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第三話 仮面②

 道端に紅葉が落ちて、美しいレッドカーペットを作り出す。


 もう秋も中頃で、残暑を懐かしむ時期になった。


 スポーツ、食事、読書と、様々なものを楽しむことができるから、あたしはこの季節が好きだ。


 明るく照らされる雰囲気に、このまま浸っていたい。


しかし、あたしが校門を通り抜けると、その空気が変わってしまう。


 凍てつくわけではないが、そこには確かな緊張が走るのだった。


 生徒たちが歩を止め、あたしの行く道を空ける。


 男子からはいやらしい視線を、女子からは憧れの視線をうるさいほど放たれる。


 視線が強すぎてあたしの体に穴が開くような錯覚に陥る。


 今まで、どうしてあたしを避けるのか気になっていた。


 そして、知ったのが、あたしの前に立ちはばかることは暗黙の了解で禁止されているらしいということだった。


 そんなことを頼んだことがないのに、実際にあたしが廊下を通るときも、廊下を歩いていた人たちが端に寄って、廊下の真ん中を空けるのだ。


 あるとき、あたしに気づかず、廊下の真ん中を歩いている男性の先輩がいた。


 そのことにあたしはまったく気にしていなかった。


後日、聞いた話によると、彼は次の日から学校に来なくなったらしい……。


これが自分のせいではないと、あたしは祈るばかりだ。


 なぜに皆があたしを崇拝したいのか意味が分からない。


 あたしは高校の中ではでは気丈に振る舞っているが、二年前、つまり中学生だった頃は、友達とスイーツを食べたり、衣服を買ったり、カラオケで歌ったりしていた。


 普通の女の子だったのだ。


 それが高校に上がると同時に周りの皆から尊敬の眼差しで見られるようになり、友達が一人もいなくなった。


 あたしが女子を遊びに誘うと「レイカさんと一緒に遊ぶなんて恐れ多い」と言われてしまうのだ。


 彼女らに悪気はないかもしれないが、俯瞰的に見れば、これは「ハブいている」と言うのではないだろうか?


 男子に関しては、小学校、中学校ともに女子校だったせいもあって話かけられないから、あたしのせいも十二分にある。


 あたしがただの女の子であることを分かって欲しい。


 でも、それを知ったら、彼女ら、彼らは失望するのではないだろうか?


 失望して、あたしのことを見放してしまうのではないか?


 そう考えると、この現状のままでもいいかもしれないという結論に至ってしまう。


 結局、あたしは臆病なのだ……。

 

 気がつくと、周りの生徒たちが騒ぎ始めた。


 大声で話しているのではなく、小さな会話が折り重なっているから、大きくあたしの鼓膜を揺らしているだけだ。


 一体どうしたのだろう?


 もしかしたら、考えに耽っている間に、いつもの気丈な振る舞いを演じることができなかったのかもしれない。


 そんな心配をしたが、無意味であった。


 というのも、彼女ら彼らは、あたしを見ていなかったからだ。


 見ていたのは、あたしの前方だったのだ。


 視覚に入ったのは、一人の男の子だった。


 身長は大きいとは言えず、顔立ちは綺麗とは言えず、細い体型は健康的とは言えなかった。


 その彼が、あたしの前を、あたしのために空いた道を堂々と通っている。


 また、きっと前しか向いてないから、後ろにいるあたしに気づいてない生徒だろう。


 そう思ったあたしは、歩くスピードを少し速めて、彼の隣に並んで歩いた。


 そして、彼の顔を見て、あたしは微笑んだ。


 微笑んだのは、今の行動が危ないものだと気づいてくれると思った。


 というより、男子に声をかけられないあたしにとって、笑顔は精一杯の伝達手段であった。


 彼はあたしに気づく。


 歩くのを止めて、じっとあたしの顔を見る。


気づいてくれたかな?


 そう期待していると、彼は口を開いた。


「あの……、どちら様ですか……?」




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