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扶桑帝国異世界戦記  作者: 土崎クシュン
第一章
3/7

第三話 扶桑帝国建国

建国といっても建国後のエピソードですね

 

■扶桑帝国 首都・東京 総帥官邸 同執務室



「……大分国らしくなってきたな」


「あれから半年ですか。早いものです」


 俺は今、副官の由佳莉と共に執務室で様々な書類にサインをしている。

 女神がドジって運悪く死んでしまい、そのお詫びに異世界への転生と亜人救済の任務を引き受け、異世界に降り立ったあの日から半年が経過した。あっという間だ。


 俺はこの濃密すぎる半年を振り返った。


 降り立った翌日から新兵と共に訓練をしつつ、兵士や武器の召喚を行いながら、女神が扶桑帝国を召喚してくれるのを待っていた。

 一週間後、女神から召喚の準備が整ったとメールが届いた。早速、召喚をして兵士の九割を駆逐艦や戦艦に分乗させ、部隊を率いて扶桑帝国本土へ上陸した。

 ちなみに俺たちが最初に降り立った場所は日本で言うところの対馬に相当する無人島だった。俺を含めた5000人の兵士は順次、改装前の軍艦に乗って九州の長崎県に位置する港に拠点を移した。簡易改装中の大和、五十鈴、大鳳と守備隊500人、後方支援要員2000人は取りあえず置いていった。


 まず、最初に行ったのは国民の把握だ。既に街単位での組織は組まれ、横の繋がりも出来ていたので調査はすんなりと終わった。

 調査の結果、国民は六十代以上はおらず、その大半は子供がいる家族だった。保育園、学校、仕事があり、召喚された翌日から普段通りの生活が始まった。


 だが、見た目は出来ていても政治は機能していない状態だった。早速、俺や由佳莉、薫子など軍のトップは召喚した輸送機で東京に向かい、総統官邸にて新たに召喚した政治家たちと政権を立ち上げて内政に注力した。


 憲法や法律の発布、大臣の任命、その他各省庁の立ち上げなどに追われてんやわんやだった。

 ゲームではクリック一つで出来たが、いざ人に入れ替わるとこんなにも大変なのだと実感した。

 この世界に来て一ヶ月、政治体制がある程度形になったので国民に向けて大規模な演説をした。


「私はここに“扶桑帝国”の建国を宣言する」


 テレビ演説で内閣の紹介と憲法の説明を行い、建国記念で列島中お祭り騒ぎだったらしい。また、暦も同時に始まり、形式は日本と同じく七曜表で24時間365日で区切られた。

 ちなみに扶桑帝国の建国記念日は五月十六日だ。


「にしても、発展が早すぎだな……」


 そう呟きながらもようやく慣れた総帥としての仕事である各省庁からの報告書に目を通して、サインをする。建国に際して俺はゲームと同様に“扶桑帝国総帥”……つまりは国王となった。


 世間が建国記念でお祭り騒ぎでも官邸では仕事に励んでいた。

 召喚したての扶桑帝国はゲーム時代と比べるとなにもかも全てが大きく後退しており、建物を例に上げるなら昭和初期の木造家屋が多く密集しているような町並みだった。


 そこで総帥として第二の人生を歩み始めた俺はゲームの知識と現代の知識を活かして扶桑列島の再開発計画を立てて、即日実行に移した。

 計画が始まると国内は建設ラッシュが訪れ、高度経済成長があったかの如く、デパートやマンション、新幹線や高速道路などの建設が列島各地で始まった。

 列島の開発は指示するだけで担当大臣や民間企業が頑張ってくれているので、こちらは必要な物資の召喚や人員の貸し出しなどでほぼ丸投げ状態だ。勿論、彼らの忠誠心も兵士程ではないにしろ高いので、手抜き工事はしていないし、行政職員を派遣して工事の確認作業も行っている。


 その間、俺は軍事基地や兵器工場、陸海軍共有の飛行場は神様から貰った能力で1週間かけて、全国各地に召喚して兵士を配置した。ちなみに配置した兵士も召喚による兵士だ。一日千人も召喚出来るのはありがたい。

 だが、問題も山積みだ。例えば、ゲーム時代の軍は全て最新兵器だったが、国と同様に召喚された兵士は全てが初期状態のままだ。中には完全な新兵も混ざっている。


 陸軍の場合、各地に配置した軍隊を更に編成して、北部方面軍、東部方面軍、西部方面軍、中央方面軍、南部方面軍の五つに区分け。現在は更新された装備の点検と訓練を行っている。


 海軍の場合は横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊の五ヶ所に海軍基地と工廠を建設して日々、周辺海域の哨戒と訓練、召喚した軍艦の改装を行っている。

 また、史実では建造されなかった新鋭艦の建造も計画している最中である。

 現在、就役している軍艦は戦艦、航空母艦、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、その他総じて50隻。中には改装前の艦もいるが、水兵が優秀なせいなのか問題を隠す行為が無く、迅速な原因究明と対策を施すので航行中のトラブルでも被害を最小限に抑えることが出来る。


 他にも陸海軍が保有している航空隊も日々訓練を行っているが、まだ始めたばかりなので熟練者が増えるのはもう少し先になりそうだ。



 そんな感じでこの半年間、様々な分野で改革が進んだが、もう一度ここではっきりと言おう。国民や召喚された兵士、技術者、政治家達はチート過ぎる。ゲームではこういうのはなかったので少し混乱はあったが、なんとか割り切るようにはしている。


 先に言った様に僅かな期間で町並みは随分と変化した。軍事施設も同様だ。俺が今居る官邸はいつの間にか巨大な建造物へ変貌した。例えるならナチスのような神殿みたいな様相だ。東京についた頃に使っていた日本の総理官邸の姿はもう何処にもない。


「ご主人様、さっきから手が止まってますよ?」


 各方面軍の軍備状況や作戦計画の報告書を確認している由佳莉がジト目で見ながら言う。


「ああ、すまない」


「いえ、お疲れですか?」


「いや、大丈夫だ」


 それ以上追求せず、再び書類と向き合い始めた。俺も報告書の一つに目を通す。


 コンコン──。


 執務室の扉を誰かがノックがした。


「入れ」


 俺が入出を許可すると、「失礼します」と一人の女性が入ってくると、姿勢を正して海軍式敬礼を行う。


「四之宮中佐か。何か用か?」


 と、なぜか警戒した雰囲気で由佳莉が朱里に言う。彼女達の背後にはそれぞれ龍と虎が睨め合っている幻覚が見えたくらいに空気がピリピリとしている。

 ちなみに彼女たちを含めた軍の幹部は組織編成の為に昇級している。副官の由佳莉は陸軍大佐で、薫子は海軍中佐だ。陸軍や海軍の実質的支配権を有している。


「用があるからこうして総統閣下の元に来たのです。そういう三鷹大佐は何故ここに?」


 笑顔ながらも朱里と同じくらい不機嫌そうな雰囲気を出す。

 彼女達の衝突は今に始まったことではない。度々、彼女達はどちらが総統である俺の隣に相応しいか競っているのだ。史実のように陸軍と海軍には対立するほどの溝もなく、実際は彼女達はとても仲が良い。

 俺も鈍感じゃないのでこうなった理由は分かっているのだが、止めるのは容易ではない。今は諦めて自然鎮火を待つのみだ。


 勿論、二人は本気でお互いを嫌っているわけではない。じゃれあっているだけだ。それに旧日本軍のように陸軍と海軍の不仲はここでは存在しない。お互いのノウハウを生かして、兵器開発や合同訓練などもしている。


「私はご主人様と二人っきりで書類整理をしているのです」


「では、私も報告を終えたら手伝いましょう。そろそろ会議の時間なので、二人だけでは今日中に書類整理は終わらないでしょう」


 そう言うと眉間に皺を寄せて唸る由佳莉を気にする事無く、俺の隣に近付いて手にしていた報告書を俺に渡す。


「軽空母鳳翔からの報告書です」


「鳳翔?確か長距離航海演習で外洋に出ているんだっけ?」


「その通りです」


 俺は報告書を朱里から受け取って表紙を捲り、内容に目を通す。


「大陸の発見か。そろそろ現地人との接触も視野に入れるべきだな」


「はい。また、今回の発見に伴い、現地の航空隊にに我が軍の機体を目撃され、追跡されそうになったため、十分な偵察は出来なかったということでした」


 長距離航海演習中の空母機動部隊所属の航空隊は飛行訓練も兼ねて扶桑列島の四方に飛び、列島周辺の島や大陸の位置を調査をさせていた。


「総帥、そろそろ会議の時間です」


「おっと、もうそんな時間か?気が付かなかったよ。ありがとう」


 薫子が入室してからそれなりに時間が経過さていたようだ。

 「どういたしまして」と返事を返すと、由佳莉の方を見て一瞬ドヤ顔をして口角を少し上げる。一方の由佳莉はそんな朱里を見てムッと眉に皺を寄せた。


(自称副官の癖に会議の時間も忘れてたのですか?)


(忘れていない。まだ、時間に余裕があるから問題ない。それと自称ではない!)


 一瞬の間に由佳莉と朱里はお互いにアイコンタクトでそんなやり取りがされた。静かな攻防が彼女達の間で繰り広げられている現状に俺は小さく溜め息を吐いた。

 

 

次回、登場人物がそこそこ増えます

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