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扶桑帝国異世界戦記  作者: 土崎クシュン
第一章
2/7

第二話 顔合わせと再会

本日二度目の投稿です。

 


「これが……世界最大の戦艦かぁ……」


 憧れの戦艦が今目の前にあると思うと全身が震えてくる。

 人類史上最強の大和型戦艦といえば、94式45口径46cm砲を主砲として3連装で3基9門、15.5cm砲を副砲として4基12門、舷側装甲410mmを備え、未だにギネスブックにその名を連ねる桁外れの超兵器だ。

 そして今、俺はその艦に乗り込もうとしている。


「では、大和に乗艦しましょう。足元にお気をつけください」


「お、おう。わかった」


 舷側の階段を上がると主砲塔の脇に出た。

 甲板はピカピカに磨き上げられており綺麗に光っていて、砲塔や銃座もしっかり整備されている。召喚したてでまだ真新しい。

 甲板にはお出迎えなのか水兵がズラリと並んで敬礼していた。ちなみに三鷹少佐を含め5人の幹部軍人がいる。


(あれ?三鷹……幹部……まさか!?)


「ねぇ、三鷹少佐。もしかして君はWWIの扶桑帝国副総帥三鷹由佳莉なのか?」


「漸く思い出してくれましたね、ご主人様。もうずっと気が付かないんじゃないかって思い始めていたところですよ?」


 呆れ半分、喜び半分といった感じの表情を浮かべる由佳莉。

 彼女は転生前にプレイしていたブラウザゲーム【World War If】で初期から育ててきたメンバーの一人で扶桑帝国建国後は副総帥という役職になった俺の右腕だ。

 そういえば、女神が召喚する兵士なども【World War If】に合わせると言っていた。つまり、大和と共に召喚した兵士たちはあのゲームで育てたキャラクターということ。現に目の前には右腕の由佳莉がいる。


「今まではご主人様と言葉を交わすことが出来ませんでしたが、これからは言葉を交わし、我々の技術と経験を全力で奮ってサポート致す所存です」


「それはありがたい。ところで由佳莉はゲームの時の記憶があるのか?」


「勿論です。私という個人を作ってくれたところから初めて貰った服や武器、数々の死線を潜り抜けた戦場も覚えています」


 【World War If】では始めにプレイヤーの副官として一人キャラクターを作ることから始まる。好きなようにキャラクターを弄れるので好みの副官を作れるのだ。彼女の場合、昔、事故で死んでしまった妹が大きくなったらこんな感じかなって思いながら作ったので面影が似ている。


「三鷹少佐。我々のことをお忘れじゃないですか?」


 幹部の一人が一歩前に出て俺たちに話しかけてきた。白い軍服と少佐の階級章を身に付けた女性軍人だ。


「もしかして、四之宮少佐なのか?」


「はい、此方でははじめましてですね。総帥」


 着物が似合いそうなこの上品な女性は四之宮薫子。ゲームでは海軍大将を務めていた海軍のトップで、数少ないお姉様キャラ。女性ながら文武両道で海だけでなく陸の戦場でも由佳莉と並ぶキル数を稼いでいた。実際、ゲームのフレーバーテキストでは良家のご令嬢だったとか。


「こちらこそよろしく。薫子もいるってことはここにいる面子はゲーム初期のメンバーか?」


「そうですね。由佳莉や私を含めここにいる兵士は帝国建国前のメンバーです」


「まさかとは思うが……由佳莉、兵士の男女比はどうなってんだ?」


「ハッ、私を含め1000名中600名が女性兵士です」


(ああ、やっぱりかー!)


 ゲーム開始直後、ハーレム部隊でも作ろうと女性軍人の比率を上げて召喚した事が一度だけあった。

 結果としては男性兵士と比べて能力値がやや低く、育てるのに苦労したことがあった。やはり体力的にみれば男性に軍配が上がる。それ以降、部隊編成では半々か男性を多目にするようになった。

 もしかして、この世界でもそんなことが起こるんじゃないだろうか?

 俺はそんなことを考えているとまだ直立不動の状態の三鷹少佐が口を開いた。


「女性兵士が多いかと思われているかも知れませんが、我々、女性兵士の練度は男性兵士と一緒です。個々の体力差は多少ありますが、実力は申し分ありません。ゲームの時とは違いますので、どうかご安心を」


 心配そうな顔が出ていたのか三鷹少佐がそう言ってジト目で俺を見つめながら答えてくれた。


「……ゴホン!!」


 三鷹少佐の視線に耐えきれなくなった俺はこれからの行動を相談することで無理矢理誤魔化すことにした。

 三鷹少佐も無かったことにしてくれたのか小さく溜め息してから凛々しい表情に戻って答えてくれた。


「それでこれからの予定ですが……」


「うん。女神からは扶桑帝国そのものを召喚してくれる手筈になっている。召喚されるまではここで訓練と軍艦の改装かな」


「それは構いませんが、召喚したてなのに改装ですか?」


「もしかして、欠陥部分を直すつもりでは?」


 頭にハテナを浮かべていた由佳莉に薫子が答えを言い当てた。


「そうだ。大和型は細部までほぼ完璧と言っていい設計だけど、弱点が無いわけじゃない。確か、副砲の装甲部分の薄さとバイタルパートの強度不足が有名だったはず。他にも直した方が良いところもあるかもしれないからね。後方支援要員の技師達に改装を依頼しようと思う」


「なるほど。それは名案です!」


「では、分担はどのように?」


「俺は施設と武器を召喚する。由佳莉は武器のチェックと周辺警戒の指揮を執ってくれ。薫子は技師たちと改装箇所の洗いだしと軍艦の機能チェックを部下に指示してくれ」


「はいっ!」


 それじゃ、やりますかね。

 薫子には追加で改装箇所から比較的簡単な改装を即日開始するように指示した。

 その後、彼女たちと別れて行動する。

 アプリを開いて後方支援要員を2000人と大型艦も収容出来るドックなどの軍港を多数召喚し、そこに大和を入渠させる。

 ついでに駆逐艦“吹雪”、軽巡洋艦“五十鈴”、装甲空母“大鳳”を召喚し、大和同様にドックに入渠させた。

 技術者を含む後方支援要員は早速、入渠させた軍艦たちの改装を始めた。

 必要な資源や施設、工作機械などは召喚して各々に渡せばすぐに作業をしてくれる。召喚の作業は大変だったが、憧れの軍艦を強化するためなのだから疲れなんて全然感じない。

 俺たち食事は後方支援要員の炊事係に材料を渡して調理器具などを渡して炊き出しをしてもらった。後方支援要員って様々な人材がいてとても助かる。

 だが、技術者がいてもどうにもならない部分はある。本格的な設備はあるが、あくまでこれらは仮設施設。ドックでも不可能な部分は能力で何とかする。本格的な大規模改装は扶桑帝国が召喚されてからになるだろう。


「……夢のような光景だ」


「……圧巻ですね」


 俺と三鷹少佐は排水量60000t越えの大和がドッグに入って改装作業を眺めていた。作業員は慌ただしく動き回っている。


 バチバチバチ!トンテンカン!トンテンカン!


 溶接の音や金属を叩く音が響いている。


「しかし、いつまでも感動しているわけにはいかない。順次改装させていってくれ」


「全ての艦を改装するんですか?」


「ああ。やれることは全部やっておきたいからね。特に大鳳のガス漏れ爆沈は最悪だ。そういった欠点は少ないに越したことはないだろ?」


「たしかに他の艦も各所の強度や装甲で不安なところがあると四之宮少佐が言っていました。万全の備えは大切ですね」


 この世界に転生する際にこの世界についての知識が刷り込まれた。その知識によれば大国でも中世程度の武器が主流だが、魔法によって戦術が大きく広がる。また、過去に“勇者”と呼ばれる存在もいたという。不確定要素がたくさんが、他国との戦争も予想されるし、被害を少なくするためにも出来ることはするつもりだ。


「しかし何故、これらの艦艇を召喚したのですか?空母としての性能なら大鳳型の方が上ですが、翔鶴型でも良かったのでは?」


「確かにそうなんだけど、翔鶴型を召喚すると改装前で装甲空母化には時間が掛かる。この世界じゃ何が起きるか分からないから最初から装甲の厚い方にしようと思ったのさ。それと、艦載機の数は艦載機自体の強度引き上げと折り畳み機構をつけることで従来よりも多く搭載できるようにするつもりだ」


「艦載機の強度引き上げ……ということは露天駐機なさるんですか?」


「最初は数十機くらいであとは順次数を増やす感じかな。まぁ、その点でも甲板の強度が高い大鳳型がうってつけだったのさ」


 不安はあのガス漏れだな。密閉式は素晴らしいが、火気の取り扱いは十分に気を付けなければいけない。


「で、最大の理由は何ですか?」


「俺の趣味だ!!」


「………だと思いました」


 あれ?ちょっと引かれた!?

 聞いてきたのはそっちなのになんで!

 ま、まあいいい。残る問題は…………


「いつになったら召喚されるんだ?」


 女神が扶桑帝国そのものを召喚してくれるサービスを確約してからこの地に降り立った訳だが、いつ召喚してくれるのか聞いていなかった。ただ、時間が掛かるとしか。

 この際、軍人素人の俺も訓練に参加して体力や技術を鍛えようか。


「由佳莉、明日から陸軍の訓練に参加したいが構わないか?」


「えっ?ご主人様がですか?」


「俺は元高校生だ。軍人の知識はあってもそれは素人に毛が生えた程度だろう。新兵同然に扱って構わないから、短期間で鍛えてくれないか?」


「分かりました。ご主人様の為に私自ら、一人前の兵士に育てます!」


 その日は早めに宿舎へ入って明日に備えた。

 当然ではあるが、由佳莉の鬼軍曹顔負け……いや、それ以上のスパルタ訓練に周りの新兵を巻き込みながらすることになった。

 連日、生傷が増えていくなかで、少しずつ兵士としての心構えが備わっていくのを実感していった。


 

 

扶桑帝国建国は次回です。

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