俺たち親友だろ?
引き続き尚也視点です。
『明日、バスケ部に行ってみる。』
その一文だけ、桃ちゃんにラインで送った。
まず、謝罪して。
土下座でもなんでもして。
戻れる保証はないけど。
それでも、やれることはやってみようと、思った。
もう一度、バスケやりたいから。
そう思えたのは、桃ちゃんのおかげ。
桃ちゃんからの返信は。
ネコのキャラクターが嬉しそうに喜んでる風のスタンプ。
とても可愛いキャラクターで、まるで桃ちゃん自身が喜んでるように見えた。
「いちいち可愛いよね。桃ちゃんは。」
誰に聞かせるわけもなく。
なんとなく、1人でスマホに向かってつぶやいていた。
※※※※※※※
朝、教室に入り自席に着こうとしたら。
先に来ていたらしいヒロシが、近づいてきて、スッと手を出した。
「預けていた、スマホ返せよ。」
あぁ、そう言えばずっと返しそびれていたな。
鞄から、ヒロシのスマホを取り出し、そのまま差し出されていた手のひらに乗せる。
「はい。充電はしておいたから。」
「サンキュ。じゃ、これでお前の役目は終わりだから。」
なんか、訳のわからない事を言われた。
俺の役目って何だよ?
そして、俺から受け取ったスマホをそのまま、別の奴に渡した。
このクラスの委員長で、面倒見のいい、気のいい奴だ。
「なぁ、委員長。ちょっとこのスマホに一個だけ入ってるアプリ開いてくれない?」
俺たち、親友、だろう?
そう言いながら。
委員長は、いきなりそんな事を言われ首を傾げながらも、言われた通り、スマホを受け取り画面を覗き込む。
「良いけど…アプリってどれ?」
一通り画面を見ながら、
何も入って無いみたいだけど?
と、言いながらスマホをヒロシに返した。
「え?そんなはずは…俺が親友って認めた奴には、見える設定だと…。」
そして、俺にまた視線が移った。
「お前…、アプリ消したか?俺に対する嫌がらせか?」
おいおい、なんだその言いがかりは…。
「そんな事する訳無いだろう?ちょっと貸してみろよ…。」
再度スマホを受け取り、画面を見る。
ほら、ちゃんとあるじゃないか。
「ハートマークのアプリだろ?ちゃんとあるぞ。」
タップして、いつものように、アプリを起動させようとした。
だけど…。
「あれ?」
起動しない。何度タップしても、開かない。
「…どうした?何やってる?」
ヒロシも怪訝そうな顔で覗き込んできた。
「アプリのアイコンはあるけど、開かないんだ。」
どうしたんだろう?
今までこんな事無かったのにな。
「…お前、やっぱり何かしただろう?そんなに俺のハーレムを壊したいのか?」
また、訳のわからないことを。
ハーレムとかどうでも良いけど、俺がアプリに何かをしかけたとかいう疑惑は、晴らしておきたい。
何度か続けてアプリをタップする。
すると、軽やかな起動音が流れた。
「お、やっと開いた。…と…ん?」
なんだこれ?
起動したのに、いつもの女の子たちの情報画面は出てこない。
その代わりに…『お知らせ』と書かれた画面が出てきた。
「おい、なんだよ。アプリどうなった?」
「いや、アプリは起動したんだけど、お知らせっていう画面が出てきて…その内容が…。」
早く教えろとヒロシが覗き込んでくる。
それに、俺はお知らせの内容を見ながら答えた。
「『ゲーム終了のお知らせ』って出てるんだけど…何かわかるか?」




