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第四話 虚言⑨

 オレは引き金を引くのを止めて、彼の口から銃を取り出す。


 そして地面に落として、粉々に踏みつける。


 これで終わった……。オレはホッと息をつく。


 でも事件は終わったが、まだやることはある。あとでこいつを事情聴取して、それ相当の罰を与えなければいけない。


 まずはここにちーちゃんを呼び出して事情を説明しないと。


 そう思い彼を担いで学校に戻ろうとすると校門から「上木原さーん!」と青年の声が聞こえた。


 振り向くとその青年はちーちゃんだった。


「あれ~? なんでここに?」


「上木原さんが学校から走り去るのを見かけて、何か事件が起こったのかなと感じ、追いかけてきたんですよ」


 流石ちーちゃんだ。頭の回転だけでなく、事件を嗅ぎつけるのも早い。


 オレはことの詳細をちーちゃんに話した。


 オレの記憶だけだと不確かなところもあると思い、早川ちゃんに「こうだっけ?」と質問して記憶を確かめてから、情報を伝える。


 ちーちゃんはそれを腕を組みながらフムフムと話しを聞いていた。


「つまり、君はこいつに騙されて様々なツールを作っていたということか」


「は、はい……。そ、その……す、すみません……」


「君は善意を持ってやっていたんだ。それにこいつが悪用しなければこんなことにはならなかった……。


 君は何も悪くないよ」


 ちーちゃんがそう言うと、彼女の顔がパァーっと明るくなった。


「とりあえずさとしとエリを呼びましょう。


 一人で事後処理は辛いんでね」


 ちーちゃんは腕時計型端末で二人に連絡する。


 いきなりの、しかも授業中の連絡で驚いたが、二人とも承諾してくれたらしい。


「さてと……。あとは学校の地下に眠っている人たちをどうするかですかね……。


 とりあえず見てみましょうか」


 そう告げてちーちゃんは校舎に歩き出したが……。


「その必要はないわよ」


 女性の声がそれを静止した。


 校舎の方を見ると、昇降口の暗い影から一人の女性が姿を現した。


 彼女の白い洋服が赤く染まっていて、それはイチゴのショートケーキを連想させる。


 彼女はたしか……。


「雪宮先生どういうことですか?」


「こういうことよ……」


 ちーちゃんの前に何かが投げつけられた。


 それを見てちーちゃんは絶句する。


 それは人の死体だった。


 首元から血がダラダラと流れていて、地面に血だまりを作っていたのだ。


 早川ちゃんは手で口を押えて、オレの後ろに隠れる。


 女の子にこの映像は見られるものではないだろう……。


「なるほど……。やっぱりそういうことでしたか、雪宮先生……」


「『やっぱり』とは何? ちーちゃん」


「保健室で貧血になる男子が多くいたことですよ。


 保健室に用もないのに男子が訪れて、逆に体調を崩す……。


 まあ、体調崩したのは、雪宮先生によって血を抜かれたから。


 また時期を考えると男子たちが用もなく訪れたのは、先生が転勤してきてから数か月前までのこと。


 数か月前に何があったかというと、れいか先輩が学校に来なくなったといことですね。


 つまり、先生はれいか先輩を餌に保健室に男子を集める。そして、彼らの血を吸っていた……。


 ここまでは想像できました。


 しかし、僕が知りたいのはその先です。


 なぜ血を吸う必要がるのか?


 あなたは吸血鬼といった類のものではない。


 いわゆる怪異ではないはずです。


 なのに、なぜ人の血を吸うのか……?


 さらに気になるのは、なぜこの学校に転勤してきたのかです。


 れいか先輩が目的か? この廃校が目的か? はたまた……僕が目的か……?」


 それを聞くと雪宮先生は小さく笑い、それが段々と高笑いに変わっていった。


「相変わらず頭の回転早いね、ちーちゃんは」


「相変わらず?


 あなたとどこかで会いましたっけ?」


 ちーちゃんが首を傾げているのがオレは面白くてしょうがなかった。


 人間は視覚でほとんどのものを知覚しているから分からないのだろうね~。


「な~んだ。雪宮先生ってあんただったのか?」


「上木原さん?」


「ちーちゃん、彼女のことは君が一番知っているよ。


 いい加減、本当の姿を見せたらどうだい?」


 オレの言葉を聞くなり、雪宮先生は腕時計型端末をポケットから取り出し、操作を始めた。


 まるでピアノの演奏のように、タッチ音が空中の指の動きに合わせて、音楽を奏でていた。


 それが止むと、雪宮先生の周りが光で包まれ、解けていった。


 服装、髪型、顔といった見た目すべてが変わり、その姿は前の姿と比べるとまさに別人であった。


 長髪で隠れた顔から、にやけた口元が見えると、彼女は髪を後ろにめくった。


「あ、あなたは……」


 小雨が降り出した。


 風も心なしか強くなり、肌寒く感じてきた。


「お久しぶり、ちーちゃん」


 ちーちゃんは歯を食いしばり、彼女を鋭い眼差しで捉えた。



「久しぶり……お姉ちゃん……」


 




 












 


 


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