宣戦布告
遅くなってしまいすみません。
あと、今さらですが、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
メルガルト王国立魔法学院冬期懇親会。
試験お疲れ様って意味と、学生同士の学年を越えた交流が目的のパーティである。
そんなパーティーもすでに始まっている。まあ、何となく入場順というものがあって、身分の高い人々は遅く入るというのが、慣わしだ。
俺も、それから俺がエスコートさせてもらっているフロレンツィアは、相当身分が高いのでかなり入場は遅い。
そんなわけで、俺たちはしばらく控え室で待機していたのだが、先ほど入場に丁度良い頃合いになったと、使用人が連絡に来た。
「行きましょう、フロレンツィア嬢、いえ、フロレンツィア」
フロレンツィアに手を差し出す。
「ええ、コルネリウス」
彼女は、微笑み、その手を俺の手に重ねる。
「わたくし、すごく、楽しみだわ」
そう言うと、フロレンツィアは大輪の花のように笑った。
△ ▲
フロレンツィアの手を引いて、懇親会の会場の扉をくぐる。少しの静寂の後、すでに会場入りしていた参加者たちがざわざわしだす。
「あれが、殿下に婚約破棄された…?」
とか的はずれなことを言ってる人もいれば。
「エスコートしているのは、フロレンツィア嬢の新しい婚約者か? ……誰だ?」
なんて言ってる人もいる。まだ、今は、まだ、婚約者じゃないんだけどね。ふふっ。
「ねえ、コルネリウス」
フロレンツィアが、ちょっと楽しそうな顔で話しかけてくる。
「ねえ、貴方踊れますの?」
「も、もちろんです!」
いや、公式の場で踊ったことは一回もないんだけど。実家で妹に練習相手として引っ張り回されてたから、多分なんとか……。なんとかなってくれ!
「じゃあ、行きましょう!」
そう言うなり、フロレンツィアが俺の手を引っ張って会場の中央に躍り出る。丁度、音楽が変わる。
何人もの視線を浴びながら、俺とフロレンツィアが踊り始める。
「……意外とお上手ですのね」
と、ちょっとだけ頬を膨らませるフロレンツィア。
「にっ!?」
次の瞬間、思いっきりフロレンツィアに足を踏まれてしまった。見ると、彼女はにっといたずらげに笑っている。わ、わざとですよね?
「だったら、俺にも考えが、ありますよ?」
フロレンツィアが身構える前に、繋いでいる手をフロレンツィアごと思いっきり振り回す。バランスを崩した彼女を、横向きに抱き抱える。
「な、な、なんですの!?」
俺の腕の中で、慌てるフロレンツィア。
「俺、今幸せです」
「……わたくしも」
と、そんな、時だ。王太子ハルトムートと馬の骨のゾフィさん、そしてその取り巻きの皆さんがぞろぞろと入場してきた。
△ ▲
「や、ハルトムート。久しぶり」
と、目の前の男に軽く挨拶をしてみる。
「どういうつもりだ! コルネリウス!」
目の前の男、王太子ハルトムートが不機嫌を隠さず詰め寄ってくる。
俺の斜め後ろにはフロレンツィアがいる。ハルトムートの横には、馬の骨のゾフィさん。
「何のこと?」
穏やかな表情を心がけて、ハルトムートを見下ろす。
似ているようで似ていない、俺より少し背の低い、王家の色、白を身に纏う従兄。
その従兄の表情が、不機嫌を通り越して怒りに変わる。
「どうして……どうしてフロレンツィアが、貴様と一緒にいる!?」
「あ、えっと……」
だってそれは、フロレンツィアがさ、あの、俺が良いってね、言うからさ。
フロレンツィアを振り返る。目が合うと、フロレンツィアは俺の腕を抱き締めるように掴んだ。
「き、決まっていますわ! わたくし達は、その、あ、い、あの、あれなのですわ!」
顔を赤くし、空いている手をわたわたさせるフロレンツィア。
「フロ……レンツィア……?」
それはハルトムートの見たことのないフロレンツィア。
「まあ、ハルトムートには関係のないことだよね? だって、フロレンツィアは、もう、君の婚約者でも何でもない」
ふふ、あえて言うなら、俺の、その、未来のね、婚約者、かな。ふふふ。
「貴様ッ!?」
ハルトムートが掴みかかろうと伸ばした手を、途中で掴み止める。
「ねえ、ハルトムート。俺、決めた事があるんだ」
真正面からハルトムートを見る。
「突然、何だ」
「もう、手は抜かない。この手が届くものは全部手にいれる」
一番欲しかったものは手にいれた。だから、その先が全部、全部欲しい。フロレンツィアのために!
「で、出来るものか! 私は、王太子は私だぞ!」
俺の手を振り払い、そう言い捨てて、ハルトムートは足早に、そう、逃げていった。
その後を慌てて追う取り巻きの皆さん。ゾフィさんだけが一度振り向き、一瞬だけ俺を見て、ハルトムートの名を呼びながら、走っていった。
「うふふ、うふふふふふ!」
横から楽しそうな笑い声。見なくてもわかる、フロレンツィアだ。
彼女の方を見れば、彼女はちょっと悪い笑顔で俺を見上げていた。
「今のご覧になりました? これからも、もっと見られるのかしら?」
「フロレンツィア、貴女が望む限りはもちろん」
それから俺たちは、顔を向き合わせて笑った。くすくすって。
お読みいただきありがとうございます。
次回は未定です。
次で締めるか、もうちょっと掘り下げるか……。




