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善意と言う名の破壊

放課後、いきなり生徒会から呼び出しがかかった。

えー、桃何かしたかなぁ?

まぁ、一個だけ、心当たりがあるけど、まさか、ねぇ?



「ごめんなさいね、いきなり呼び出したりして。」


嫌な予感ほどよく当たるもので。

生徒会室をノックしたら、副会長さんが迎えてくれてた。

他の生徒会メンバーは、今日は来ないらしい。

…ふぅん?


「いえ、別に大丈夫です。それより、用件はなんでしょうか?」

桃、授業終わったら、尚先輩誘って、バスケ部行くつもりだったのに。


「取り敢えず、そちらのソファーに座って、お茶でも飲んでくださいな。お話はそれからでも、よろしいでしょ?」


あくまでも優雅に、ゆったりと笑い、視線で着席を促された。

高飛車な態度でも、美人さんがやると様になるなぁ。

でも、本当に、お茶なんか飲んでる暇ないんだけど。桃を早く帰して。


精一杯の反抗なつもりで、ボスンと乱暴にソファーに座る。

お?結構座り心地いい。

これきっと、高いやーつー。

っと、ソファー評価してる場合じゃないよね。



「お茶は、結構です。って言うか、副会長さんが、私を呼び出す理由は1つしか心当たりないんですけど。

でもまさか、私用でこの生徒会室は、使わないですよね?」


ちょっと嫌味を込めて言ってみた。


そしたら、副会長さんは、綺麗に整っている眉をピクリとあげて、こちらを見る。


「心当たりが、あるなら話は早いわ。」


お茶を入れるのは、諦めたようで。

桃の目の前のソファーへ座った。

そして、キッパリと。


「彼を、佐藤くんをあまり、困らせないでちょうだい。」


…やっぱり、それですか…。




副会長さんの話は、こうだった。


昨日、彼が昼休みが終わると同時に、副会長さんの所へ青ざめた顔できた。

副会長さんは、保健室へ連れて行こうとしたが、彼は大丈夫だから、そばにいてと、泣きついてきたと。

彼を落ち着かせて、話を聞いてみたら、どうやら彼が妹みたいに可愛がっている後輩が原因らしい。

きっと彼の気を引きたくて、ワガママ言って困らせているだけだろうという結論になったそうだ。


…なんだそれ。

ツッコミどころがありすぎで、もう嫌だ。


あまりにも、最終結論が、さすがの主人公さま思考で、眩暈がしてたら、副会長さんが声をかけてきた。


「…わかってくださるかしら?彼は優しいから、本当にワガママ言って振り回さないで。…貴女だけの、彼ではないのよ?」


…副会長さん、気づいてますか?

その言葉、あまりにも、悲しいよ?


「そうですね、まぁ、桃だけの彼になってくれると言われても、もう、いらないですけど。…でも、副会長さん?その言葉通りだったら、貴女だけの、彼でもない、という事ですよ?」


そう、みんなの、彼。

5人で今まで共有してきた彼。


「それで、いいんですか?これから先も、みんなで平等に、で良いんですか?」


そう尋ねても、副会長さんは、何も答えない。

なので、畳み掛ける。


「桃は嫌なの。桃だけを見てくれる人がいいの。桃の事、好きって言ってくれる人がいいの。ねぇ、副会長さん?彼に、1回でも好きって言われた?」


桃は、1度も言われなかったよ…。

可愛いね、綺麗だね、楽しいね、とかは言ってくれた。

でもね、絶対に、告白はしてくれないの。

桃には、言わせようとするくせに。

キスもしようとするくせに。

絶対にさせなかったけど。


副会長さんは、どう?

他の人たちも同じじゃないかなぁ?


思わせぶりな態度とって、ご機嫌とって、みんなに錯覚させて。

その状態をキープしようとしているだけ。


「虚しくないですか?寂しくないですか?担当曜日なんか決められて。会いたい時に会えなくて、他の女の子の相談なんかされて。ねぇ、それで、なんで平気な顔してるの?」



「…平気なわけ…ないじゃ…ない。でも、彼と話していると、なんかぼんやりして…これで、良いんだって…。私が、彼を信じて、ささえ…て…あげないとダメ…なの。」


今も、副会長さんは、ボンヤリとしている。

なんか、夢の中にいる人みたいに、見えるのは気のせい?

これは、もう、桃じゃなくて、別の人の出番…。


「取り敢えず、桃はもう佐藤先輩の可愛い後輩役は、降ります。近寄りませんから、そうお伝えください。」


チラリと時計をみて、あぁ今日はもう、バスケ部行けないかなぁと、ため息。


「それと…、今の副会長さんは、誰かついていてあげないと、心配なので。」


パーテーションで区切られていた向こう側に顔を出す。

あ、やっぱりいた。会長さん。


「付き添ってあげてくださいね、会長さん。あと、今がチャンスだと、思います。」


と、小声で会長さんを煽ってみた。

副会長さんが、心配でこっそり盗み聞きしてたんですよね?

もう、隠れるの下手なんだから。最初からバレバレ。

でも、それって副会長さん、愛されているよね。

良いなぁ…。

副会長さんも、目が覚めて、そばで見守ってくれてる会長さんを、見れば良いのに。


そんなことを考えながら、生徒会室を後にした。



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