新しい日々
変わったのは色。
それは、エメラルドのように、芸術的な輝いた緑。
見ていると、とても癒される。
そんな緑だった。
それでも所詮変わったのは見た目だけ。
柏は、警戒を見せつつ、若干の余裕を持っていた。
だがそれ以上に余裕だったのは、麻琴。
若干の警戒も見せることなく、平然と座り込むのだ。
しかも、棒を拾い出す。
もう諦めたのかと、柏は聞こうと一歩前に出る。
その瞬間、麻琴は立ち上がる。
糸を吊る下げた右手に棒を持ち。
表情は、不安をなくした笑み。
そしてこちらを向いて言う。
「俺の勝ちだ」
「何を言うんですか…!?」
須臾、
その速さだった。
柏の服は破れ、脇腹から微かな血が出ていた。
無論、麻琴が斬ったのだ。
しかも木の棒で。
今までの光景からは考えがつかない、あり得ない勝ち方だった。
柏の得意とする〈剣〉の術で、麻琴は完全なる白星を挙げたのた。
相手の得意能力で勝つという、異端な勝利。
こうして急に始まりを告げた、真剣な戦いは、突然の終わりを告げた。
二人がしゃべったのは、麻琴の白星から五分位たった頃だ。
麻琴は疲れ果て、柏は傷の治療をしていたのだ。
「麻琴、凄いね。糸はやっぱり序の口だったんだ」
「やっぱり気づいたのか…柏が推察した通り、俺の神技は糸ではないんだ」
神技。
それは使徒に与えられる能力のことだ。
「俺の神技は、神技をコピーする《神力盗》というものだ」
「そりゃあ、適わない」
柏もまいったとため息をつく。
「なあ、一つ頼み事していいか」
「どんな頼み?」
「俺とチームを作らないか?」
その一言は、唐突であった。
ある日の屋上。
そこに麻琴はいた。
都会にならどこにでもあるビルの屋上だ。
どうやら誰かを待っているらしい。
その間、麻琴は東京の風景をじっくり見ていた。
空は夕暮れを感じる、黄昏時の色だ。
そんな夕陽に照らされた、ビルとビルの間に車が通る。
そんなところを見ていた
それと同時に、イヤホンをつけている。
音楽を聴いているようだ。
そんなことをしているうちに一人、現れた。
青髪で短髪の青年。
妙に落ち着いた風貌。
その名は文月柏だ。
麻琴は、イヤホンを取って言う。
「よう。柏、来るの遅いぞ」
「うるさいなぁ。麻琴が早すぎるんだよ」
かつて戦った二人。
そんな二人は、東京に来ていたのだ。
言葉もそれほど時間が立っていないのに、腐れ縁の様なタメ口だ。
「学校終わった瞬間、高速で来たからかなぁ」
「そうかい」
素っ気ない会話。
柏は溜息をつき、麻琴はとぼけた顔をする。
「なあ、本当に今日、新メンバー来るのか?」
「ああ、一人」
チームといっても二人なので何もできない。
そのメンバー集めのために、柏がこの日、とうとう集めたのだという。
「悪いな。俺はどちらかというと、メンバー云々は苦手なんだ。それ以外は任せておくれ」
「ありがたい。ありがたい」
素っ気なく柏が言う。
その直後、屋上に一つ置かれたドアが開いた。