第四話 虚言③
あー、いい湯だった~。
やっぱり我が家の湯は最高だ!
四万十川の天然水を運んできて、沸かしてるからね~。
バスタオルで頭を拭きながら、渡り廊下を歩く。
庭を見ると、松は姿を保っているが、何本の木が枯れ木と化していた。
風呂上りの浴衣姿であるから、風がより冷たく感じる。
もうそんな季節か。
月日が過ぎていくのは本当に早い。
オレの感覚では一分前まで夏だったのになぁ。
タオルを首に巻くと、目の前にちーちゃんが渡り廊下に腰かけていた。
だいたいちーちゃんがここにいるときは考えごとをしているときなんだよね。
今年は特に事件が多かった。
エリちゃんの事件を発端として、さとし君やれいかちゃんなど多種多様な事件が起こった。
これらに共通しているのは「あるサイト」が関係しているということだね。
どうやらちーちゃんは、誰かがそのサイトを使ってこの町で怪異事件を誘導していると考えているらしい。
しかし、その犯人を特定する証拠はまだ見つかってない。
だから、ちーちゃんは毎日のようにこの渡り廊下にいるんだよね~。
証拠となるものがなかったか、記憶を整理するために。
「や~、ちーちゃんごきげんよう!」
オレが話しかけると、ちーちゃんはどこかに行っていた意識を自身の身体に取り戻した。
「あー、上木原さんですか。驚かせないでください……」
オレの顔を見ながらホッとするちーちゃん。
いつもクールだからそういうお茶目なところを見ることができて、つい喜んでしまう。
「今日も考え事してるんだね。また、サイトについて?」
「まあ、それもそうですけど、もう一つ気がかりな事件がありまして……」
もう一つの事件……?
オレは興味津々にその事件が何か聞き出す。
すると、ちーちゃんは、また、庭の方に遠い目をする。
「最近、うちの学校の保健室に出入りをしている生徒が貧血になったり、体調不良になったり、気力がなくなったりしているんですよ」
「うちの高校の保健室」ということは、上木原町で事件が起こったということか……。
それは許せない!
だが、それが事件であるのかどうか疑う箇所があった。
「保健室に出入りする人間なんて、だいたい体力面か精神面で弱い人だから、当たり前なんじゃないの?」
「弱いから保健室に行って、回復するなら分かります。でも、彼らは強かったのに保健室に行ったら、弱くなったんですよ……。これはおかしくありませんか?」
それって保健室として機能してないんじゃないか?
だから、ちーちゃんは事件としてみなしているということか。
「それに保健室の先生である雪宮先生は今年から赴任した。この怪異事件が多発した時期と一致する。それにれいかさんの事件の真相も彼女は知っていた……。明らかに怪しい……」
「じゃあ、ちーちゃんはその保健室の先生がこの事件の黒幕と思ってるってこと?」
「一番疑わしい人ではありますが、まだ矛盾点があるんです。
れいかさんがサイトを利用したのが約二年前。
そのとき雪宮先生はこの町にいなかった……。
だから、もしかしたらこのサイトと雪宮先生は関係ないのかもしれない……」
「ごめん、ちーちゃん……。オレ、頭がパンクしそうになってる……」
オレが頭を抱えるジェスチャーをすると、「ハハハ」とちーちゃんは高からかに笑った。
本当にちーちゃんは可愛い顔してるよね~。
「まあ、分かりやすく言うと、この事件の真相は雪宮先生が持ってるってことですよ……。
とりあえず、明日、彼女に会ってみます」
そう言うとちーちゃんは立ち上がり、オレを背にして歩き出した。
その背中を見て、オレはちーちゃんと初めて会ったときを思い出した。
あの神社の石段にしくしく泣いていた子どもの背中がこんなに大きくなっちゃって~。
そんな老婆心で彼の背中を見届けながら、オレは自室に向かった。
今日はもう寝よう。




