プラリネ
カランカラン
喫茶店のドアを開ける。
マスターはこちらを少し確認するとまたカップを磨く手を動かし始めた。
僕が座るのは入り口にほど近いカウンター席。
椅子に座るとスッと出てくるいつものコーヒー。
流れている音楽はどこの国のものかはわからないが心地よい楽器の音色が聞こえてくる。
一口コーヒーを飲む。
チラリと視線を動かすと窓際のいつもの席。今日も君は座っていた。
白いワンピースに白いパンプス。
ブックカバーのかかった小説を読みながら今日も君は座っていた。
雨の日も晴れの日もいつも君がいるのは窓際のいつもの席。
小説のお供には紅茶とプラリネ。
キリがいいところまで小説を読み終わったのか君はようやく紅茶とプラリネを食べ始めて
紅茶はもうとっくに冷めてしまっていて「あぁ、やってしまった」とまた今日も君は顔をしかめた。
マスターが近寄り「新しいものとお取り換えしましょうか?」と聞く。
「このままでも美味しいわ」と答える。
「冷めてしまってもプラリネには合うもの。」
そう言った君は少しだけ悲しげに笑った。
プラリネを一口、口に運ぶ。
幸せそうに頬を緩ませる君はなんて可愛らしく素敵なんだ。
あぁ、出来ることならその冷めてしまった紅茶と共に君のもとへ幸せを運ぶプラリネになれたらいいのになんて
そんなことを考えながら今日もゆっくりと時間は流れていった。