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扶桑帝国異世界戦記  作者: 土崎クシュン
第一章
4/7

第四話 外界進出準備

GWですね。読者の皆さんはどのように過ごしますか?

作者は実家に帰省して、のんびりしたり、友達と遊んだりします!

今日は移動中の新幹線の車内から投稿します。


 


■扶桑帝国 首都東京 総統官邸 会議室


 俺の側近二人が火花を散らしているところをなんとか取り成してから、各省庁の高官や軍のトップが月に一回集まって開催される定例会議に参加するため、二人を引き連れて移動する。

 会議室は執務室から近い位置にあるのでそんなに移動時間は掛からない。

 会議室に入ると、既に参加者全員が着席して談笑をしていた。俺達が入室と同時に座っていた参加者は談笑を止めて直ぐに起立する。

 ちなみに会議室は二十六畳くらいでモダンなコの字型の机と椅子、中央にOHPと壁にスクリーンが設置されている。

 

「これより会議を始める。総統閣下に敬礼!」


 由佳莉の凛とした声で一斉に礼をする。その後、着席して各省庁の報告から始まった。

 ちなみに由佳莉は扶桑帝国副総統に任命し、階級も少佐から一気に中将に昇進させた。他にも軍の組織編成によって昇進祭りになった。


「では、まずは我々から。国土交通省の経過報告を致します」


 最初に口を開いたのは、『前原真人』国交大臣だ。ダンディでモテるおじ様的な男だ。実際、国民にもファンが多くいるらしい。


「帝国本土及び離島の探索と掌握が終了しました」


「漸く終わったか。ご苦労だったな」


 前原に労いの言葉を送る。

 扶桑列島が転移(俺が転生)してから一週間ほど国内は小さいながらも混乱が各地で起こり、その対応とゲームでの扶桑列島との相違点や転移による事故が無いかなど現在の扶桑列島という国を知るために政府職員を全国に派遣して調査活動を行った。また、国内の地下資源もどれだけあるか調査させていた。

 国民の混乱に関しては総統である俺がテレビ演説を行って収めた。国民は総統に対してある程度の忠誠心があるらしく、演説後は徐々に混乱が収まり、元の生活に戻っていった。

 調査活動は本土に関しては比較的順調に活動が出来たが、離島の調査が難航した。特に無人島の調査と各地の資源探索に時間を要した。


「こちらをご覧ください」


 前原の指示で彼の部下がOHPオーバーヘッドプロジェクターを使って資料を映し出す。

 そこには扶桑列島が写し出された。


「まずは列島の地形と文化です。調査の結果、日本列島と全く同じでした。ゲーム時代の扶桑とも変わりがありません」


 扶桑帝国の全ての人間(新生児は除く)は日本やゲームでの扶桑についても知っていた。だが、ここは日本列島と似ている別の国だ。そういう事から念のため日本や扶桑との相違点を調べさせていた。結果は同じで心配はいらないようだ。


「次に国民の有無です。赤は有人、青は無人を示しています。結果としましては無人島は扶桑列島以外の全てです」


 無人島を示す青色は千島列島(北方領土)、伊豆・小笠原諸島、南西諸島、その他。小さな島も幾つか青だったが、この三つが主な無人島だ。

 ちなみに扶桑帝国の人口は約八千五百万人だ。その内二割の約一千七百万人は軍人や軍関係者だ。さらにその九割以上は召喚した人材である。


「次に資源に関してですが、今後に響く可能性がある問題が浮かび上がりました」


 次にOHPに映し出されたのは各地の埋蔵量資源分布だった。


「見て分かるように鉄鉱石、原油、天然ガスなど埋蔵資源が非常に少ないことが分かりました。現在は総統閣下の能力によって賄っていますが、今後の事を考えると非常に不味い状況と思います」


 他の大臣や幹部達がざわめきだした。

 前原の言う通り、現状は能力によって資源を出していたが、この能力は期限付き。あと一年半でこの能力は効力を失って使えなくなる。

 確かにこれは不味い。早急に対応しないと間に合わなくなってしまう。


「分かった。対策は早急に検討する。だが、資源探索は引き続き継続してくれ」


「了解しました」


 前原とその部下は一礼して元の席に戻った。


「それじゃあ、次は僕からね」


 次に立ったのは技術開発庁の『佐久間秀明』長官。国防総省の外局で主に防衛装備品の研究開発などを担当している。

 佐久間は他の大臣達とは違って会議の場であるにも関わらず、白衣を着た如何にも研究者という見た目の男だ。

 初めて大臣達と顔合わせした一回目の会議では数人の大臣から服装などに関して色々と文句を言われていたが、いちいち着替えるのは非効率と反論した異色の存在だ。

 その後も何度か大臣らと衝突はあったが、技術者としての彼の能力はトップクラスである為、好きにさせようと言う意見が多くあったことで特例として認めることになった経緯をもつ。


「陸海軍の武器・装備の設計が全て終了しました」


「早かったな」


「当然です。あとは予算の承認と資材の使用許可を頂ければ、すぐに開始できます」


 これで国産の武器が生産できる準備が整った。

 自信たっぷりのその姿は一部大臣の機嫌を少なからず悪くしていることは気付いていないだろう。まぁ、いつもの事だから気にしたら負けだな。


「次に電子装備に関してですが、設計は出来ていますが、問題点もあります。GPSやミサイルの誘導技術などは人工衛星が不可欠です」


 確かにどれも人工衛星の存在が必要不可欠だ。

 偵察をはじめ、遠距離通信、各種誘導弾等など軍事だけでなく、国民の生活にも人工衛星に依存している機能が非常に多い。

 政府への嘆願にもGPSナビや携帯電話の普及してほしい声がたくさんあった。


「人工衛星の打ち上げは急務だな」


「それで人工衛星とロケット、各種設備一式と研究用に同じものを召喚してください」


「分かった。打ち上げ場所は決まったら教えてくれ」


「既に決まっています。あとは総統が来てくれるだけです」


 有能すぎる部下を持つのも大変だな。佐久間のテンションに付いて行けなくなり、溜め息を吐いた。スケジュールの調整は由佳莉に任せよう。


「他に、何か報告する事はあるか?」


「はい」


 手を挙げたのは薫子だった。


「既に聞き及んでいる方もいますが、本日早朝に長距離航海演習中の軽空母鳳翔から発艦した偵察機“彩雲”が大陸を発見したと報告が上がっています。場所は我が国から東方650㎞の地点です。途中で現地人が乗ったドラゴンと思われる飛行生物に追跡され、大陸の沿岸部の航空写真を五枚撮影して離脱しました。こちらがその写真です」


 OHPに写真が五枚映された。

 一枚は海から見た港の様子。二枚は港の様子、三枚目、と四枚目は町の様子、最後は町から飛び上がったドラゴンとそれに乗る人間。

 全ての写真を見終わるとこの場にいる全員が息を飲んだ表情をしていた。いや、佐久間は少年のようなキラキラとした目をしていた。


「やっぱりここは異世界なんだな」


 俺の呟きに何人かは頷いていた。

 心の片隅では科学がなく、我々の知らない世界が広がっていることを否定していたのだろう。

 だが、引き返すことも無視することも出来ない。転生させてくれた神様からお願いされた役割も成し遂げなければならないからだ。

 ならば皆に伝えることは……


「そろそろ本腰を入れる時が来たようだな」


「外界への進出、ですか」


 由佳莉はこちらを見て言う。他の大臣達の視線も一気に集めた。

 ──外界への進出。

 外界とは扶桑帝国が定めた領海の向こう側の事であり、その先へは進出していない。海軍の演習で向こう側まで行っていたが、本格的な進出は無かった。


「ですが、何故今なのですか?能力が切れた来年からでも遅くはないと思います。それに行けば面倒事が増えるばかりで我が国に悪影響を及ぼす恐れが……」


「由佳莉の言う通り、外界に出れば十中八九面倒事が起こるな」


「ではなぜ?」


「いつかは外界に出なければならない。我々は転移した時に女神からの言葉を聞いているはずだ。この世界の恒久的な平和の為に各国の政治や戦争に介入して治める役割がある。それに向こう側の人間に我々の存在を既に知られている。なら、問題を先送りして後手に回るより、先手を打って早めに片づけた方がいい」


「……」


 由佳莉は眉毛をクイッと一瞬跳ね上げる。

 召喚した軍人や政府関係者の多くは召喚されたときに女神と接触していた。交わした会話は一方的で内容はどれも『戦乱を静める為に総帥と共に戦って欲しい』というもとだったと言う。

 なので、我々は何故ここに存在しているのかという点に関しては共通認識なのだ。


「ご主人様の言い分は分かりますが、我々には解決しないといけない問題が山ほどあります。特に資源については……」


「それなら外界との貿易で得るのはどうだ?日本でも足りない資源は海外からの輸入に頼っていた経緯がある。外界との繋がりも得られて一石二鳥だ」


「確かに輸入について理解できますが……」


「なら問題はないじゃないか。本土防衛の指揮は陸軍の高杉参謀総長に委ねている」


「……」


 由佳莉は静かに唸って一旦目を瞑る。


「そもそも、扶桑帝国の総統であるご主人様が前線や未知の領域に向かうなど、心配する身にもなって下さい」


 由佳莉や薫子は気付いていたようだ。俺が外界へ行こうとしていることに。

 まぁ本来なら国のトップである総統が前線に行く事はまず殆ど無いが、過去の歴史には自らが前線に立って戦う事もあるんだし、別に珍しいって事でもない。

 何より、前線に居るだけで味方の士気が向上する。それが余計に心配事を増やすという由佳莉の考えも分からない訳ではない。


「別に現場の指揮官を信用していないわけではない。ただ、世界の姿を俺は自分の目で見て聞いて感じでみたいんだよ」


「……」


「安心しろ。総統はただのお飾りじゃない。君達全員が知っていることだろう?」


「むう……」


 最初の頃は指揮も実戦も全然駄目だった。前世ではミリオタまではいかないながらもそこそこ知識はあった。だが、知っているのと実際にやるのとでは全く違うことが良く分かった。幸いにも周りには優秀な……非常に優秀過ぎる部下達が居てくれたので、各分野の知識と戦い方などみっちり、ビシバシと鍛えられた。今では指揮のみならず戦闘においても他者の追随を許さない実力を有していると由佳莉や薫子のお墨付きも貰ったし、それを自負している。


「外界探索の船に俺も乗る。これは決定事項だ」


「由佳莉、総統がこうなってはテコでも動かせないわ」


「……ですね。分かりました」


 薫子の援護射撃で何とか折れてくれた。いや、諦めたと言うのが正解だろうか?指揮官としては情けないかもしれないが、こればかりは譲れない。

 その後、会議は無事に終わって大臣達は次々と会議室を出ていった。

 俺と由佳莉、薫子の三人も会議室を後にして執務室に戻った。

 執務室に戻ると早速、外界探索艦隊のリストを相談していた。陸軍と海軍、双方の意見を交えつつ、大まかな案を作って今日は解散した。

 薫子は海軍式敬礼をして「失礼します」と言ってから踵を返し、先に執務室を出る。


「では、私もこれで……あっ、ご主人様。一つ宜しですか?」


 由佳莉も陸軍式敬礼をしようとしたが、何か用事を思い出して途中で止めた。


「ご主人様、今夜何かご予定はありますか?」


「ん?いや、これといった用事は無いな」


「そうですか。でしたら今夜私と一緒に……」


 と、喜色と妖艶な表情を浮かべるが、背後のドアからバキッと何かが壊れた音がして、由佳莉の言葉が途中で止められると、不機嫌となって「ちっ」と舌打ちをする。


「……すみません。急用を思い出したので、先程の話はまたの機会に」


 由佳莉はそうに言うと、敬礼をして早歩きで執務室を出て行った。


「……」


 暫く呆然とするも、気を取り直して書類整理を始めた。そして、夜になって夕食を食べようと執務室から出ると廊下側のドアノブが潰されて砕けていた。



 

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