player.addtale 17 フラグは先着順
返事がない、ただの屍のようだ。
という事にしたいが、そうもいかないのでひとまずコンソール起動。
IDを取得してステータスを見てみる。
MOBhum0001E82E1.showstatus
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レベル 51
ステータスポイント 0
HP 400
MP 11
STR 30
VIT 30
AGI 30
DEX 13
MAG 1
[スキル]
アビリティ 「満10歳時、レベル10まで経験値10倍」
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HPの表示は最大値だけなんだな。こんだけボロボロなら一桁とかになってそうだし。
あとはエルフ数十人と獣人と人間を見ただけだが、アビリティは種族固定のようだ。
とりあえず治療をしないといけないが、折角なので魔法を覚えて使ってみようと思う。
何人かのステータスを覗いたときに覚えてる魔法一覧も見れたので、その中からいくつか。
コンソール中は動けないからメモ取れないのが辛いな。まあ紙も持ってないんだけど。
player.addspell [ヒーリング]
player.addspell [キュア]
player.addspell [ロックバレット]
player.addspell [アイスジャベリン]
player.addspell [サンダーボルト]
player.addspell [ファイアアロー]
player.addspell [サモンスケルトン]
player.addspell [サモンスピリット]
player.addspell [プロテクション]
player.addspell [ライト]
player.addspell [ミュート]
とりあえずこの辺で。どこかに魔法一覧みたいな本でもあればいいんだがな。
一部以外は使ってる所を見てないので効果が不明だが、わかりやすい名前になってるんで、それで判別しよう。流石に怪我人にファイアアロー!とかやらんぞ。
俺はコンソールを終了すると転がっている人物に手を向けた。
『ヒーリング』
ぽわっとした白熱電球みたいな光が出て癒されそうな雰囲気だ。
効いているのかはわからんが、微かだった呼吸音や体の動きが大きくなってきているので効いてるという事にしよう。最悪コンソールでHP回復とか蘇生とかできるし。
呼吸が安定してきたのでヒーリングを止め、もう一度声を掛けてみる。
『元気ですかー?』
「う…、俺は何もしゃべらないぞ…。殺すならさっさと…?」
ノリの悪い奴だ。動けるようになったようで、こちらに寝がえりを打つと、俺の顔を見てしばらく固まってしまった。レベルが高めだったので例のおっさん隊長くらいの中年を予想していたが、見た感じは20代といった所。くそっ、コイツもイケメンじゃないか。
『見ての通り俺は人間でエルフではない。この砦のエルフは残らず気絶させたぞ。』
「味方が…来てくれたのか…? 他に囚われている奴はいなかったか…?」
『残念ながらお前一人だ。』
「生き残ったのは俺だけか…。すまない、みんな…。」
最後の方はほとんど囁き声くらいで、男はそのまま意識を失った。
立って歩いて欲しかったが仕方ない、担いで上のベッドまで運ぶか。
その後男をベッドに寝かせると、砦の前にいるフィオとケイを迎えに行った。
大層ご立腹であったが、エルフは全員気絶させたので閉じ込めるのを手伝って欲しいと伝えると、しぶしぶ怒りを収めてくれたようだ。
さて、エルフ達の拘束だが、そのまま檻に入れたのでは魔法で檻が壊されそうなので、ケイが着けられていた封印の首輪をコンソールで着けておいた。おっさん隊長だけは誰かさんみたいに引きちぎりそうなので、最悪鎖で簀巻きにしようかと思っていたが、牢屋の片隅にいいものを見つけた。
その名も「脆弱の腕輪」。鑑定すると装備者のSTRを1にするそうだ。おそらく捕虜の拘束用なのだろう。丁度捕虜が大量に居るのでこれも全員に着けておいた。外されないように手枷もしておいたので、そうそう面倒なことにはならないだろう。
そうこうしているうちにとっぷりと日は暮れて腹も減ってきた。
砦内を漁るとチーズに干し肉、固いパンというわかりやすい保存食が出てきたのでそれを頂くとする。どれも硬くていまいちだが、キッチンのカマドで炙ってみるとそこそこ食べられた。
ケイも俺も黙々と食べる。なんか思いつめた顔してるけど、復讐とかしないで欲しいなぁ。
フィオも同じ考えのようで、チラチラとこちらを見てくる。と思ったら近づいて耳打ちをしてきた。
「ご主人、ちょっとこの雰囲気耐えられないっス。なんとかしてくださいっス。」
あ、そっちなの。確かに雰囲気重いとは思ってたけどさ。仕方がないので声を掛けることにする。
『なあ、ケイ。牢のエルフ達なんだが、俺に任せてくれないか?
とりあえず聞きたい事もあるし、奴隷にされていた恨みもあるだろうけど何とか抑えて欲しい。』
ケイは顔を上げると不思議そうな顔でこちらを見た。
「何のこと? エルフ達なら捕まえたのはタローだし、最初から何もする気がなかったわよ?」
『ええ? じゃあなんでそんな思いつめた顔してたの…。』
「ここに捕まってた男の人、小さい頃に良くしてくれたお兄さんに似ているの。
血どころか種族も違うけど、何かと庇ってくれてね。
別の村に連れていかれたけど、今頃どうしてるだろうなって考えてたの。」
あっ、ふーん。そうなんだ。物騒なこと考えてるよりはいいけど。…いいけど。
「ご主人、ドンマイっス」
そうして夜は更けていった。
書き溜めが切れそうになって焦る。




