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掌編小説集9 (401話~450話)

心配症

作者: 蹴沢缶九郎

昼下がりの閑静な事務所。その会社の社員達は黙々と自身の仕事に精を出していた。

そんな中、トイレに行こうと席を立った上司が、あるデスクの横を通り過ぎた時、通路に乱雑に置かれた段ボールに足を取られた。


「おいおい、危ないなあ。君、こんな所に荷物を置かれたら邪魔だよ」


上司は荷物の持ち主である、デスクに向かい仕事をしていた社員に言った。注意を受けた冴えない青年社員は、面目ないといった様子で頭を掻いている。


「そもそも君、この大量の荷物は何なんだ。見た所、仕事には関係ない物のようだが…」


上司の言葉に、青年社員は答えづらそうに言った。


「はあ、確かに仕事に関係ない物が大半なんですが…。懐中電灯に非常食、発電機に数種類の乾電池と、あと簡易テントに浮き輪に脱出用パラシュート…」


「浮き輪にパラシュート!? そんな仕事に関係ない物を何故持ってくるんだ!?」


上司の反応は至極当然であった。青年社員に他の社員の視線が集まる中、青年社員は恐縮しきりで答える。


「例えばですが、もし仕事中に大地震が起きたら、その影響で発生した大津波がこの建物を襲うかもしれない。想像しただけで恐ろしい。僕は泳げないので、その為に浮き輪は必要なんです。例えばこの建物で火災が…」


「わかったわかった、もういい。大地震だの火事だのはそうそう起こるものではない。君は心配し過ぎなのだ。第一、会社は君の荷物置き場ではない。今日中にこの荷物を片付けておくように」


上司に注意を受けた青年社員は仕方なく、その日の内に荷物を自宅に持ち帰った。


翌日、発生した大地震の影響により、大津波に飲み込まれた会社を、自宅の飛行船から見下ろしていた青年社員は独り言を呟いた。


「ダメだ。何度会社に電話しても通じない。やはり備えは必要なのだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小説になろうは普段ファンタジー系しか読んでなく、今回は心配性、ストレスの記事を読んでいたのですが偶然、この作品が目に入り最初は何だこの題名はと驚かされましたw気になって読んで見たところ予想…
2017/11/29 15:55 退会済み
管理
[良い点] 素敵な狂気、御馳走様です シンプルながら唐突な展開に爽やかな怖さが有りますね [一言] 世にも奇妙な物語で放映されたらいいなぁ…… 所でもしかして作者様は未来☆そっぷとかお好きでしょうか?…
[良い点] 青年社員が言うことも一理あるような気もしないことはないですが、彼は少しやり過ぎ感がありますね。 予想外のラストが印象的な作品でした。
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