異様な少年
森へ入り暫くすると1つの小屋が見えてきた。
『はぁ……はぁ……もうすぐよ……』
──私は少年の手を引き、走る速さに合わせながらも出来るだけ速く走っていたが、目的地を視野にいれると少し足を緩める。
それでも万が一のこともあり、周囲を警戒しながら小屋を目指す。
『お、お姉ちゃん……さ、さすがにもう……はぁ……走れないよ』
『もう着いたから。ほら、早く入るよ』
私は目の前の扉を開け、繋いでいた手を放り投げるように小屋へと入れる。
『はぁ……はぁ──ここは?』
『まぁ私の秘密基地みたいなもんよ』
小屋内にはキッチンや机、椅子、本棚などもあり奥には風呂やトイレ、外には井戸もある。
正直秘密基地と言えるのか微妙な感じだけど……。
ちなみに二階は寝床になっている。
『そっか…。で、ここは?』
少年は再度同じ質問を繰り返してきた。
『だから秘密基地』
私は同じ質問に多少苛立ちを覚えてしまい眉間にシワをよせてしまった。
『い、いやそうじゃなくて、僕の状況……』
『あぁ、そっか。そうだったわね。先ずはその話をしなければね』
少年の知り得たかった事を把握した私は説明に入る。
『とりあえず簡単に言うとあなたを異世界から転移させたのよ』
『転移……。そうなんだ……』
『……!?』
少年の反応に違和感を感じた。
普通は理解なんて到底できるものではないと思う。
それにこんなに落ち着いてるのも異様だと、そう感じた。
『随分と理解が早いわね。それとも異世界転移はあなたの世界では珍しくないとか?』
『──え?あぁ。違うよ。そうじゃないけど、聞いた事ないわけではないからさ。漫画やアニメで見たことあるし』
少年は苦笑いを浮かべながら答えてきた。
『まんが……?あにめ……?なんなのそれは?』
聞いたことのない言葉に私は困惑してしまった。
『あはは……。それはまぁいいや。それと僕の世界には魔法なんてないよ』
『魔法がない!!?──そんな世界があるのか。……羨ましい』
私は最初驚きを見せたが、最後は小さく呟くように言葉を発していたようだ。
そのせいで聞こえていなかったのか、少年は首をかしげている。
『──いえ何でもないわ。気にしないで』
そう言い私は首を軽く横に振る。
それを見て少年は次にまた質問した。
『えっと。ひとつだけ聞いてもいい?』
『なに?』
『転移ってことは、いつかは元の世界に戻るってこと?』
少年の質問を聞いてから私は今まで以上に真剣な表情で非情に答える。
『いや、悪いけど戻してはあげられない。少なくとも私の目的を遂げるまでは』
『目的?』
『君は知る必要ない。あなたは私が転移させた。つまり私の──道具──私の武器であり盾よ。私の為に力を使ってもらう』
『──そっか。……そっか』
少年は顔を俯かせ沈んだ表情を見せている。
『私があなたの世界での、あなたの人生を奪ってしまったのは事実。だけど謝罪をするつもりはない。元の世界に戻りたいのなら、一刻も早く私の目的を遂げられるよう努力することね』
私はあえて冷たい表情を見せながら、またも自己中心的に少年に言い添える。
『うん。がんばるよ』
『──へ?』
全く想像もしていない返答を聞いてしまったためか、私は情けない声をあげてしまった。
だがすぐに咳払いで誤魔化しながら疑問を述べる。
『ちょっと理解が良すぎない?普通はもっと──』
私は本当に異様に感じた。
これが子供の反応らしくなく、まともではないと。
もっと混乱したり泣きじゃくったりするものだと思った。
そんなような事を言う前に、少年は私の言葉を遮ってきた。
『お姉ちゃんが言いたいこと、なんとなく分かるよ。子供っぽくないんでしょ?普通の子ならこういう時はこんなに落ち着いてないだろうしね。──でもぼくは普通じゃないから』
少年は最後の言葉で苦笑いを浮かべてくる。
『それにね、大丈夫だよ?僕は元の世界に戻りたいなんて思ってないから。──あんな腐った世界──二度とごめんだ』
少年は悲痛な面持ちを見せながら答えた。
『……!』
少年のあまりにも意外な反応と共感を覚え、この時初めて私は少年に対して多少の興味を抱いた。
『──本当に、戻りたくはないの?この世界は多分、あなたの世界と比べても危険で地獄のようなところよ?』
『確かにそうかもしれない……。けど、僕にとっては──あの場所が地獄だった──』
そう言うと少年は俯き、悲しい表情になっていった。
すると次に、少年は私に向かって満面の笑みで思いがけない言葉をかけてきた。
『──僕を地獄から救ってくれてありがとう──』
そんな意外な言葉を聞き、私は思わず驚きの表情を隠せなかった。
だが直ぐに表情を隠すように視線を外し答える。
『やめて。私はあなたを救うつもりで転移させた訳じゃないし、私は自分の為に君を利用するだけ……。だから変な事を言うのはやめて』
『──そうだね。だけど僕はそう思ってるから。それは変わらない。だから、恩返しするよ。お姉ちゃんの力になる』
そう少年は力強い表情で宣言してくる。
『そう……。本当に変わってるわね。ま、道具として役に立てば何でもいい』
私は一向に変わらないその少年の態度に諦めを感じた。
『ま、どんな力があるのかも分かんないんだけどね』
少年は可笑しげに答える。
『だからそれを調べる為に、これからある街へ行くのよ』
と、私が言葉を発した次の瞬間。
外で大きな爆発音のような物が聞こえた。
『な、なに!?』
私は思わず言葉を発し、驚きながらもすぐに扉へと向かい、勢いよく外へと飛び出す。
仕事が忙しくアニメ見たりゲームしたりでも忙しく(笑)中々手につかないこともありますが何とか投稿が遅くならないようにがんばります
面白く書けるといいのですが……
次回もよろしくです