不安
僕は朔羅さんの家へ向かった。朔羅さんの家に行く途中「ここで死ぬと思ってきたから部屋の中何もないのよね。だから、水くらいしか出せないのよね・・・」と言われた。僕は、それでもいいと言うと「そう?」と花のような笑顔でこっちを見た。僕は少し恥ずかしくなって赤くなった。朔羅さんは僕を見てまだまだ可愛いわねと僕の頭を撫でた。久しぶりに頭を撫でられた僕はドキドキした。なんか悔しくなって僕は、
「朔羅さん、少し失礼します。」
「え?」
朔羅さんは驚いた顔をして僕を見た。どうしてかと言うと、僕が彼女の頭を撫で返したからだ。朔羅さんと僕は顔を合わせて笑いあった。
「あ、えと、」
「嶺斗、はいろっか?」
「あ、はい」
朔羅さんに促されて入ると、部屋の中には何もなかった。何もないというかあったのは小さな机と小さなライト。月が出ていないと見えないくらいの暗さだった。僕は窓際に座った。朔羅さんは小さな机を膝で押しながら海色のコップに水を入れてきてくれた。僕はコップを受け取ると一気に飲み干した。いつの間にか喉が渇いていたのか。それとも、朔羅さんが持ってきてくれたからなのか。僕は今まで感じたことのない感覚に襲われた。胸が苦しくなった。この女ひとはこの部屋でどんな暮らしをしていたのだろう。どんな感情で自殺をしようと思ったのか。それを知りたくなった。朔羅さんのすべてを知りたかった。でも僕はほんの少し前に会った自殺少年だ。聞いても、、無駄なのだろうか?この、話が、この部屋から出た瞬間にこの女ひとともう会うことはないのだろうか。そんな気持ちになった。朔羅さんは僕のことを心配そうに見る。
「どうかしたの」
朔羅さんは優しい声で僕に聞いた。僕は、「大丈夫」と答えると
「お互いの話はあとででも聞けるわ。少し眠ったら?」
「え、、、」
「ここ、おいで」
朔羅さんは、僕に向かって手招きをした。僕が行くと朔羅さんは朔羅さんの膝をぽんぽんと叩いた。僕はすぐには理解できずに「なんですかその手」と言ってしまった。「何って、膝枕よ。膝枕!」朔羅さんは知らないの?と言う顔で僕を見た。僕は、その言葉を聞いて、「ああ」とうなずいた。朔羅さんは「おいで、おいで」とニコニコしながら僕に手招きをした。僕は戸惑いながらも朔羅さんの膝の所に来た。「早くおいでよ。」僕は、ゆっくり顔を朔羅さんの膝に置いた。朔羅さんの膝は思いのほか柔らかかった。ほんのりとシャンプーのにおい、、、、シャンプーのにおい。
「ささささ朔羅さん!?」
「何驚いてるの?」
「い、いや。その、何で顔を近づけているんですか?」
僕は動揺のあまり朔羅さんに頭突きをしてしまった。
「あいたたた」
「うわわわわわわわわ、すみません」
「大丈夫、大丈夫」
「ほんとに?」
「大丈夫よぉ。体は強いんだから!」
朔羅さんは笑いながら僕を見た。
「僕の顔に何かついてますか?」
「うーん」
「え!?」
「なーんにもついてないわっ!」
「え・・・もう、驚かせないでください!朔羅さん」
「ごめんごめん、面白くって」
「そんなこと言わないでください。もう、眠気どっかに行きましたよ!」
「そう?」
「はい。」
朔羅さんが僕を驚かせるようなことをしたから、眠気がどこかに行ってしまった。
「朔羅さん!」
「え!?私また何かやらかしたかしら?」
「違います」
「?」
「いつ・・・・」
「いつ?」
「いつ、話を聞かせてくれるんですか?」
「あー、えっとね」
段々、僕は不安になってきた。朔羅さんは自分のことを話したくないのか。それとも、話せないのか。まだ、僕は経験も少ない。人の考えをくみ取るのも、下手だ。だから、分らない。
朔羅さん・・・・僕じゃ頼りないですか?