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誰だ、こいつら喚んだ馬鹿は  作者: 赤木一広(和)
第十章 神も仏もありゃしない(仏はある)
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143.正攻法で


 涼太は人差し指を立て、皆に向かって言う。

 涼太の前にはイング、スキールニル、アルベルティナ、そして凪と秋穂がいる。


「イングは自分がユグドラシルであると人間全体に周知する気はない。まあ明かした上で人間がそれを信じたらまたイングに信仰の力が集まっちまうんだから仕方がない。だが、その上で、聖域の最も重要な場所である術式のある聖堂の中に、入れるかどうかという問題だ」


 ひく、とスキールニルの額に青筋が走るが、涼太は敢えて無視。


「だが、正体を明かさないとなれば、たとえそれがエルフであろうとも、きっとここの人間は聖域の術式のある場所までは通してはくれないだろう。となれば強行突入以外にない。けど、それはイングが嫌だと」


 うんうん、と頷くイング。


「なので俺が提案するのはだ、まずはここの教会の神父の一人に、事情を全部ぶちまけることだ。その上で、イングに聖域に近寄る術があるのかどうか、その神父に聞く、というのはどうだろう」


 はいはーい、と凪が手を挙げる。


「はい、凪くん」

「結局正体教えるってことじゃない?」

「イングが正体を明かしたら、大神ユグドラシルが実はエルフだとわかったら、教会組織自体がとんでもないことになる。それを理解できる人間に説明して、表沙汰にならないようにイングを術式のある場所に案内させる、ってのが今回の案の骨子だ」


 今度は秋穂が手を挙げる。


「はい秋穂くん」

「それを向こうが信じなかったら?」

「強行突入。けどな、イングにはソイツに聖域の魔力と同じものを見せてもらう。ソレを出せる相手を、ただのイカサマ野郎だなんて抜かす馬鹿は、きちんと教義を学んでいればいるほどに少なくなると思う」


 今度はアルベルティナがおずおずと手を挙げる。


「おお、どうぞアルベルティナくん」

「えっと、ね。もしかしたら、そんなものしらなーい、って襲ってくるとか、ない?」

「大いにある。が、そこは今回考慮に入れなくていい。向こうがそうした場合、強行突入時と同じ行動になるだけだからな」


 そして強行突入となればこちらにはイングがいるのだ。聖域全体よりも強大な魔力を備えたイングを、防ぐ手段なぞ涼太にも思いつかない。

 首をかしげながらではあるが案外ノリの良いスキールニルも手を挙げる。


「うむ、スキールニルくん」

「そんな馬鹿にイング様の手を煩わせる必要性を認めません」

「それはイングに直接言ってくれ。それを説得できなかったから今ここに来てるんだろ」

「ぐぬぬ」


 はいはーい、と皆にならってイングも手を挙げる。


「はい、イングくん」

「えっと、えーっとー」


 みんながやってるので自分も混ざりたかっただけの模様。


「きょ、今日のお昼は何処で食べますかー?」

「知らん。そっちで勝手に決めれ」

「えー」


 と、いうわけで。と続ける涼太。


「そんな教義の根源に関わるような事態の収拾を無理やり押し付けられることになる不幸な神父さんのご紹介です。昨晩のうちに報せがきたのですが、エルフの二人を接待するための要員として、ハンス神父という方がもうすぐここに来ることになっています。一同、彼には憐憫と同情の心を忘れないでください」






「なんということだ、なんということだ、なんということだ…………」


 全部の説明を終えた直後のハンス神父の様子である。

 真っ青な顔で頭を抱えてしまっている、無理もない。

 涼太も一応、短い時間ではあれどハンス神父がどういう人物かを調べはしたし、ハンス神父に直接幾つかの質問をして確認もした。

 ハンス神父はシムリスハムンで神学をきちんと修めた人間で、まだ二十代と若くはあるが、既に幾つかのお役目を与えられている優れた(つまり仕事のできる)人間であると。

 ひとしきりハンス神父が懊悩するのを放置した後、涼太はにこにこ顔で彼に言う。


「と、いうわけでだ。イングをシェレフテオの中枢まで連れていくから協力しろ。イングたちは結界さえ直せれば以後は教会に関わるつもりはないんだ。それさえ済めば、万事が上手くいく。そうだろ?」


 弱弱しい表情でハンス神父は答える。


「私の一存でどうこうできる範疇ではない。上の者に相談を……」

「した結果、強行突入になったとしても、確かにお前さんの責任じゃあない。責任さえ取らされなければいい、そういう話ならそれでもいいだろうさ。だが、シェレフテオの損失を少しでも減らしたい、今後も聖地シェレフテオをこれまで同様に存続させたい、と思うんなら、また別の答えが出てくると思うんだがね。こちらがお前に望むのはそう難しいことじゃない。中の様子を教えてほしいのと道案内、それだけだ。もちろんアンタが顔を隠すのも構いはしないさ」


 涼太はハンス神父の肩を叩く。


「上と話をして、揉めない自信があるってんならそうすればいい。きちんと事の重大さを理解して、対応できる人間が上にいるってんなら望むところだ。で、お前さんの目から見て、この事態を、説明して協力を得られる人間、いるのか?」


 動揺し、うろたえにうろたえていたハンス神父の態度が、少しずつ落ち着いてくる。

 思慮深げに考え込み、何度か頷き、そして彼の中で結論が出た。


「聖地の管理者一族に相談する。それも、極力一番上のみを通す形で。管理者一族の長の息子と面識があるから、彼を巻き込み、直接交渉を試みようと思う。聖域が後百年と少ししかもたないという話を、彼らが何処かで感じるようなできごとでも起こってくれていれば話は早いんだが……」


 涼太が目を向けると、イングは首をかしげる。


「ふつー、それが魔法を知らない人間にもわかるぐらい弱まる前に処置するわよ、当然。もしアンタたちにもわかるような兆候が出てたら後一年ももたないだろうし」


 ということだ頑張れ、との涼太の言葉にハンス神父は小さく嘆息する。

 ちなみに涼太は今、キースという偽名を名乗り髪色も茶色に変えている。さすがにリョータを名乗るのは憚られた模様。凪と秋穂に至っては名乗りすらしていない。


「キース、できればアンタにも説明に付き合ってほしいんだが……」

「人間の案内人である俺なら、上手いこと言って味方にできるとでも思ったか? 悪いが俺は魔術師でもあるんでね、イングのヤバさはお前ら以上に理解している。たとえ教会を向こうに回すことになろうとも、イングの怒りを買うような真似は絶対にしないぞ。俺は、人間として死にたいんでな」


 涼太の言い草に、ハンス神父はまた少し考えこんだ後で、付け加える。


「それで、いい。それでもいいから付き合ってくれないか。話し合いの場を設けるための段取りが必要なんだ。俺にできる限りで身の安全は確保するから」

「……わかった。いいさ、イングの目的のためだ、危ない橋も渡ってやる。後は頼むぜイング、俺がコケたら残りはアンタに任せるからな」


 ぎょっとした顔になる凪と秋穂であったが、声を出すわけにもいかず、イングは、うーん、と唸った後で言う。


「殺されたら、仇は絶対に取る。それでいい?」

「おう、それだ。それに加えて、俺のツレのことも頼む」

「わかった。……ソレ、そんなに危ないことなの? 無理なら私も我慢するよ」

「もしもの備えだ。ほとんど可能性はないと思うが一応な」


 といった言葉は、イングに向けたものと見せて実は、涼太の仇を他人に譲るわけないでしょ顔をしている二人に向けて言っている。いやフードで顔は見えないのだが。

 フードで顔を隠したままであっても、凪と秋穂が心配しているのは涼太にもよくわかる。だから涼太はやはりイングに言いながら二人に言ってやるのだ。


「たまには俺も、危ない橋の一つでも渡ってみせないとな」







 ハンス神父の必死の形相のおかげか、彼が存外に信用を得ていたのか、ハンス神父が動き出してからものの半日で涼太はシェレフテオ管理者との面会が成った。

 といっても面会の主体はハンス神父で、涼太は神父の用意した証人、といった立ち位置だ。

 相手には管理者一族の長とその四男、そして護衛のための屈強な戦士が二人と、長の補佐をする者が二人。

 相手の数の方が多いため、涼太にとってはとても圧迫感のある会議といった雰囲気だった。

 実際、この段取りを組んだハンス神父は話し合いが始まるなり、補佐の二人に刺々しく責めるような言葉を向けられている。

 本来あるべき面会の手順を踏まなかったことや、そもそも長を呼んだ理由があまりに礼を逸しているという話が問題で、それは全くもってその通りであるのだから。

 ハンス神父はこれを丁寧に説得しようとしているが、補佐の二人の態度を軟化させるのに苦労しているようだ。なので涼太は少し援護してやることにした。

 口を挟むのではない。ただ、退屈そうな態度を見せた。

 それでも、補佐の二人は不快げな顔を見せるのみで堪えた。長は全く反応せず。補佐二人の顔を潰すつもりはないのか無言のまま。

 なのでわざとらしく机に肘をついてやると、補佐の一人が我慢しきれず反応してしまう。


「おい、貴様。その態度はなんだ」


 引っ掛かった、と涼太は内心にやりと笑う。


「そういう内輪の話は内輪で済ませてもらえないか。そちらの長が出てきたってことは、ハンス神父が持ってきた話を聞こうって意志が僅かでもあるってことだろう? 悪いが、教会内の秩序やら若い神父の教育なんてものは俺には一切関係がない。そんな話を延々部外者の俺に聞かせるってのは、俺の感覚ではとても恥ずかしい話だと思うんだがね。それとも、話を聞く気すらハナからなかったってことか? ならそれこそ先に言ってくれ。俺は、今すぐ、席を立つだけだ」


 無礼な、と口にしたかったのだろうが、補佐二人は涼太の言葉に口を噤む。涼太はエルフの同行者としてこの場にいるのだから、そんな彼に、無位の者だからといい加減な態度は取れない。

 もう一人の補佐が、じろっと涼太を睨む。


「では、その方はどういった立場でそこにおるのだ?」

「だ、か、ら、俺は商談をしにきたわけでもなきゃ、おえらいお方に上申にきたわけでもない。お前らは、話を、聞く気があるのかないのかどっちだ。今すぐ、はっきりと答えろ」

「ただの人間にしか見えぬお前がエルフの代理人であるという保証はあるのか?」

「そんなに立場とやらが気になるってんなら、とっとと行って直接エルフと話してくりゃいいだろう。ロクに事前情報もなく話し合いに臨んで一発で破綻したところで、俺には責任どころか損すらない。ここまで黙ってそっちの茶番を見守っててやったんだ、俺は十分にそちらの立場に配慮したと俺は考えてる。さあ、さっさと次の話に進め」


 交渉術にたけているわけではない涼太だが、こちらの世界での尋常ならざる日々のせいかおかげか、立派な立場の大人が相手だろうとビビることだけはなくなったようで。

 補佐二人は長を見て、長が頷くのを確認したうえで涼太の申し出を受け入れることにした。


「まず……」

「いや待て。俺は面倒は嫌いなんで、さっさと俺の言葉を伝えちまうことにした。アンタらに付き合ってたら比喩でなく日が暮れちまう。質問なり何なりはその後で、ってことでいいか?」

「……よかろう。言ってみろ」


 こほん、と小さく咳払いした後で、涼太は口を開いた。


「俺はキース。ボロースの魔術師だ。いや、元、か。エルフとは交易を通じて知り合ってな、今回こうしてシェレフテオまでの案内を買って出た。エルフたちの目的はもう伝わってると思うが、聖域の張り直しだ。後百年だかで聖域の効力は失われるそうだから、その前に来た、と言っている。俺も人間なんでな、教会の立場ってものにも一応理解はあるつもりだし、教会が混乱することで人間社会が混乱することをエルフは望んじゃいない。だから今回こうして話し合いの場を設けてくれ、とハンス神父に頼んだんだ」


 ただ、と続ける。


「間違ってほしくないのは、俺はエルフがそれを望むから人間社会の混乱を避けようと動いているんだ。エルフがそう望まない、もしくはより優先順位の高いものを進めるために教会の立場を無視するというのなら、俺はそっちにつく。その理由を、これからアンタらに説明する」


 教会なぞ知ったことか、という涼太の意見であるが、その後に続く言葉が興味を引くものであったため、補佐二人すら無言のまま。涼太は続ける。


「俺だって教会に逆らうことがどんだけヤバイかは理解している。権威だけじゃなくとんでもない武力を有していることもな。だが、それでも俺はエルフにつく。特に今回この場に来ているエルフのイングのために、俺はここにいると言っていい」


 エルフ全体としては、人間社会に対しそこまで協力的ではない。それはボロースに対するこれまでの態度を調べれば教会にもわかるだろう、と涼太は言う。

 だがイングだけは違うのだと。


「六百年前だぞ。そんな遥か昔の友達との義理を果たすために、エルフ全体の意志を振り切ってイングは聖域の張り直しに来てくれたんだ。わかるか? あの人がどれだけ義理堅い人かが。だから俺はあの人の為に働くんだよ。それでくたばっちまうことになっても、だ。あの人が恩義を感じてくれれば、六百年とは言わないが百年、いやさ数十年でもいい、俺の家族をあの人が気にかけてくれるってんなら、俺一人の命なんぞじゃ到底釣り合わない取引になると思わないか? あの人の言う、自身が大神ユグドラシルであるという話を魔術師の俺が信じちまうぐらいのとんでもねえ魔力を持った人がだぞ?」


 堪えきれず何かを言おうとした補佐二人を涼太は手で制する。


「言いたいことはわかる。わかるが、それでも一度でいい、あの人の魔力を見てくれ。シェレフテオで聖域を見てきたアンタたちなら、誰よりも正しく判断できるはずだ。エルフ全体を敵に回すのもとてつもなく恐ろしいことだが、俺はそんな話以前に、あの人一人を敵に回したら、ただそれだけで教会どころか人間の国の一つや二つ消えてなくなっちまうと思ってる。それを、アンタたちの目で、確認してくれって言いにきた。できればアンタたちが信頼できる魔術師もいるといい。魔術師ならば、あの人のヤバさ、絶対に手を出しちゃなんねえってことが理解できるはずだからな」


 しんと静まり返った室内に、涼太の声のみが響く。


「一応、注意しておく。今回、エルフの一行は六人だ。その内で、俺が一番弱い。もう一人のエルフであるスキールニルは言うまでもなく、残り三人も本気で暴れ出したら人間にどうこうできる相手じゃない。変な気は起こさないでくれよ」


 涼太はまっすぐに長を見ながら言う。


「俺もイングの主張をそこらで口にして回るつもりもないし、もちろんエルフの側にもそんなつもりはない。だから聖域を直したとして、その事実をアンタらがどう扱おうと俺たちもそれに倣おう。だから頼む、イングに、昔の友達との義理を果たさせてやってくれないか。それをするために発生する幾つもの危険の可能性を飲み込んでくれないか、って俺は頼みにきたんだ」


 涼太は、その後の質疑応答タイムにも丁寧に答えてやった。

 エルフの事情をそれなりに話してしまっているが、それをエルフの側は気にするつもりがないのも知っているので、問題になるだろうと涼太が判断した部分以外は問われるがままに答えた。

 イングにとって聖域の張り直しは絶対条件である。

 それをしなかった場合、魔核がむき出しとなりランドスカープ国王都圏が壊滅してしまうのだから。

 だからその最悪と比較して、シェレフテオの抵抗勢力を皆殺しにする、という選択肢も存在はするのだ。人間のためになることがわかっているのだから、それで人間を殺すことを矛盾であるなどと考えはしない。むしろ、殺さない方が明らかに矛盾であると断じることができるのがエルフである。

 それで死ぬ者を可哀想だと思うし、殺すのを嫌だと表に出す情を持っているのがイングであり、人間にそこまでの情を持たぬのがスキールニルだ。

 結構な時間を彼らの説得に費やした涼太であるが、その最中、ふと思うことがあった。


『なるほど、嘘をつかないでいられるのなら、自分の意図を隠したままでも真に迫る話ができるものだな』


 涼太が彼らを説得しようとしているのは全て、人をできるだけ傷つけたくないというイングの意向をどうにか汲んでやりたいと思っているからで、涼太自身の意志はまた別の所にある。

 それでも、自分に嘘をついていないのだから、涼太自身も一生懸命事に当たれる。

 そういう理屈を整えられぬ時に、上手く他人を騙せるのか、と考えてみて涼太は即座に答えを出す。難しい。人を騙すということは、きちんと生きてきた人間にとっては存外に難しい行為であるのだ。






「すまん、キース。助かった」


 客室にて、ハンス神父のそんな言葉に、疲れ切った顔で飲料を口にしながら涼太は答える。


「命を懸けるとは言ったが俺も死にたいわけじゃないんでな。連中が馬鹿やらかさないようにするのは俺のためでもあるさ」

「……一つ、懸念がある。あのイング様の魔力を見て尚、上がこれを認めない場合はどうする?」

「そこが、最後の一線さ。そいつを駆け引きの材料にしてもダメだ。それを理解できない相手なら、もう実力行使しか手がない。その時は、アンタだけは生き残らせてやるから、全ての後始末はアンタがしろよ」


 何かを言おうとしてそれを堪えるハンス神父。

 今シェレフテオの管理者一族の間での話し合いが行なわれている。

 涼太はエルフ、そしてイングの危険さと、これに対し無礼な態度をとることの危うさをこれでもかと説明したつもりだ。

 なので、実際にエルフを前にした会見は一発勝負であると理解してもらえたと思う。何人もが何度も何度もイングに魔力を見せろと言いに行くなんて寝ぼけた話は出てこない、と思う。相手は、王都の貴族なんぞよりよほど危険な相手なのだ。

 重要なのは連中が、イングが聖域を張り直すことができると認めながらも、大神ユグドラシルであるという主張をきちんと聞き流せるかどうかだ。

 まあ、その辺は幸いなことに、連中の会議がシェレフテオ大聖堂の外でやってくれているおかげで、涼太には筒抜けなのである。

 大聖堂の中は聖域のせいかはたまた大聖堂に魔力があるせいか、涼太の遠目遠耳の魔術は全くといっていいほど通ってくれない。

 そして、彼らの話し合いに結論が出る。


『よしっ』


 管理者一族の重鎮数名と信頼できる魔術師二人がイングとの会見に臨むことに決まった。


『しかし、よくもまあ、ぎりっぎりまで保険かけるもんだよな』


 管理者一族の重鎮、ではあるが、おそらくは一族の当主は、後で問題になったらこの重鎮を切り捨てることで一族の延命を図るつもりだろう。

 当主は最後の最後までエルフが大神ユグドラシルであるという事実を聞かなかったことにできるよう、立ち回るつもりだ。

 そして、これがエルフを用いた詐欺行為である可能性も、決して捨てはせず対策を用意してある。

 また実力行使をせずに済ますようにしているが、実力行使の準備も整えている。


『カマルクの血族ねえ。聞かない名だが、コイツは俺たちの担当かね』


 管理者一族の会議の中でも、いざとなったらカマルクの血族を出せばエルフが相手だろうと問題はない、とする意見が出ていた。

 そしてエルフとの直接会談の時も、カマルクの血族の中から敵の技量を見極めることが得意な者を人員に加えるつもりらしい。管理者一族からの信頼は相当なものだ。


『……凪と秋穂は引っ込めておくか。俺たちとエルフたちとは別だってことを、きちんとわかってもらわんとな』


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― 新着の感想 ―
[良い点] リョータ無双回! こういうのも良いなぁ [一言] こんなん、 『信じて送り出したカマルクの血族が…』 とかなるフラグやん… カマルクの血族にイングの実力を見極められる力が有れば、即堕ち2…
[一言] >俺たちとエルフたちは別 結界は結界。それはそれとして戦争はやる。とw
[良い点] はてさてどうやってぶち壊れるんだろうかw [気になる点] エルフって結局寿命は存在してたんだっけ? 寿命で死ぬってのが人間が呪われてる(とエルフが考える)根拠だったよね
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