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第四話 虚言⑦

 もう十年前のことだ。


 ぼくはこの町に作られていた研究所で働いていた。


 そこは国によって秘密裏ひみつりにされているところで、人間の心を研究していた。


 ぼくは子供のころから人間の心に関心があって、大学生のときは人の心を作ることが用来の夢になっていた。だから、その研究所に入ることができたときは嬉しかったよ。


 でも、そんなのは杞憂に終わった。


 その研究所では、人工的に作った人間をモルモットに、廃校になった高校を実験場にして、モルモットを観察したんだ。

 

 まずモルモットを先生役と生徒役に分けて学園生活を送らせる。


 そして、モルモットにはこの学校の学生であり、劣悪な家庭環境にいたという過去の記憶を植え付けて劣等感を抱かせる。


 そして、学園生活に起こる出来事、恋愛や上下関係、いじめを記録して、どの類の経験がどの性格に繋がるかという方程式を導き出そうとしていた。


本当にくだらないままごとだったよ。しかも、国を挙げて実験していたんだから本当にお笑い沙汰だ。


 その実験はどうなったかって?


 失敗に終わったよ。正確には中断になったんだ。


 研究に貴重に扱われていた最高級のモルモットが研究室を破壊し、研究者も全員殺されたからね。


 数年後には、それを計画した政府関係者も暗殺された。


 そのことはニュースになったからお前も知っているかもしれないな。


 きっとそれもあのモルモットがったんだろう。


 そのモルモットがどうなったのか?


 知らないな。まあ、定期的なメンテナンスで正常な状態を保たれていたからな。


 あの研究所以外でそんなことできるところはないから、劣化の一途を辿っているだろうな。


 もしかしたら、どこかでのたれ死んでいるかもしれないな。


 まあ、ぼくは下っ端の方だったから本物を見たことはない。


 この研究所のやり方に疑問を持っていて、それを打ち明けたら、研究員の資格をはく奪されて研究所から追い出された。しかもご丁寧にこの研究所にいた記録すら消されていたからな。


 そのおかげでぼくは命を狙われないで済んだんだから、結果的には良かったんだけどね。


 それに、あいつらが死んだことを知って、心が震えたよ。ぼくを軽蔑した罰だってね。


 研究所を追い出されてからホームレスになってしまったぼくだけど、そのあとも心について研究したいと思った。


 そこで知ったのが怪異の存在だ。


 この上木原町で起こる様々な怪異現象が人の負の感情を発生源としていると知ったとき、ぼくの頭の中でグッドアイデアが思い浮かんだんだ。


 怪異は人の心を映す鏡だ。その心そのものと言ってもいい。


 すなわち、その怪異に触れるということはその人の心に触れるということなのではないかと気づいたのだ。


 そこで怪異を人の心を知るための研究材料にしようと思い立った。


 調べてみると、この上木原町は他よりも断然に怪異事件の数が多いことが分かった。


 なら、この町で人のコンプレックスをくすぐるものを提供すれば怪異が発生してそれらを観察できるのではないかと思い立ったんだ。


 そこの早川くんに出会ったのもそのころだ。


 彼女も元々研究所のモルモットだったんだ。


 と言っても、この子は補欠で一度も使われていないけどね。


 この子を含め、補欠のモルモットは地下深くに保存されていて、奇跡的に難を逃れていたんだ。


 その中でこの子は成績優秀に設定されていた。


 さらに、病的なほどいい子にも設定されていたから、簡単に騙して数々の製品を作らせたよ。


 そして、この町で一番大きい家杉工業が彼女の考えるツールの発想を高く買ってくれてお金を提供してくれたんだ。


 あそこの社長はビジネスバカだからね。そのおかげで計画が上手く進んで助かったよ。


 しかも、この学校にこの子のことを教えてくれて、関心を持たせてくれたんだ。


 願ったり叶ったりで、計画は順調に進んでいるように見えた。


 しかし、そうではなかった。


 怪異事件は何件も起きたが十分な観測ができないうちに解決されてしまった。


 本当にどこの誰がやってるのだか……。


 だから、まだこの計画を続けなくてはいけないんだよ。


 お前みたいなちゃらんぽらんな男に口外されて頓挫されては困るんだ。

 

 だから……。


▷▷▷▷


「だから……」と男が言った瞬間、オレの後頭部に激痛が走る。


 オレは火薬のにおいと騒音から察するに銃撃されたのだろう。


 これでこの世ともおさらばか……。


 上木原町の名前が日本中に知れ渡って、いずれ日本の首都になる夢は頓挫したわけだ……。


 チクショー、オレはまだまだ生きたかったのに……。


 


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