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思い出しました。主人公がキライになりました。

コミュ強な彼はクラスの中心で。

男女隔てなく親切で。

そこそこのイケメンなくせに。

いつも良い人止まり。


そんな彼は、ギャルゲーの。

主人公の親友。



何の冗談かと、神様に小1時間ほど問い詰めたいが。

兄がやっていたギャルゲーの世界に転生した。

ヒロインの1人として。


いつもの通り、鼻歌を歌いなら、髪をツインテールにしようとして、ふと疑問に思ってしまったのが思い出したきっかけ。


何故私はこんなあざとい髪型に?


そして思い出す。


あ、この顔、兄がやってたギャルゲーの。

見てて1番イラっとした、妹タイプの攻略者だ…。


「櫻井 桃香」

春満載のおめでたい名前。

年下の、あざとい系の妹ポジション。

ツインテールで、男子用のカーディガンをダボっと着て、指先だけ出して。

上目遣いに「先輩♡それとも、おにーちゃんって呼んでいい?♡」

と、話しかけてくるやつ。

兄は可愛いなーこんな妹欲しいよなーっていってたけど。

これ、全部計算だから。

自分が1番可愛くみえるものを研究して実践しているだけだから。

そう言ったら、男の夢を壊すなと怒られたっけ。


…懐かしい。

懐かしいけど、それ以外の感情はわかなかった。

やってたゲームは思い出したけど、兄の顔も家族の顔も昔の自分の姿さえ思い出せない。

逆に思い出したらいけないと思った。

だって、思い出しても私はそこに帰れない。

悲しくなるだけなのだから。


大事なのは、今。

そして、ここで暮らしていくこと。

ここが、ギャルゲーの世界であること。

私はヒロインのうちの1人だということ。

これだけわかれば十分だ。


二股三股平気で仕掛けてくる、主人公なんかに、攻略なんかされたくない。

ハーレムの一員になんかなりたくないのだ。


ってことで、妹系ヒロインの証のツインテールを止めようとしたけど、ふとある事を再度思い出す。


そう言えば、兄がゲームをやっていたのを、チラ見していた時、主人公に親友がいたなぁと。

主人公の親友は、とても親切で、いつも女の子の情報を主人公の為に教えてあげてた。

主人公がその情報を使ってデートがうまくいったら一緒に喜んで。

失敗したら、一緒に悲しんで。

クリスマスとかバレンタインとかのイベントの時も、活躍してたっけ。

彼女も作らず、主人公のために。

ホモなのこの人?って聞いたら、男の友情とか、言われたけど。

本当にただの良い人なの?

ちょっと興味ある。


もし、もしもだよ?

ヒロインの1人が、主人公の親友を攻略したら、どうなるのかな?


…。


解こうとした髪をもう一度ツインテールにして。

1番のお気に入りのパステルカラーの可愛らしいリボンを髪に巻き。

大きめな男子用のカーディガンをブラウスの上から着込んで。

学校指定のリボンタイを緩めに結んで。

みんなよりもちょっと短めなスカートを履いて、紺色のニーハイで絶対領域を作り。

これが、ヒロイン桃香が、1番可愛くみえる姿。

私の戦闘服。


狙うのは主人公の親友くん。


私は一年生だから。

上級生のクラスには押しかけられない。

だから朝、校門で待ち伏せ。

きっと彼は主人公と一緒に来るから。

そこから、攻略開始。


いいよね?

主人公は他にも攻略対象者いっぱいいるんだから。

私1人くらい、親友くんに行っても。



※※※※※



いつもより早い時間。

鞄を両手で抱きしめて、人待ち顔で校門に佇む。

やはり、彼は主人公と一緒に登校してきた。


先に主人公が私に気付く。

「おはよう、桃。ひょっとして俺の事、待っててくれたの?」


いつもは、これに可愛らしく答えてた。

「うん♡先輩に会いたくて♡」とか。


でも、今日からは違う。

浮気性な、主人公に用はない。

私は主人公の親友くんを待っていたんだ。


主人公を無視して、気を利かせたのか、後ろに下がっていた親友くんのところに駆け寄る。


「先輩♡おはようございます♡あの、お名前教えてくださいませんか?あ、私は、櫻井桃香、一年三組です。」


鞄をぎゅーっと抱きしめて。

上目遣いになるように、親友くんの顔を下から見上げて。

グロスでツヤツヤプルプルにした唇をちょっとだけ開いて口角上げて。

首を傾げて、ツインテールを少しだけ揺らして。


兄が悶えていた、桃ちゃんのスチルのポーズ。

きっと、可愛く見えてることだろう。


「え?あ、あの。君、俺じゃなくて、あいつの方じゃ?」


「ん?桃は、先輩の事が知りたいんですよぉ。ダメですか?桃のこと、名前も教えたくないくらい、キライ?」


ちょっと悲しそうに。

それでも、あざとく。


「い、いや。今までずっと、君は、あいつばかりだったから。びっくりして。えっと、俺の名前は、秋月尚也」


よろしくね。


そう言って笑顔で、握手してくれた。

その笑顔が、とても爽やかで。

優しそうで。


主人公以外には、ときめかない筈の攻略対象ヒロインな私の胸が何故か、ドキドキしている。

どうしよう。

めちゃ好みなんですけど。

本気で攻略させていただきます。



…その様子を主人公がジッとみていたのは、気付いていたけど、知らないふりした。

先に行けよ。邪魔するなよ。空気読めよーと心の中でディスったけど、通じなかったらしい。



「尚也、早く来いよ。遅刻するぞー。」


ほらね、邪魔する。


「あ、悪い。じゃあね。櫻井さん。」


「あん、桃って呼んでください。私も尚先輩って呼んでいいですか?」


「わかった、桃ちゃんね。じゃ授業頑張ってね。また」


「はい、尚先輩も頑張ってくださいね♡」


主人公が尚先輩を引き摺るように、連れて行ってしまった。

でもまぁ、今回はこんなものか。

名前呼びOK出来たし。上出来、上出来。

この調子でガンガン行くぞー。




この時の私は、浮かれてて、尚先輩が、主人公に私の事で責められてるなんて、知らなかった。


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