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第二話 醜悪①

 朝起きても、それは治ることがなかった。


 洗面台の前で顔を痛くなるほど洗っても、治らない。


 顔を上げれば鏡に俺の顔が映る。小さい頃から、引きずっている病のようなもの。いや、病よりも厄介だ。


 人から嫌われ、罵られ、蔑まされた原因。


 両親から授かってしまった俺の醜い醜い顔。


 細い目。小さい鼻。薄い唇。


 もはや、それはないのと等しいほど、顔のパーツ一つ一つが薄いのだ。


 そのせいでそばかすやニキビが目立ってしまう。


 とあるクラスメイトが俺の顔を見て、それを「汚物」と評した。


 俺だって見たくもない。


 なのに、鏡やガラス、電車の窓など俺の顔を反射するものには、つい目を追ってしまう。


 その度に、傷ついては、視線を下げる。その繰り返しだ。


 こうして洗顔後の歯磨きのときでさえも、蛇口を見つめるが、鏡をちらちらと確認してしまう。


 整形手術でもして治したいが、治すお金がない。


 国の財政が苦しくなり、医療費が増したのは記憶に新しい。


 それは整形に関しても同じだった。


 部分的な整形手術なら、俺のバイト代でどうにかなるだろう。


 しかし、俺は部分的では我慢ならない。


 俺の顔すべてを変えたいのだ。


 前は両親からもらった顔を変えようと思ていることに罪悪感があった。「親」という存在が特別で絶対的で崇敬すうけいすべき存在だと騙されていた。


 だが、そんな固定観念は中学に上がったと同時に消え去り、憎むべき存在の面影が混ざり合った自分の顔面をさらに忌み嫌うようになった。


 そして、彼らから逃げるように地元の田舎から離れ、都会で一人暮らしすることとなった。


 それくらい両親を恨んでいるのだ。


 整形したい理由はそれだけではない。何よりもクラスメイトに笑いものにされたことがもう耐えられなかったのだ。


 それに、多感な時期に「生理的に無理」と身もふたもないことで、切り捨てられたことも、俺が変化を望む原因だ。


 今までは周りの人間にバカにされる毎日だった。 


 同級生がいない高校に来たものの、結局、状況は何も変わらなかった。


 でも、今日からは違うと信じたい。俺の顔は変わらないけど、俺の生活は変わると信じたい。


 そう思ってから、何日、何週、何年たっただろう……。


 そうやって現実に受動的な姿勢を構えるしか俺にはできなかった。


 俺は長く伸ばした前髪で顔を覆い隠し学校へ向かった。


 


 


 

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