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誰だ、こいつら喚んだ馬鹿は  作者: 赤木一広(和)
第三章 ウールブヘジン
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044.朱に交わって赤くなってきたシーラさん


 シーラの考える戦場での退却すべき限界とは、疲労により動きが鈍る前であり、退却を決めてから敵の追撃を振り切るまで体力が尽きぬようにするのが当たり前だった。

 だが、その前提からして凪と秋穂は違った。


「戦ってのは、手足が上がらなくなってからが本番でしょ?」


 手足が重く鈍くなるほど動いた後でも、まだ動ける、戦えると凪は考えている。

 疲労なりで自身の戦闘能力が落ちた状態では休息をとるまでは無理に戦闘をするべきではない、といったシーラがずっと当たり前であると思っていたことを否定してきた。

 確かに、戦況によってはそこまで追い詰められることもある。だが、そうできる余裕があるというのなら、無理をして戦い続けることは絶対に避けるべきであろう。


『けど……』


 何百という敵兵士の群に突っ込んで、囲まれるだの逃げられなくなるだの味方を援護しなきゃだのといった思考から解き放たれ、一心不乱に敵を殺していく一個の修羅と化して初めてわかることもある。


『敵の気配が、いつもよりずっとよく見える』


 心の内は興奮の極みで今にも炎が噴き出しそうなぐらい熱くなっているが、頭の中はというとこれが驚くほどに静かなもので。

 敵を殺せと心が叫ぶと、頭が最善最短を導き出し、身体が寸分違わずこれをなぞっていく。

 敵はシーラが相手でも恐れを見せない。数がいるから、皆でかかれるから、取り囲んでしまえば、そんな思考が透けて見える。

 ある意味正しい。

 シーラは突き出された剣を潜る。

 低い位置のシーラに向かって薙ぎ払われる右方よりの一閃。命中の直前のみそちらを一瞥し剣を叩きつけ弾く。

 左方より縦に襲いくる剣撃を、半回転しつつかわし、回った勢いで後方より追いすがる敵の剣に剣をぶつけてこちらも弾く。

 攻撃が続く限り、シーラの反撃を封じることもできよう。少なくとも、そうできるだけの技量を持った戦士たちだ。

 だが、今のシーラにそれでは不十分。

 全周囲の気配を逃すことなく察知できる今のシーラを封じ続けるには、天頂より俯瞰し完璧なる連携を指示できる絶対の指揮官が必須である。

 味方の身体が死角になるような混雑した戦場で、シーラの動き全てを制し続けるなぞそれこそ既に失われたウールブヘジンの三英傑たちですら至難の業だ。

 だから、シーラが最適解を選び続けることができるのならば、敵兵士の剣はシーラを捉えることはできず、敵兵士がシーラの刃より逃れることもできない。

 その戦いは、怪物と呼ばれるような戦士たちとの戦いに匹敵するほどの難度と、楽しさを備えたものであった。


『軍との戦も案外悪くないかもね』




 現在行われているのは、三人対六百人の真っ向勝負である。

 六百人側である兵士たちは、皆剣を抜いてこれを用いて襲い掛かってくる。

 凪と秋穂はそれを多少不思議にも思ったが、シーラ曰くこういう軍は案外に多いそうだ。

 戦士の戦いは剣にて行うべし、といった思想があるのだとか。

 ただ、昨今は他の武具の優位性も認められるようになってきており、特に兵士たちは人外の化け物との戦闘も予測されるため、これを打破すべく様々な武器や戦い方を工夫するようになったとか。

 シーラ、凪、秋穂ほど極端に高い戦闘力を持った戦士は稀だが、例えばコンラード程度ならばそこそこの遭遇頻度があるとのこと。これへの対策は、少なくとも軍を名乗る者たちならば大抵は用意してある。

 だがこのウールブヘジン傭兵団は、そういった小細工は抜きで、真っ向より剣での勝負を挑んできている。

 逆に彼らほどの練度があるのならば、これこそが対策になりうるのかもしれない。

 秋穂は戦いの最中に色々なことを考えるタチで。

 戦いの組み立てや戦術の選択といった部分でこれは優位に働く特徴であろうが、戦闘行為に意識を集中させるべきところで変にものを考えてしまうという悪癖にもつながっている。

 ウールブヘジンの戦い方を分析してしまう自分に気付いた秋穂は、苦笑しつつ意識を狭める。

 戦う前に想像してみたのだ。

 千人近い敵軍目掛けて突っ込んで、これを磨り潰すまで戦い続ける自分を。

 集団との戦いで秋穂の頭にあるのは、盗賊砦での戦いだ。

 あの時と比べて戦い方は工夫した。もっとやれる自信もある。千人全部殺せると思うほど自信過剰にはなれないが、凪がいるのなら、シーラがいるのなら、全周敵だらけの中で百人の人間を殺せると秋穂は踏んだのだ。

 それだけの能力が自分にあると確信できるのなら、後は全身全霊を振り絞るのみ。


『街のチンピラとは全然違うね』


 目の色、顔つきが違う。

 今の秋穂と一緒で、余計なことを考えずただただ殺すことだけを見ている戦士の目だ。

 そうやって一つのことに意識を集中することで、死への恐怖を乗り越えているのだろう。

 敬意に値する戦士の心構えだ。

 それを、畳に座って口にするのではなく、こうして実際に斬られる場所にて実践するのだから、斬った斬られたとは縁遠い現代に生きていた秋穂にとっては瞠目すべき男たちだろう。

 秋穂は、今の自分の立場はもう殺し合いの良し悪しを論じるような段階ではないことを知っている。

 人の心を失うつもりは毛頭ないが、躊躇も容赦も禁物であると理解もしている。


『案外に、両立できちゃうもんなんだ』


 口に出して責めるような者がいないのも大きいだろう。そもそも敵を殺すのは当たり前だという認識を万人が共有している世界だ。

 やはり秋穂は苦笑する。


『この余計なこと考えちゃう癖、ホントどうにかしないとね』


 言葉の通り、秋穂は以後、戦いのみへと集中していく。

 頭の中に残るのは、迷いなき断固たる殺意のみでいい、と。




 先のレスクとの戦いの影響か、凪は戦闘の中で剣のみではなく蹴りも多用していた。

 何せ敵の身体が邪魔でしょうがないのだ。


『ゲームみたいに倒したら消えるとかしてくんないかしら』


 斬った後も敵の身体はすぐに倒れてはくれないし、倒れたとしても足元に転がられては邪魔だ。

 なので凪は自分の動くスペースを確保するためにも、敵の身体をどかしながら戦うことを要求される。

 急所をかすめるような斬撃は、殺す効率はよいがその後で敵の身体が邪魔になってしまうことが多い。

 丁寧に敵の身体を避けて動くのが良いか、これを力ずくでどかしていくのが良いか、凪は後者を選択した。

 ほとんどの敵は、凪に向かって駆け寄りながら斬りつけてくる。

 体重と走る速度とが乗ったコレを、凪は前蹴りで跳ね返す。


『こんな蹴り見せたら、お父さんに怒られるわ』


 鋭い刺すような蹴りではなく、衝撃を敵の身体に残すような蹴りでもなく、それはもう武術を知らないチンピラが力任せに足裏を使って蹴り出しているものに近い。

 だが勢いつけて突っ込んできた敵の身体をどかすには、これが一番楽なのである。

 敵兵の剣が凪目掛けて振り下ろされきる前に、凪の蹴りが胴中央に叩き込まれると、敵兵は背後に向かってまっすぐ吹っ飛んでいく。

 すぐに斜め後方に向けて左裏拳を振り回す。身体を捻りながらそうすると、突き出された剣は凪の脇の下を抜け、敵兵の身体は斜め後ろへとズレ飛んでいった。

 凪の攻撃は敵重心を捉えるように放たれており、その重心を効果的に押し出す、或いは突き崩すことができていた。

 そして剣を斜めにぶん回す。斬るだけでなく、剣の重量で敵の身体を押し返すといった動きでもある。

 ただ斬るだけが目的ではないので、斬った後の欠片が勢いよくすっ飛んでいく。

 まとまって敵が四人来た。凪は一番前の兵士に逆に踏み出し、その襟首を掴みざまこれを人外の膂力にて振り回す。

 振り回した時、これを掻い潜った猛者がいたが、後ろ回し蹴りを咄嗟に出してこちらも吹っ飛ばす。


『うげ』


 男を蹴り飛ばすのに失敗し、首だけが折れ彼の身体はその場に崩れ落ちる。

 そちらはちょうど次に踏み出していきたい方向だ。ええいままよ、と死体を踏みながら飛び上がる。

 踏ん張りが利き難いせいでそれほど高くはないものの、人の頭部を真横から足刀で蹴るには十分だ。

 勢いよく蹴り飛ばした後、凪は大慌てで足をひっこめる。


『わひゃう!?』


 伸ばした足目掛けて剣を振り下ろしてきた兵がいたのだ。

 左の裏拳でこれを黙らせた直後、右剣で別の兵の側頭部をぶっ叩く。どちらも頭を横から叩かれたせいで半回転して頭から地面に突っ込んでいった。

 次は左後方からか、と思った凪だがそちらから敵の気配がしない。

 聞こえたのは独特の打撃音。この音は秋穂の掌打だ。


「凪ちゃん、動き大きすぎない?」

「踏み込まれすぎた時のリスクと天秤にかけたのよ」

「あー、それはある。どうやっても接近が防げないタイミングってあるね」


 凪が右、秋穂が左。同時に袈裟と逆袈裟を見せ二人を倒す。二人の耳に、布を引っ張って裂いた音とシーラの声が聞こえた。


「それでも、早々にバテることのほうが危ないと私は思うけどなぁ」


 布ではない。シーラが人を鎧ごと斬った音だ。それがどうしてそんな奇妙な音になるのか凪にも秋穂にもわからない。

 いつものことなので聞きなれているシーラだけが、音を気にするでもなく次の敵を斬り倒す。

 三人が近くで戦っているだけで、八方ではなく六方を注意するだけでよくなるので、それだけでも随分と楽になるものだ。

 ふん、と鼻を鳴らす凪。


「七百だか千だか知らないけど、バテる前に殺しきってやればいいのよ」


 うん、うん、と二度頷くシーラ。嘆息する秋穂。


「やっぱナギってどっかおかしいよ」

「日に日に悪化している気さえするんだよねぇ」







 シーラは知った。疲労で腕が上がらなくなったその先を。

 上がらないというのは錯覚だ。痛いから上げてはならない、と頭が勝手に考えているだけで、実際には上げてみれば上がるのだ。

 また戦いの動きも変化してくる。できるかぎり小さい動きで敵を仕留め、攻撃をかわそうとする。

 頭が考えた最善の動きも身体がついていってくれなくなるので、今度は頭が今の身体でもできる動きを提示するようになる。それは意識せずとも自然にそうなってくれるのだ。

 もう、凪も秋穂も何処にいるのかわからない。

 鈍ったのは身体だけではない。思考もかなり鈍くなっている。

 身体能力の低下以上に、思考能力の低下をこそシーラは恐れていた。

 闇雲に剣を振り回すだけでは突破できない状況の方がこの世には多いと、シーラは知っているのだ。

 思考能力が失われる前に、シーラはこの戦いの決着の目途をつけなければならない。

 そんな焦りは極論を招きやすい。すなわち。


『逃げられないんなら、少しでも早く、軍を軍たらしめているものを、のけちゃえばいい』


 延々コレと戦っている兵士たちからはまるでそうとは思えないのだが、シーラは確実に弱ってきている。明らかに身体の反応が鈍っているのだ。

 なのに剣閃の冴えはますます磨きがかかっていて、体捌きのキレは開戦当初よりも上だ。

 絶対にここまでは踏み込まない、そんな疲労の極みにまで辿り着いてみれば、戦闘を行うという一点のみに限って見ればどうにかなってしまっている。

 そしてどうにかなっている間に、為すべきことを為さねばならない、とシーラは決断する。

 凪も秋穂も何処にいるのか、そもそも生きているのかすら定かではない。だからシーラが一人で行く。

 これまでの長い戦闘で、凡そ敵将の位置は見切れている。この辺は戦争経験によるもので、凪にも秋穂にもこれを見定めるのは難しかろう。


『おしっ、行くよー』


 敵を一気に振り切るため、ありったけの速さで駆ける。


『遅っ! 私足遅すぎっ!』


 自分で意識しなければ膝が上がってくれない。

 そしてひっきりなしに迫る敵の刃。

 シーラが走っているというのに、敵兵がこの速度に反応し対応し、走るシーラに剣をぶち当てられるというだけでもう、己の衰弱っぷりがよくわかるというものだ。


「馬鹿な! 何処にこんな力があったってんだコイツ!」

「滅茶苦茶速ぇぞ! 気を付けろ!」

「駄目だ突破された! 追いつけねえ!」


 どうして敵がお世辞を言ってくれるのだろう、とあまり回っていない頭で考えるシーラ。

 目指す敵本陣が遠い。

 だが確実に進んでいる証拠に、敵の兵種が変化した。


『騎馬!?』


 デカくて速い、面倒な敵だ。

 正面から突っ込んでくるこれに対し、シーラは極自然に、新たな歩法を試みていた。

 かなり以前に練習してみたがついぞ使う機会の無かった歩法。ずっと練習したことすら忘れていたのに、コレが最適な場面をぶつけられると当たり前に身体がそう反応してくれた。

 駆ける足捌きが突如変化する。足を動かしているようには見えぬままに、身体二つ分真横にズレ動くのだ。

 歩兵相手ならばここまで動く必要はない。大きな身体を持つ馬が相手だからこそ、その衝突から避けるのにここまで動かなければならない。

 だから滅多に使う機会はなかった。だが今は、これが最善だ。

 馬の横っ腹と同時に敵兵の足を斬り飛ばす。急所を狙う余裕はない。

 すぐに次の馬が迫る。ズレ動いたシーラに驚きながらも、自身の前に来たのならちょうどいいとばかりに馬で轢き殺しにかかってきた。


『一回しかできないなんて言った覚え、ないよ』


 再びシーラの身体がズレる。そちらもまた足を斬り飛ばす。今度は真横から来る。


『速い!』


 騎馬の集団を相手にしているというのに、攻撃がひっきりなしで途切れることがない。

 よほど接近してるでもなければこんな事態にはならないはず。

 今度は避けるで精一杯。そんなシーラの後方から、また別の馬が突っ込んでくる。

 こんな頻度でシーラに仕掛けていれば、一つ間違えば馬同士が衝突してしまうだろう。その連続攻撃も馬を止めて囲んでいるのではなく、勢いよく走り込みながらというのだから信じられぬ練度だ。

 騎馬に乗っている兵士の表情でシーラは察した。


『これっ! これがこの軍の必殺の陣だ!』


 シーラのような人外の戦力を、そうでない兵たちが討ち果たすための必殺の備え。

 恐らくはあの三人の怪物を相手に何度も練習したのだろう、この騎馬による連続攻撃は、シーラを相手にとってすら有効に機能している。

 最初の歩兵陣といいこれといい、傭兵団などと言っているがやってることはもう正規軍、いやさ近衛軍にも匹敵しよう。


『なんだってこんなのが辺境なんてところに来てるんだか』


 真後ろから馬蹄。


『マズッ!』


 音に気付くのが遅れた。偶然ではない。それはあの三人の不意を突くために騎乗している兵士が磨いた技術だ。

 振り向くシーラの眼前に駆け寄る騎馬が。

 他の馬と比べて歩幅が大きい。だから、音のみが頼りの視界の外から来られると見誤り易いのだろう。

 瞬時にシーラは動くべき道を定める。

 最初が一番の難所だ。

 駆ける馬へ真正面から突っ込み、二本の前足の間を足から飛び込み滑り抜ける。

 馬の足が大地を蹴る間を測って飛び込んだのだが、肩先を馬の蹄がかすめた。

 前足を抜けた瞬間、滑る足で大地を蹴り止まる。一瞬その場で止まることで、後ろ足に踏み潰されるのを回避、残る猶予は僅か。

 馬の身体の下で身体を捻り、後ろ足の間を出る時は頭から外に飛び出し転がる。


「うっひゃー」


 敵もこの動きには驚いたようで、連続攻撃が止まる。それでもすぐに近場の騎馬が進路を変えてシーラへと走ってきたが、方向転換のせいで速度が乗り切っていない。

 これなら、とシーラは大きく飛び上がる。馬が速すぎるため、一足で馬の頭頂を超えるような跳躍はできない。だが、馬の首までは届くし、速度が乗り切っていないなら弾く力も弱い。

 シーラの足が馬の首を捉える。だがこれは打撃が目的ではない。馬の首を蹴るとシーラの身体は馬の右方へ、更に上へと跳び上がった。

 シーラの行く先にはこちらへと突っ込んできていた騎馬がいた。

 驚く馬上の兵士の顔面を蹴ろうとしたシーラだが。


『わわっ! 思ったより速いしっ!』


 慌てて蹴りから膝蹴りに切り替える。ついでに馬の鬣を手で掴んで急減速。

 馬は髪をつかまれたことで大きく後ろに仰け反る。その斜めになった馬体から敵兵士が零れ落ち、代わりにシーラが馬の背に。

 全力で馬はシーラを嫌がるが、両腿で馬体を押さえ、片手で手綱を引きつつ馬の首に逆の手を置く。


「大人しく、だよ」


 馬はたちまち従順になった。

 これで一気に、と思ったシーラは残る騎馬たちと同じく、その信じられぬ光景に一瞬全ての動きを止めてしまった。

 土煙が見える。

 馬が走ればそれなりに土煙が立つような大地だが、それでもその煙も膝下程度の高さでしかない。だがそこに見える土煙は腰上まで、遠目に見てもわかるほどのもので。

 それはつまり馬が大地を蹴る以上の力でそうしている何かが、来るということだ。


「しいいいいいい!! らあああああああ!!」


 土煙の主は、その身体の後方に煙を上げているので当然見える。

 元気に、嬉しそうに、叫んできたのは不知火凪であった。


「ナギ!?」


 シーラの目にはとても珍しい走り方に見えた。

 両腕をこれでもかと振り上げる走り方、よく見れば足の振り方も独特だ。

 だが、速い。とんでもなく速い。

 馬首を返し、シーラは目指す標的の方角目掛けて馬を走らせる。

 徐々に加速していく馬。だがそんな加速始めの馬の速さでは、凪の速度には敵わない。

 あっという間に横に並ばれる。

 馬を走らせるシーラと、その横を並んで走る凪とで。


「さっすがシーラ! 同じこと考えてたなんてね!」

「ナギこそこっちが大将の居場所だってよくわかったね!」

「なんとなくそんな感じしたのよ! 悪いけど! 先に行くわよ!」


 そう言い残し、凪は騎乗したシーラを抜き去り走っていった。

 シーラは身体能力の高さに自信もあったし、持久力もかなりのものであるという自負もある。

 だが、あそこまでの速さで走れる気もしなかったし、あの速さを維持し続けるなんて真似ができるとも思えない。

 馬のほうが速いし長くもつと思ったから馬を奪ったのだ。なのにアレはいったい何事だと。


「そもそも。なんとなくそんな感じがしたって、何?」


 他者に散々それを押し付けておきながら、シーラは凪の理不尽な所業に対し、そんな感想を漏らすのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  「強い相手と戦うと能力が上昇する」だと実力が伯仲している以上でないと伸びませんが、「苦戦すると伸びる」だったら、常に自分に縛りを入れて訓練や対戦する人は際限なく伸びちゃいますね。
[一言] というさ、現地人なのに普通に付き合えてるシーラこそが一番やべーといつも思うのよw
[一言] いやいや600人くらいまだよゆーっしょ? 初陣で3対3000とかやらかした先達もいることだし!
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