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最終話 真実⑦

「上木原さん!」


上木原さんが振り向くと、そこにはさとしくんとエリちゃんが息を切らせていた。


きっと山道を駆け上ってきたのだろう。彼らであっても、疲れるに決まっている。


「わざわざ来てくれてありがとね~。じゃあ、この子たちのことよろしく~」


 そう言って上木原さんは気絶している男性と怯えている少女を彼らに託した。


 二人とも場数を踏んでいるので、文句なく、さとしくんは男性を担いで、エリちゃんは少女の肩を持って山道を下ろうとした。


 その前にさとしくんは上木原さんに質問する。


「よろしくって、上木原さんはどうするんですか?」


「オレは彼らの行く末を見なければいけないからね」


 そう言って上木原さんは視線を上げた。


「彼ら?」


 さとしくんは上木原さんの視線の先を見る。


 廃校になった校舎の屋上。

 

 そこには二人の男女が距離を取って見つめあっていた。


「お姉ちゃん、これまで何してたの?」


 僕はお姉ちゃんを睨みつけるように彼女の目を見つめる


 その僕を彼女はお得意の余裕のある笑みで見つめる。


「色々と考えごとをしてたの。私たちのような存在がこの世界で生き延びるためにはどうすればいいのか?


 私だって生きたい。体に綻びが現れて、徐々に体力が落ちていくのを感じた。


 この原因がすぐに分かった。私の身体は定期的な人間の細胞を取り込むことが必要だったの。


でも、この研究所を破壊してしまったせいで、そういったメンテナンスができなくなってしまったから、私の身体は削れていった。


メンテナンスを受けられない私が生きるためには人を食べるしかなかったの。だから、保健室の件はちーちゃんの言う通りで、私が男子生徒の血を吸っていたのよ。

 

 まるごと食べたら事件になってめんどくさいことになるから、他人に気づかれない程度に行動していたけど……やっぱりちーちゃんには敵わないわね」


 両手を上に向けて降参のジェスチャーをするが、それは僕には大袈裟に茶化した仕草にしか見えなかった。


「そして、さっき、血だらけだったのは、殺しても問題ないモルモットが地下に眠っていることを知って、彼らを一人残さず食べたってこと?」


「ご名答」


「正解したくなかったよ、こんな問題」


 悲しいよ。心底、遺憾の念が込み上げてくる。


「じゃあお姉ちゃんに問いたい。お姉ちゃんは何物?」


「化け物よ。人間の敵」


「それが、お姉ちゃんがこの十年で考え出した結論?」


「そうよ」


「そうか……」


 お姉ちゃんの口からそれが聞けてよかった。おかげで僕のやることは決まったよ。


「じゃあ、ちーちゃんにも問うわ。ちーちゃん……あなたは何物?」


 僕はお姉ちゃんのほうに真っ直ぐ向いて、胸を張って答えた。


「僕は人間だ。化け物でも怪物でもない。たとえ人間離れして能力を持ったって、僕は人間だ」


「つまりちーちゃんは私の敵ということね? つまりちーちゃんは何を言いたいの?」


「お姉ちゃん、僕はここであなたを……」


 僕は拳を前へ突き出す。


「殺すッ!」


 これが僕の初めてのお姉ちゃんへの反抗だった。


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