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最初の敵

 私は外に出ると、近くの地面に円上の大きな痕跡を発見する。


『これは……!』


 そして私はその先にいた黒装束を着た男を視野にいれると睨み付ける。


『──1人?……妙ね』


 幾人かの敵を覚悟したが、どうやら1人だけのようだった。

 するとその人物は両手を前に構え魔法を唱える。


『フレイム・ラージボール!』


 唱えた男の上半身を(おお)い隠すように大きな火球が出来上がると、それが勢いよくこちらに向かってくる。

 思ったよりも速かったため、私は咄嗟(とっさ)に横へと跳んだ。

 だが、その瞬間少年が視野に入る。

 まさか真後ろにいたとは把握できていなかった。


『なッ!? なんで出てきたの!』


 気づいた時には遅い。火球はもうそこで少年に衝突する寸前だった。


『うわぁぁぁーーーーー!!』


 少年は防げないと分かっていても反射的に顔の前で手を交差するように防御している。

 だが火球は容赦なく少年に直撃する。

 衝撃と共にとてつもない熱気も感じられた。

 火球の影響で火煙(ひけぶり)が少年を隠すように発生した。


『──っ……ァ』


 私は呆気にとられ、助かる希望など感じられない事から声を失う。

 そして少しずつ消えかかる火煙から、思いがけない状態の人物を察知(さっち)する。


『…………!』


『…………!』


 私も含め黒装束の男も驚きの表情を見せる。

 無傷の少年。少年の身体には少年を包み隠すように透明のシールドのようなものが見えた。

 

『ぁ……え?』


 少年自信も驚いているようだった。

 何が起きたのか自分が何かしたのか何も分かっていないようだった。


『ど、どういうこと?』


 私は思わず口にした。だが小さすぎる声量は少年には届かず、返答はもらえなっかた。

 ふと気付くと黒装束の男が私に向かって魔法を唱えていた。

 なぜ少年に防がれたかは分からないようだが、明らかに最優先に倒すべきであろうと判断した私を狙う。


『キャプチャー・チェイス!』


 青白い複数の線上の光が私に向かってくる。


『これは追跡魔法!──クッ……斬れるか?』


 ──追跡魔法──

 魔法使用者の意に従い行動する。

 発動時に使用者の意志で捉えた相手を攻撃するまで追跡する。

 使用者が攻撃を受けるか魔法自体が破壊されない限り消えない強力な魔法。


 剣の扱いに長けている者であれば、一部の魔法を斬撃で斬ることも可能ではあるけれど……。

 私も決して弱くはないと思う。

 だけど今はまだ、この魔法に打ち勝てるだけの力と技量は足りていないと、私は少なからず実感していた。

 

 それでも一応の抵抗をしようと、剣を胸の前に構えてみせた。

 魔法が私に向かって飛んでくる。

 私は剣を頭上に構え斬撃の準備を始めた瞬間、目の前に小さな人影が盾となり存在していた。


『お姉ちゃん!!』


 私の前に少年が立ち塞がり、両手を前に構えている。


『──君……! 何をしているの!』


 突然の出来事に私は驚いた。


『た、多分大丈夫だから……!』


『大丈夫なわけない! 早くどいて!』


 だけどもう遅い。

 青白い光が少年に直撃する瞬間、今度ははっきりと見えた。

 またもや透明なシールドが少年を守り魔法を打ち消す。


『──なぜだ!? どういうことだ!』


 黒装束の男が叫び動揺を隠せない。


『お姉ちゃん! 早く!』


『──!』


 その言葉の意味をすぐに理解した。


 次の瞬間、私は黒装束の男の前に一瞬で向かう。

 男は自然では無い一瞬の風が吹いた気がして違和感を覚えていたようだった。

 男の目線下から私は自慢の剣を両手で腰下に構える。


『油断したな』


『──しまっ』


 男は魔法を唱えようとするが、この距離では剣に()がある。


『遅い!!』


 私は構えていた剣を思いっきり振り上げると、男の体からは血渋きがたち、地面に仰向けに倒れ、息を引き取った。


 私は血の付着した剣を一瞬で風で払い、(さや)にしまうと少年の元へと向かう。


『……っ』


 少年は初めてみる死体に動揺を隠せず目線を外していた。


『死体は初めて?』


『あ、当たり前だよ!』


『それもそうね……。て、そんなことより君ね! あれはなに? 魔法を打ち消すなんて』


『……さ、さぁ? 分かんない。死んだのかと思ったら、なんか守られてた。よく分かんない』


『分からないって……。 それなのに私の前に出てきたの? 下手してたら死んでたのよ!』


『だって、なんか分かんないけど大丈夫な気がして……それに……』


 少年は一呼吸起き答える。


『──お姉ちゃんを守るのが、力になるのが僕の役目でしょ──』


『──!』


 私は驚く。

 恐怖は無いのかと、とても異様だと感じた。


『お姉ちゃん優しいね』


 少年は満面の笑みで言う。


『──は?』


 私はまたも驚かされる。


『だって道具の心配なんて』


『──なっ! ち、違う! これからいろいろ役にたってもらう為には死んでもらったら困るだけよ……!』


 私は思わず顔を熱くしてしまう。


『ふふ。そうだね。ねぇそれよりさ』


『──なに?』


『そろそろ名前、教えてよ』

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