ダメな理由
尚也視点です。
ツインテールを揺らしながら、足取り軽く教室から出て行った桃ちゃん。
その後ろ姿を見送った後。
割れた液晶画面を呆然と見つめ、座り込むヒロシに目をやった。
「あーあ、液晶ひでーな。桃ちゃん、思いっきり踏んだよね。」
まぁ、俺も同罪だけど。
笑いながら、スマホを拾い上げ、電源ボタンを押してみた。
お、動くじゃん。
「割れてるけど、使える、使える。修理代、俺が払うからさー、ショップ持ってくか?」
未だ、呆然と座り込むヒロシに声をかけたけど、反応なし。
うん、ダメだな、これ。
空気を読んでいてくれて、無言でこちらの様子を見ていた委員長に、声をかけて。
午前の授業をサボる事にした。
悪いな、委員長。
後で、お礼するわ。
取り敢えず、ヒロシを連れて、空いてる教室に引っ張り込んだ。
あーあ、こういうの、女の子相手にやりたいよね。
授業サボって、空き部屋で…って。
それの初が、ヒロシとか。
まぁ、良いけどさ。
なんかさ、今までのこの展開。
桃ちゃんは、全てわかってるみたいだったけど。
俺は、未だ何の説明も聞いてないから。
ヒロシから、事情を聞く権利はあると思う。
…聞かなくても、なんとなく、わかったけど。
ゲーム、ハーレム、ヒロイン、友人サポート。
当てはまる言葉は。
ギャルゲー。
これまでの、ヒロシの行動、言葉。
桃ちゃんをはじめとする、曜日替わりの女の子たち。
そして、とどめのアプリのお知らせ。
荒唐無稽な話だと思う。
それでも、これは、現実なんだよな。
目の前で、項垂れるヒロシ。
項垂れてないで、こっちを見ろよ。
俺は、お前から、話が聞きたい。
元親友に、説明くらいしてくれよ。
「ここは、お前が作った、ゲームの世界、なのか?」
答えは。
半分正解、だってさ。
ぽつり、ぽつりと呟くように、ヒロシは説明した。
ある日突然、ヒロシのスマホに例のアプリが入ってた。
以前やった事があるゲームの女の子たちのリストとルート選択画面。
何かわからないけど、面白そうだから。
ハーレムルートを選んで。
そして、サポート役の友人として、俺を選んで。
スタートした、と。
因みに俺を選んだ理由は。
リア充だったから、ムカついて。
だそうだ。
なんだそれ。
「俺、女の子にモテた事無かったし。
学校でなんとなく、喋る友達はいたけど。
親友なんて、いなかったし。
いつも空気のような存在で。
やりたい事もなかったし。
バイトもしてない。
いつも、帰宅部で。
家に帰って、ぼんやりと、ネットするだけ。
俺は、リア充とは程遠かったから。
バスケ部のエースで。
クラスの中心で。
男にも女にも人気で。
そんなリア充が、俺の事を応援するだけの親友になるとか、笑えるだろ?
だから、お前を選んだんだ。」
そう笑いながら、ヒロシが呟いた。
「…でも、まさか、本当に。
ゲームがスタートするとは、思ってなかった。
最初は、戸惑ったけど。
だけどさ。
人間て、慣れるの早いよな。
ここは、俺のためのゲームの世界だってわかってからは。
あとは、お前も知ってるだろ?」
順調に行ってた筈なのに。
桃ちゃんに嫌われて。
副会長にも、拒否されて。
何が、ダメだったんだろうな…。
俺は、ちゃんと、選択してた筈なのに。
溜め息を吐きながら。
俺の顔を見ずに。
呟き続けるヒロシ。
わからないの?
それが、理由だと、思うんだけど。
「なぁ、ヒロシ。お前、もし、もしだよ。このゲームが最後まで無事にクリア出来たらどうした?」
キチンとゲームを最後まで。
ハーレムをキープ出来たまま。
卒業して。
そしたら、どうした?
また、ハーレム維持したまま、大学生活送る?
そして、そのまま、就職して?
適齢期きたら、ハーレム彼女たちの中から、選んで結婚する?
出来る?そんな事。
現実味無いよね。
夢は、いつか、覚めるんだよ。
最初はゲームの中だったとしても。
いつかログアウトする時がくるんだよ。
それなのに、ずっと、ゲームの中にいたくて。
選択しようとしてるから。
だから、みんな、ここが、夢の世界だと気付いて。
離れていく。
ヒロシ、お前さ。
彼女たちの攻略以外に何かやった?
何か努力した?
勉強頑張った?
運動やった?
趣味作った?
友達作った?
バイトした?
つまんないって言ってた前と、何か違う事した?
やってないだろ?
毎日、ゲームの通り、放課後、女の子とデートして、選択肢を選んでただけだろ?
俺はさ、お前に説教出来るほど、偉くはないし。
俺もさ、努力してるってほど、してないけどさ。
それでも。
お前には、負けない。
だから。
桃ちゃんは、俺が、貰う。
お前が、ゲームのリセットかけても。
彼女が、お前のハーレムに、戻っても。
必ず、夢から覚めさせて。
俺の、彼女に、なって貰う。
俺は、今から、お前が嫌いな、リアルが充実している人とやらに戻るから。
俺の手で、失くしたもの、取り戻して。
ついでに、お前の桃ちゃん、掻っ攫って。
それで、いつまでも、いつまでも。
ショボくれている、お前の目の前で。
桃ちゃんと仲良く「ざまあ」って、言ってやるから。
だから、それが嫌だったら。
早く、立ち直って、好きなことの1つでも、見つけたら良いんじゃないか?
あまり、ざまあにならなかった。
精進します…。
そして、いよいよ次、ラストかな?




