player.addtale 11 後始末
卑怯にもコンソールコマンドで即死させられたボスモンスター、ベヒモスは淡い光に包まれて消えていった。踏み荒らされた地面の中心には何やら小山のようなものが見える。
多分ドロップアイテムなんだろうけど、山の裾から頂上までって水平距離でもかなりあるよね。だからよく見えません。
巨体の割に浅い足跡を上ったり下りたりしながらたどり着くと、小山はやはりドロップアイテムであった。流石ボスだけあって報酬は大量なんだな。
岩の塊みたいなものに柄がついたハンマーやクリスタル製っぽい盾、艶消しブラックがかっこいい鎧にちゃんとカットしてある宝石等など。スイカみたいな魔石もあった。
一応それぞれ鑑定しながらアイテムボックスに収納していくが、鑑定結果が適当だったりするの、絶対管理人さんがサボってるせいだよな…。
まあ、そもそも攻撃力とかは数字で表記されないルールのようだし、ユニーク武器らしきものの特殊効果については書いてあったのでヨシとする。
ハンマーは両手武器で地面を強打すると前方に岩の棘が生えて攻撃できるとか、クリスタルの盾は魔法も受け流しできるようになる、とか。後で検証しておこう。
「移動先でいきなりボスモンスターとは、ご主人も運がいいんだか悪いんだかわからないっスね。」
上空に退避してたんだか吹き飛ばされたんだかわからない奴が戻ってきて言う。
『ボスモンスターっつーより、自然災害みたいな奴だったな。
正直軍隊動員しても倒せるか怪しいんじゃないか?』
「入念に物資とか罠とか用意して誘い込んで倒すとか、作戦練って倒せって感じっスね。
なんにせよ、これで進捗20%っスよ!あといきなり最強装備でウハウハっスね!」
「売れるのかなこれ。というかあんな規模のボスにしては報酬がしょぼいような…。
お、なんだこれ?」
金銀財宝といった物の中に、どうにも不釣り合いなものが二つ混ざっていた。
まずはこれ、古ぼけて宝石とかも嵌っていないシンプルな王冠である。ホイ鑑定。
[アラスティアの覇者 : アラスティア大陸の主を倒し、新たな主となったものの証]
と出た。これは記念アイテムかな?そうじゃないと俺が新しいボスモンスター認定されかねない。
他の武器とかもユニークだし、うかつに人前で出せないけど、これはもっとマズい気がする。
もう一つは灰色の、おそらく石でできた仮面だった。持ってみたがそこまで重くない。
表面はゴツゴツしており、怒ったような表情を表しているように見える。
被ると人間をやめそうなので先に鑑定。
[大地の怒り : 母なる大地も時として教育的指導を行う。]
[装備者のHP1.5倍・手で触れた場所から1メートル以内のオブジェクトを操作可能]
もうちょっと雰囲気大事にしたいよね。究極生命体のためのアイテムではなかったのは幸いです。
効果自体は単純に強いし、便利そうだからこれも要検証だな。
と、ぽいぽいとアイテムボックスに仕舞っていったが、2/3くらいまで行った所で念じても収納しなくなってしまった。
焦って内容物をいくつか出し入れしてみるがこちらは問題ない。
新しく収納しようとするとダメなようである。そういえば無制限じゃなかったね。
確かレベルに応じて容積が増えたはずなので、ボスも倒したし一度ステータスオープンと。
レベル 91
ステータスポイント 182
HP 891
MP 990
STR 99
VIT 99
AGI 99
DEX 99
MAG 99
[スキル]
アビリティ 「チートコンソール」
めっちゃ上がってる…。まあボス倒したんだから当然か。カンストしててもおかしくないし。
無駄にポイント溜まってるけど意味ないんだよなぁ。
まあとにかくレベルが91ってことは容積はx10リットルなので910リットル。
1立方メートル入らないくらいか。そりゃ全部入れるのは無理だわ。
というわけでアイテム整理に取り掛かったが、これが悩ましい。鑑定結果とにらめっこしながら取捨選択をしていくと、太陽がそろそろ真上に差し掛かる所だった。
そういや朝一で移動していきなりボス戦だったな。
ユニーク装備と思われるものはすべて収納し、以前入手した価値の低いアイテム(大体カニの甲羅)やただの換金アイテムなどが地面に散らばっている。
本来ならすべて売り飛ばしたい所ではあるが、泣く泣く諦めた。
『フィオ~、移動するぞ。』
「ずいぶん悩んでたっスねぇ。気持ちはわかるっスけど。
何個か手持ちで持っていけないっスかねぇ?この指輪とか。」
お前が持つと指輪じゃなくて腕輪サイズだな。まあ持っていけるなら持って行ってもいいけど。
『そういえばフィオは俺が作業してる間、暇じゃないのか?
他人のアイテム整理を見続けるのって、かなりつらい部類に入ると思うが。』
「まあ元が同じなんで、やろうとしている事がわかるっスからそこまで苦痛じゃないっスよ。
それにずっと見てるわけじゃなくて、声が届く範囲で回りをうろついたり、後は寝てたりっス。」
まあ確かに、自分ならそうしないのに!って感じのもどかしさはないだろうが、今後はもうちょっと気にかけてみるか。人里にたどり着けば聞くことも増えるだろうし。
さて、人里を探す旅を再開だ。
といってもコンソール使ってワープするだけなんだけど。
例によって当たり判定をなくし、高度を取りながら細かく座標を刻み、人のいそうな場所を探していく。この大陸はもうボス倒して用はないし、西隣の欧州っぽい所を狙ってみるか。
体感で1時間ほど移動を続け、ようやく海沿いに村らしきものを見つけることができた。
流石に空中から人が降りてくるのを見られると騒ぎになりそうなので、さらに細かく移動を重ね、見られないであろう近くの林の中に着地した。
絶望的に足りないアイテム等の設定センス。
行き当たりばったりのシナリオ。
ライブ感満載の本小説を今後ともよろしくお願いいたします。




