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コルネリウスの至極面白味のない調理

このあたりが限界糖度のようです。(吐血)

料理回ですがぐろはありませんので注意は必要ありませんきりっ。

 俺がフロレンツィアのサロンで一緒に昼食をとるようになって数日。初日こそ俺とフロレンツィアの二人きりだったが、次の日からはフロレンツィアと特に仲のいい友人が何人か来ている。

 そんなある日、フロレンツィアが、お弁当を持ってきてくれなかった。

「……」

「……えっと……」

 無言でフロレンツィアが俺を睨み付けている。

「すみません。あの、俺、なにか、してしまいましたか?」

 多分、怒ってるんだよね? 全然、心当たりないんだけどどうしよう。本当に、どうしよう……。

「……嘘つき」

 と、突然フロレンツィアが普段より低い声で呟く。

 うぇっ!? あ、あれ!? なに言った? 過去の俺なに言った?

「う、あ、あの、すみません。心当たりがないので教えてもらえませんか?」

 その瞬間、フロレンツィアの目にじわりと涙が浮かぶ。うわ、わ、ど、どうしたら……?

「ううわたくしの料理が! 不味いなら不味いと! 言えば良かったではありませんか!」

 そう言いながら、拳を握った両手で俺を小さく連続で叩いてくる。近い、違う、かわいい、違う、いや、違わないけど!

「俺、貴女の料理を不味いと思ったことなんて一度もないですよ」

 フロレンツィアの叩く手が止まる。

「う、嘘ですわ!」

「本当です」

「だって、き、昨日、グレーテルに、い、言われて、今日の朝、作った物を食べてみたのです。そ、そしたら……!」

 グレーテル嬢、確かフロレンツィアと一番仲のいい友人だったはず。

 って、今まで食べたこと、なかったんだね。まあ、そっか。

「あのですね、フロレンツィア嬢。例え、貴女が美味しくないと思っても、俺にとっては世界で一番美味しいんです。だって、フロレンツィア嬢が俺のためだけに作ってくれた物ですから」

「ほ、本当、ですの?」

 不安げに見上げてくるフロレンツィア。

「もちろんです!」

 全力で肯定する。

「でしたら、証明してくださいませ」

「証明、ですか?」

「コルネリウス、わたくしのために、なにか作ってきなさい!」



△ ▲



 休日である翌日、男子寮のとある一室、そのキッチンにて。

「なに作るんですか、コルネリウスさま?」

 鳶色の瞳をきらきらさせ、傍らに立つ主人を見上げながら尋ねるのは、十歳ぐらいの執事服を着た赤毛の少年。

「チョコレートを使ったケーキだよ。図書館で見つけたんだ」

 そう答えたのは、金髪碧眼の好青年。丁寧に調理台の上の材料を検分している。

 小麦粉、卵、バター、牛乳、砂糖、ココアパウダー、チョコレート、ラム酒、そして杏ジャム。

「どんなケーキなんですか?」

 執事姿の少年が尋ねると、彼の主人は手元の紙を確認する。

「うーん、ココアを使ったケーキスポンジに、杏ジャムを塗り、それをさらにチョコレートでコーティングする、みたいだね」

「むずかしそうです……」

 少年が表情を曇らせる。その頭に、青年が手を乗せる。

「大丈夫だ。お菓子はちゃんとレシピ通りに作ればまず失敗しないよ。素人の余計な一工夫とかがなければ、そうそう変なものはできないさ」

「はい!」

 すぐさま元気を取り戻す少年。それを見て青年は口の端を笑みのかたちに歪ませる。

「だけど、今回はできる限り完璧なものを作る必要がある。嫌と言うほど、味見させてやるからなー」

「食べていいんですか? やったー!」

 こうして、至極真っ当にお菓子作りが開始されたのだった。そして、最終的に納得できる形で仕上がったのは三個目であった。



△ ▲



 というわけで休日明けの日、出来上がったケーキを手に、フロレンツィアのサロンを訪れる。ケーキは丁寧に切り分けて、箱の中に入れてある。

 いつもの席で、フロレンツィアと並んで座り、箱を渡す。

「ええっと、先日頼まれた通り、フロレンツィア嬢のためにケーキを作ってみました」

「ケーキですの? 楽しみですわね」

 そう言ってにっこり笑うと、フロレンツィアは箱を開けた。うう、緊張する。気に入ってくれるといいけど……。

 フロレンツィアが箱を開けてなかを見る。一瞬だけ表情を輝かせて、なんだか不満げな表情になる。

 う、チョコレートだめだっただろうか?

「コルネリウス、これ、本当に貴方が?」

 ああ、疑われてただけなんですね?

「ええ、もちろんです。じ、自信作です!」

 そして、フロレンツィアがケーキを箱から出して白いさらに乗せる。ワンホールを六分の一にカットしたチョコレートケーキ。滑らかなチョコレートのコーティングの上には、後で調達してきたフルーツの砂糖漬けを飾ってある。

 見映えのよさだけじゃない、味だって、本職の人には敵わないけど、かなり自信がある。

 フロレンツィアが、食べてくれるのを待っていると、彼女がフォークの柄を差し出してきた。ま、まさか……!

「……」

 無言で見つめてくるフロレンツィア。わ、分かりましたよ!

 俺はフロレンツィアからフォークを受けとると、ケーキを一口サイズに切り取り、フォークを刺す。それをフロレンツィアの口許に、く、口許に、持っていく!

「えっと、あの……」

 彼女がしてくれたように、その、『あーん』と言うべきか迷っていると、フロレンツィアがフォークをくわえてしまった。一瞬だけ目が合う。彼女はその事に気がつくと、ケーキの欠片をフォークからさらって、顔を背けた。

「美味しいですわね、普通に」

 彼女の声で、俺は自分がフォークを差し出したまま硬直していたことに気づいた。気を取り直して、フロレンツィアを改めてみると、なぜか彼女は仏頂面である。

「え、あ? お、美味しかったなら、良かったんですけど……」

 な、何か不満がある? う、やっぱりチョコレートがだめだった? 何でそんなに。

「あの、なにか不満なことが? 言ってくれれば……」

 そう言っている間に、フロレンツィアはケーキを箱に戻してしまった。そして、その箱をなんだか大事そうに抱え、えっと?

「コルネリウスの、ばかあ!」

「フロレンツィア嬢!?」

 それだけ言うと、サロンから走って出て行ってしまった……。ええ……? どうすれば……?

 と、とりあえず、後で別のお菓子を作って謝りに行こう。うん。


お読みいただきありがとうございます。


なお、逆効果。


ちなみにザッハトルテのつもりなんですが、ザッハーさんがいないので、ああいう言い方になってます。

図書館の力ってすげー!


次は本編相当を進めます。

今しばらくお待ちを。

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