player.addtale 10 最初のボスモンスター
眼下には緑の草原…?が広がっている。
いや、高度5000(多分メートル)だからよく見えないんだ。地平線は霞んじゃってるし。
なんにせよ念願の陸地に1発で着いたのはよかった。
とりあえずコンソールを起動して緯度経度をそのままに高さだけを1000に設定してワープしてみる。
一瞬で景色が切り替わる。地面までは多分数百メートルといった所で、やはり先ほど見えていた草原らしきものはやはり草原だった。高さを0にしてたら地面にめり込んでたな。
その後、徐々に高さを下げながら、あと10数メートルくらいになった所で当たり判定を元に戻す。
重力その他が元に戻り、落下するが上がった身体能力で難なく着地を決めた。
『よし、とりあえずこの移動方法は使えそうだ。
人里はさっぱり見当たらないし、もう何回かやらないとダメかなぁ。』
草原は腰丈くらいで揃っており、遠くまで見通せるので辺りを見回してみるも、遠くの山の方に鳥が飛んでいるのが見える程度。鳥にしてはなんだか大きいからモンスターかな?
とにかく人工物は見当たらない。
転移前、地球は春だったが、こっちも同じなのだろうか?
気候は少し涼しいくらいで過ごしやすそうである。
『フィオ、ここがどこかわかるか?』
「アラスティア大陸のど真ん中っスね。一番人が少ない所っス。
この世界は初期の入植が海沿いから行われてるっスから、内陸部はモンスターの強さもあって全然人が住み着かないんスよね~。」
『それってこの辺ウロウロしてたら俺も襲われるって事か。
いやもしかするとボスモンスターもウロウロしてたら助かるんだが。
そういえばボスモンスターってどんな奴なんだ?』
「ボスは5体っスけどそれぞれ違う種類になってるっスよ。
人型に近いやつで回りのモンスターを率いてみたり、ダンジョンに引き籠ったり、はたまた大きさが山ほどもあって動かない奴だったりっス。」
『山ほどもあって動かないってそれ山じゃん。
人づてに聞こうにも害がなくて情報得られない可能性まであるじゃん。
見つけるのすげぇ面倒くさそうなんだけど。』
「一応人が近づいたら反応するようになってるみたいっスよ?
まあ管理人さんのアナウンスがあったはずっスからそれで知ってる人はいるはずっス。」
はー、そういうもんかね。まあボス探しは腰を落ち着けてからやるとするか。
と、別の場所に移動しようとしたところで地面が揺れていることに気づく。
地震のある所まで地球に似せんでも…と思っていると揺れはだんだんと激しくなってきた。
今までどこにいたのか異常を察した鳥たちが草原から飛び立つ。
揺れはいよいよ激しく、脈打つように地面が揺れている。
脈打つっていうか足音に聞こえてきたんだけど…。
周りを見回すと遠くに見えていた山がやたらと近く見える。
うん、ていうか動いてるね、こっちに向かって。
『なあ、フィオ。もしかしなくてもアレが山ほどもあって動かないヤツかな?』
「いやー、動いてるっスから違うかもしれないっスよ?鑑定してみたらどうっスか?」
確かに見えているなら通るか。というわけで鑑定してみる。
[ ベヒモス:アラスティア大陸のボスモンスター。頑張って倒そう! ]
わあ、本当にボスモンスターだぁ。うん、でもね…。
もう少しフレーバーテキストとか頑張った方がいいんじゃないかな!
ツッコミを入れている間もベヒモスは動いており、地面の振動はそろそろ立っていられなくなる程になっていた。というか大きすぎて近づいても山にしか見えない。麓から見上げる感じね。
一応頭らしきものがこちらに向いており、表面に岩が張り付いていていまいちわからないが目や口があるのはわかる。口の上に尖った岩山のようなものがあるが、角なのかな?
移動はぶっとい6本の脚でしているようで、股の間から向こうが見えている。
この巨体がどうやって動いているかとか、地面どうなってるのとかは考えないでおこう。
観察を続けているとベヒモスは頭をもたげ口を大きく開けた。
「---------!!!!」
もはや音とは認識できない大音量での咆哮に体がビリビリとしびれる。
周囲の草原はベヒモスの頭を中心になぎ倒されていく。
これは無敵モードじゃないと音圧でミンチになるレベルじゃないかな…。
現実感のなさすぎる状況に恐怖心などは湧いてこない、逆に冷静になりつつあった。
こんなのをいくら強化されてるとはいえ、人間に倒せってのは管理人さんも無茶するなぁ。
人類同士のいざこざが無くても見たらやる気無くしちゃうと思うんだよね。
ベヒモスはあたり一面がなぎ倒されてなお形が残っている人間をみつけ、驚いているようだった。
そして頭を右側に向け、左に向けて地面を擦るように振り回した。
単純な動作で遠めに見るとゆっくり動いているようにみえるが、巨体故であり、頭についている角の先端は音速を超えるかもしれない。
頭を振りかぶった時点で何か攻撃してくるとは感じていた俺だったが、広範囲の薙ぎ払いに泡を食って退避行動を始めた。
といってもジャンプしても無理そうだしとにかく範囲外に逃げるべく、後に向かって猛ダッシュである。強化された筋力で思い切り踏み込み、とにかく走る。地面の凹凸も反射速度・平衡感覚が強化されているのでなんなく踏破できる。
そうやって背後に大質量が高速で通り過ぎる気配を感じつつ、なんとか逃れ振り返ると、ベヒモスはこちらを見ながら口を開け、じっとしていた。
なんか溜めてる感じ?喉の奥が光ってきましたね。ブレス的な奴ですねこれ。
感情が麻痺して冷静になって分析してはいるが、武器もない状態でどう倒していいか考えあぐねていた。
『どうしようかな…コンソールで武器でも出すか…。ん?コンソール?』
そういえば俺にはコンソールがあるんだったな。
コンソールを起動し、ベヒモスを注視する。
ベヒモス / ID : MOB000f3h32ph
お、見える見えるぞ!
IDがわかってしまえばあとは煮るなり焼くなりいくらでも遊べるのがコンソールの怖い所。
というわけで。
kill MOB000f3h32ph
コンソール終了。
ベヒモスは目から光を失い、膝を折ると、ゆっくりと淡い光に包まれていった。
5体もいるんだ、1体くらい1話中に死んでも大丈夫だよ。




