player.addtale 16 制圧!家探し!
石造りの砦の扉に手をかけ、押してみる。が、開かない。
引いたりスライドさせてみたり上に持ち上げても開かない。
カギが掛かっているようだ。
石仮面を取り出して消してしまいたくなるが、何れ俺の居城になるわけで、入り口が開放的になり過ぎる。困ったときはコンソール起動である。
扉を注視してIDを取得するとコマンドを入力した。
o0ipohaiq6.Unlock
コンソールを終了して扉を押すと、音もなく開いた。
おじゃましまーす。
砦は円形に石を組んだ武骨なもので、屋根は板を葺いてあり、2階建てだ。
毛皮をまとったムキムキむさくるしい男どもが大量にいそうな雰囲気だったが、予想に反して中にいたのは優雅にお茶を楽しむ3人のエルフ達であった。
ここまで気絶させたエルフ達も含め、全員軽装で重そうな武器は持っていなかった。
体格は普通の成人男性だが、試しに何人かステータスを覗くとと大抵がMAG偏重構成で、たまに弓を装備してAGIとDEXが高い奴がいるくらい。どうやらエルフ至上主義かつ魔法至上主義な国のようである。
レベルは30台から、高くても40後半だったが、平均がわからないので強いのかどうかもわからん。
倒したモンスターの強さと得られる経験値から予測できそうなものだが、今までチートで倒しちゃってるからモンスターの強さもわからないし。
と、考え込んでしまったため男たちに反応する猶予を与えてしまった。
「人間?! ソンガルデ共和国の襲撃かっ!」
「くそっ、見張りは何をしている!」
「こいつ一人か? さっさと始末して状況を確認しろ! 隊長にも報告だ!」
そうか、これから向かう先はソンガルデ共和国というのか。
じゃなくて、こちらに手のひらを向けて魔法を撃ってきているんだってば。
「アイスジャベリン!」
「ロックバレット!」
『コンソール起動』
当たっても問題ないとはいえ、建物が壊されるのは困るのでコンソールで気絶させる。
一応向こうも考えているらしく、火は出さなかったようなので助かった。
コンソールを終了すると崩れ落ちる3人、出た魔法は消えないらしく、氷の槍と石の礫が俺に命中する。流石に怖かったので目をつぶってしまったが、ダメージは無く、目を開けると周りには氷と石の欠片が散らばっていた。
なるほど、当たるけどダメージ無しという判定なんだな。
そんな感じで納得していると、スコーンと頭に矢が当たった。
『うわっ、びっくりしたぁ』
「嘘だろ…頭に矢を受けて何で生きているんだ…化け物…」
まあ本来なら頭から矢が生えている所だろうが、すまん、チーターなんだ俺。
入ってすぐのテーブルの奥に間仕切りがあり、どうやらその裏に居たために気づかなかったようだ。
怯えている彼を気絶させた後、一階を見回る。
入って左手に階段、右手の部屋には木箱や棚が並んでいたが、他にエルフはいないようだ。
間仕切りの裏はキッチンで、どうやらお茶のお代わりを淹れていたようなので俺も頂く。
ベースが紅茶味だがほんのりミントのような清涼感、うーん結構美味い。
少し寄り道したが二階に登ろう。エルフ達の発言からすると2階には隊長が居るらしいし。
二階に上がるとすぐに扉付きの部屋があり、残りのフロアにはベッドが並べられていた。
とりあえず部屋は後回しにして探索しようかと思った所で扉が開く。
出てきたのはツルツル頭に立派な顎髭の厳つい…エルフのようだ。耳が尖っている。
驚いているようだが、俺もここへ来ていきなりぴったりの配役が出てくることに驚いている。
立ち直るのは向こうの方が早かったようで、腰に帯びた剣を抜き放つと低い声で喋りだした。
「何者だ…? 貴様、部下をどうした!?」
厳つい顔だが部下思いのいいおっちゃんのようである。
しかし、悲しいかな、俺チーターなのよね。
ボソっとコンソール起動と呟くとおっちゃんのIDを取得してステータスを見てみる。
MOBbst0001C0E65.showstatus
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レベル 62
ステータスポイント 0
HP 540
MP 190
STR 40
VIT 40
AGI 38
DEX 20
MAG 20
[スキル]
アビリティ 「満10歳時、MAG+10・魔法スキルレベル+1」
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おおっと、結構強いなおっちゃん。
スキルは片手剣に防御術と装備がメインの前衛ビルドだ。魔法はアビリティでの+1のみの潔さ。
魔法好きなエルフにしては珍しいが、そのおかげで隊長なのかな?
どんな戦法なのか確認はしたいが、ちょっと時間が押しているので気絶していただく。
ケイも心配してるだろうしな。
コンソール終了と共に崩れ落ちる隊長。部屋の中には他には誰もおらず、他の部屋も空だった。
おかしいな、絶対地下牢とかあるはずなんだが、階段なかったしなぁ…。
砦内を探すが見当たらず、焦りながらも外を探していると、裏手の方に地下へ降りる階段を見つけた。コイツがないと気絶させたエルフ達をしまっておく場所ないもんな…。
地下への扉を開錠して降りていくと、シンプルな1フロアに鉄の檻が並んだトラディショナルな地下牢だった。見張りはいないがジメっとしてカビ臭い。浄化がある世界のおかげで排泄物系の臭いがしないのが幸いである。
檻の中の住人はいない…と思ったら一番奥にボロ雑巾みたいになって倒れている人がいる。
うわー、死体だったらやだなぁと思いながら近づいて確認してみると、呼吸はしているようだ。
恐る恐る檻の外から声を掛けてみる。
『もしもーし、生きてますかー?』
ステータスに矛盾が無いように設定するのが難しい。
そして即チート使うと会話が成り立たないんだよね…。




