積もる話は終わったかね?』
二人はこっちを見て驚いた後、お互いの顔を見て赤くなって俯いてしまった。
いやいいから、そこまでベタな反応されるとこっちまで照れてきちゃうから。
『地下のエルフ達は目が覚めてたから、いくつか話を聞いたが、近々ソンガルデに攻め込むとか言っていたぞ。レオを包囲していた部隊の再編が終わり次第とかなんとか。』
レオもケイも真剣な顔になり、こちらに向き直った。
「俺たちの部隊をおびき寄せて殲滅し、兵力の減った所を攻める計画だったのか。くそっ!」
「早く町に知らせないと、守り切れないとしても避難はしないと奴隷にされてしまう…。」
「レオ…」
『と、いうわけで今から移動するので準備してくれ。』
「ま、待ってくれ、今から歩いて移動しても町まで1週間はかかるんだぞ!
いくら道があるとは言っても山脈には強いモンスターが生息してるんだ、3人で準備もなしに移動した所で途中で行き倒れるのがオチだ!」
『モンスターは多分問題ないぞ。というか歩かんぞ、面倒だし。
詳しくはケイに聞いておいてくれ、じゃあちょっと行ってくる。』
俺はコンソールを起動すると現在地を取得、tclコマンドとmovetoコマンドで移動を開始した。
まあ高度を取りながら道を見つつ、ちょっとずつ座標を刻んでいくのでこれも面倒なんだが。
座標、というか緯度経度は小数点以下も入力できるので、数キロのワープを繰り返す事数十回、ようやく町らしきものが見えてきた。
入力間違いで変なところに飛んだときは焦ったが、直前のログから戻ってこれてよかったよ。
町の近くまで移動した俺はケイとレオを呼び出した。
「うわっ、いきなり景色が! なんだこれ! アレは…シーファの町?!」
レオは戸惑っているようだがケイは慣れたようで、若干あきれた顔でこちらを見ている。
『俺のスキル的なもので移動したんだ。
町の事情はレオの方が詳しいだろうから、説明頼むぞ。』
ちょっと短いけどキリがいいので。




