最終話 真実⑧
自宅の火災から一年後。
僕はこの上木原町にやってきた。僕を助けてくれたお手伝いさんの親族がここで孤児院を運営していて、その縁で僕はその孤児院に入院することになったのだ。
やっと出会えた外の世界。新しい発見や初めて作る友達というものができると期待に胸膨らませて入院したものだが、現実はうまくいかなかった。
この孤児院は教育熱心で、昼間に授業の時間があるのだ。
そこで僕は隠すことなく知識や頭脳を披露した。そうすれば皆は僕に尊敬の眼差しを向け、友達ができると思ったからだ。
だが、そのせいで、僕はまたあのあだ名を与えられてしまった。
「や~い! 化け物~!」
めんどくさいな……。いい天気だったので本を読みながら孤児院の庭を徘徊していると、僕に向かって男子の集団が罵ってきた。
まさかこの世に嫉妬というものが存在するなんて知らなかった。
それも、こんな明確に表してくるなんて、想定の範囲外だった。
さて、読書の邪魔だから、僕の目の前から消えてもらおう。
僕は強めに地面を蹴った。
すると、地面は削れ、小さなクレーターが出来上がる
「ヒィィィ! この化け物がッ!」
それを見て、男の子たちは脅えて、孤児院の中に走って逃げた。
これでやっと読書に集中できる。
安堵の息を漏らして、本に目を向けるが「あのー」と女性の声が聞こえた。
声が若い。幼くもなく、老いてもいない声。
そんな女性はこの孤児院にはいない。
僕は声のする方に目を向ける。やはり声は孤児院の外から発せられていた。
「あのー、どこかで会ったことありますか?」
「お、お姉ちゃん?」
その女性は不思議なものを見たような顔をしている。
「お姉ちゃん? 私のことですか?」
「覚えてないの?」
「すみません……。私、記憶喪失でして……」
記憶喪失……。お姉ちゃんだったら、そうやって冗談言って僕を困らせたりするだろう。
しかし、お姉ちゃんは死んでしまった。彼女はもう父親の作った人造人間なんだ。
でも、生きてくれてよかった……。
「千明くん、さっき男の子たちが……。あら? どちら様?」
孤児院長のおばあちゃんだ。きっとあの子たちが僕のことをチクったのだろう。
しかし、彼女は僕とお姉ちゃんが会話をしているのを見て、唖然としていた。
人見知りである僕が外部の人間と話しているのが信じられないのだろう。
ここでお姉ちゃんのことを「父親が作り上げた人造人間です」と紹介するのはまずい。
だから、僕は嘘をつくことにした。
「彼女はめありさん。僕の実姉です」
そう説明すると、おばあちゃんは「立ち話も何なので……」とお姉ちゃんを孤児院の中に入れた。




