15 暗闇からの生還
見渡す限りの暗闇
周辺には何もない
「ここは...どこだ...」
そこには裕一がいた
すると一筋の光が裕一を指した
「うっ...なんだ...」
するとひげを生やして、天使の輪をつけた青年がいた
「君はまだここに来るのには早いよ」
と優しく言う
(誰だ..)
「さぁ元の場所にお戻り」
そう言いながら裕一の額に触ると
裕一は消えた。
ここは病院の集中治療室
裕一は今も集中治療室にいる
「...ん...あぁ...」
病室で寝ている裕一が一瞬うめき声をあげた
近くに看護師がいたが
「ん?...なんか聞こえたような..」
ふと裕一を見るが
「気のせいか」
と言い裕一の病室を後にする
「ん...なんか人の声が聞こえたような...」
体が動かなくても薄っすら声が聞こえた
次第に全体にも力が入っていくような感覚があった
(あたまが...なんだこの...感じ)
(体に..力が...)
力を振り絞り
「あ...あぁぁ...」
すると入れ違いに入ってきたベテランの看護師がその声を聞き
「御木本さん?」
不思議に思い裕一の右手に手を置く
「御木本さん聞こえたら私の手握ってみてください」
「あ..ぁぁ..」
なんとなく聞きにくかったが
とりあえず右手と聞こえたので右手に力を入れてみる
すると
「ちょっと誰か来て―ーー」
ベテラン看護師が呼んだ
「はい。」
「先生呼んできて意識戻ってる!」
慌てて来た看護師に
「えっっ!?」
「いいから早く!!」
「はっはい!」
若い看護師は先生を呼びに行った
「御木本さん!御木本さん!」
そう何回も呼んだ
次第に体にも力が入り
感覚や聴覚もよくなっていった
(あぁ..俺助かったんだな)
(なんか鼻あたりがゴム臭い)
と思っていると
主治医の池間が駆け足で駆けつけた
「意識戻ったって?」
「はい、いま私の手を握ってます!!」
「裕一君聞こえるかい?聞こえたら左手も握って」
裕一は力を出し左手にも力を入れた
「おぉ..しゃべれるかい?」
(いや..しゃべれないん...だけど)
おもむろに首を横に振る
「やっぱまだちゃんとしゃべれないか」
「このまま様子を見て変化したらまた呼んで」
「分かりました」
そう聞こえた瞬間
安心したのか裕一は眠ってしまった。
4日後
「ん...あぁ...」
目が覚めた
(寝てたのか...いい加減起きるか...)
体に力が入ったのか、おもむろに
ベッドから起き上がる
周りを見渡すと
「ここ...どこだ...」
とつぶやいた、すると
(頭が...痛てぇ...割れそう...気持ち悪い...)
激しい頭痛と吐き気に襲われた。
(腕と足が...左右で...変だな...)
そう思いふと見るとギプスにくるまれた足と体に固定された腕に気が付く
(変な感覚はこいつか)
と思ったとき
「キャー―――――――」
様子を見に来た看護師が悲鳴を上げた
(うっせぇな...誰...)
すると看護師の悲鳴を聞きつけ2人の男性看護師が駆けつけた
「御木本さん!」
「だめですよ!起き上がっちゃ!」
「誰か先生呼んで」
看護師2人が裕一を抑える
「ちょ...誰...怖いんだけど」
未だに事態を呑み込めていなかった
すると
「どうした!」
池間が、駆けつける
「裕一君ひとまずベッドに横になろう」
看護師たちが裕一をベッドに乗せる
「裕一君話せるかい?」
すると裕一は
「ここ..どこ...あなたは誰...俺なんで..ここにいるの...」
池間は
「君は車に轢かれて今入院しているここは病院だ」
「私は主治医の池間です」
と答えた
「あぁ...そうか...俺、学校で車に轢かれて...」
「そうだ君は事故から二週間近く意識不明だったんだ」
そんなやり取りをしているうち
普段の体の動きしゃべりが戻ってきた
完全に意識を取り戻した裕一
彼の顔には安堵の表情があった