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006 異境の空は果てしなく

いよいよ異世界へ。

 昼飯は豚肉のショウガ焼きに卵焼き、味噌汁、ご飯、大根の漬け物だった。特に頑張った風でもなく飾らない、婆ちゃんのいつも通りの感じ。

 でも上手いんだこれが。ショウガ焼きは蜂蜜を利用して豚肉を軟らかく仕込み、卵焼きは鰹だしが効いたふんわりとした一品。味噌汁は油揚とキャベツが具だ。

 しばらくこれらが食えなくなると思うと、ちょっとしみじみとした気持ちになった。


ずずずずぅ


 ブリニャンがご飯イン味噌汁、いわゆる、ネコまんま汁だくを上手そうに啜っている。普通のネコと違って猫舌ではないようだ。


 しみじみとした気分が台無しだよ、畜生!という気持ちと。

 ちょっと助かった、ありがとうという気持ち。で、食事中のブリニャンの背中を撫でる。


・・・・・・金属表皮で冷たくてつまらん・・・・・・


 食事を終えてお茶を飲んだ後はもう、最終確認をして出発するだけとなった。


 俺はナップザックに替えのパンツとTシャツ、ソックスを2組ずつ、ハーフパンツ、ビニールに入れたサンダル、タオル、ティッシュ、水色ローブ、ペンとメモ帳、爪切りと歯ブラシ、デジカメ、750mmlの水筒これらを入れて、カーキ色のカーゴパンツにソックス、スニーカー、麻のパーカーと言った出で立ちだ。

 ウエストポーチにカードセットと未開封のブースターパックが一つ、開封済みの白地カードが5枚。ライフカウンターはカーゴパンツの右ポケットに入れてある。


 魔力カードの状況はこんな感じ。

 俺が持っているのが、闇が2枚、水火風が1枚。

 ミリアが持っているのが、光が2枚、闇が2枚、水火風が1枚。


 ワールド・ウォーカーの魔法カードと、闇水火を1枚ずつ、ミリアに渡す。

 この内容については色々話し合って決めた物だ。一方、ミリアからは風の魔力カードが1枚。これで、俺が異世界で即座に使える魔力カードは闇1枚と風2枚。風2枚は飛翔の魔法カードとセットにして用意しておく。

 ミリアは、光2枚、闇2枚、闇水火火1枚ずつでワールド・ウォーカーをこれから使用し、残りは水1枚のみ。


 これで準備完了である。

 勝手口から外に出た俺とミリア、ブリニャンは、そこで爺さんと婆ちゃんにお別れを告げて旅立つことにした。


「真悟、楽しんできたらええ。ただし、リクシアは必ず採るんじゃぞ」

「気を付けてね」

 爺さんと婆ちゃんに俺は頷いた。


「それじゃ、行ってくる!」

「ありがとうございました!また来ますね!」

「ゴチソウサマデシタ」

 声色だけはさわやかだな、オイ。


 俺達が挨拶を済ませると、ブリニャンが俺の肩によじ登ってくる。オイこら麻のパーカーに爪立てるな馬鹿止めろ言えばだっこするっちゅうに!


 早速ミリアがワールド・ウォーカーを使用した。魔法カードを見ながら視線が上下している。もしかして、カード上で転移先の逆指定とかをしてるのだろうか。

 そう思っていると、俺の視界が白く霞が掛かるようになり、どんどん白色が濃くなってくる。おおっ!これが異世界転移か!


 次の瞬間。


 寒い。風が強い。でも日差しが熱い。って言うか・・・・・・




 落ちてるぅぅうううううううう!!!!!





 俺達は、どこか異境の大空に放り出されたのだった。


 爺さんのアドバイスが役に立ったのか、それともあれがフラグだったのだろうか。俺はパーカーの内ポケットに仕込んだ飛翔のカードを発動し、滑空してまずはミリアをキャッチする。おおう、いわゆる、お姫様抱っこ状態だ!

 続いて、ブリニャンを回収。お姫様抱っこ状態のミリアの上にぽてっと落ちたところをミリアが抱きかかえる。


 この時点でやっと、俺は、景色を眺める余裕が出来た。

 天気は快晴。青空で雲はほとんど無い。雲が無くて蜘蛛が居たら・・・・・・居るわけないよね。変なフレーバー・テキストの影響のせいだ。それはともかく。


 下界はひたすら緑の連なる大森林って感じだ。ずっと遠方に山脈と行っていいくらいの山々が見える。どこか水場の近くで開けた場所があればいいんだが・・・・・・それらしいものが見つからない。

 特に目標地点が見つからないとなると、魔法効果の切れる前に急いで着陸しないと行けない。


 俺がそう思って降下を始めると、ミリアが何か言って指を指した。風がうるさくて聞こえないが、その指の指し示す先を見ると―



 大空を、背中にマストと帆を背負った、馬鹿でかいネコの“ぬいぐるみ”が飛んでいた。



 次元航行船ヌイグルミ号―大型の帆船で船首像フィギュアヘッドどころか、船の正面がぬいぐるみの猫の頭である。船体はグノシアに棲息する魔獣から剥ぎ取った毛皮でモフモフ感を形成し、船体の下の方にはちゃんと小さな、ぬいぐるみの四つ足があるらしい。

 動力源は船体に組み込まれた浮遊石と風力、そして魔力エンジンというジェットエンジンの魔力版?なものがあるらしく、浮力と推力が魔法頼みのため、空気抵抗とか流水抵抗とか無視したデザインが可能なんだそうな。


 そんな船に拾われた俺達は、船長室で説明を受けていた。

 目の前で説明してくれているのは新調180cm位の長身、30代の女性だ。この船の船長でカティーナ・マッキネンと彼女は名乗っている。

褐色の肌に黒髪のポニーテール。細身でありながらその腰つきと胸回りは圧倒されるボリュームで、オレンジのヘソだしのチューブトップに焦げ茶のホットパンツにサンダル履きといった格好である。首元に黒い宝石のついた首飾りをしている。

 スタイルは良いけどおそらく骨太で筋肉質、アースでいうところの外人アスリート的な感じかもしれない。


「いやー、空で人が降ってくるのに遭遇するなんて初めてだよ。最初は空賊が出たかとびっくりしたんだよー?」

「こっちもそう思いましたよ。何しろ、世界転移が初めてで、飛翔のマジック・カードには空賊が出るなんて書いていた物ですから」

 俺が言うと、あーなるほどね、とカティーナ。


「マジック・カードのフレーバー・テキストの作者って色々と謎が多くてね~。一度会ってみたいものだけどさぁ。あれのおかげで空行く女子は白パンツ履けって男共にからかわれてしょうがないんだよ。この船にはがさつな野郎ばっかりなんで、そう言うこと言う奴が居るかも知れないんでごめんね~、ミリアちゃん」

「いいえ、厄介になってすいません。よろしくお願いします」


 そうなのだ。ヌイグルミ号に拾われた俺達は、自己紹介と情報交換をした結果、行動を共にすることになった。


 ヌイグルミ号はカティーナ以下30人ほどの乗組員で運用されている次元航行船で、全員が魔法使い、なおかつマジック・カードを持ったワールド・ウォーカーだった。

 普段は、ノルス、グノシア、トリストの三つの異世界間を行き来しながら、異世界貿易をしているらしい。今回は、ノルスで品薄になっているリクシアに金儲けの臭いを嗅ぎつけ、これからリクシア採取に行くと言う、俺達にとってはまさに渡りに船だったのだ。

 リクシア採取後、ノルスまで戻るというので、俺達は臨時にヌイグルミ号の船員となり、仕事を手伝う事になったのである。


 とりあえず今のところはゆっくりしていて良いというので、俺達はカード・セットの魔力回復具合を確認したり、俺は特に魔法のレクチャーを受けたりしている。

 ブリニャンは猫の習性そのまま、可愛い物好きのカティーナの膝の上で丸くなっていた。むう、けしからん。


 そういえば。


 爺さんのアドバイスを思い出し、ブリニャンにピュリファイ(浄化)を掛けてやることを思い出した。とは言え、魔力カードの光はまだ、下から半分ほどしか色が戻っていない。ちなみに、風の魔力カードはもう完全回復しており、闇はまだ二割ほどだ。なるほど、居る場所の周囲の魔力状況で再チャージの時間も変わる訳だ。

 そういった話をすると、カティーナがアドバイスしてくれた。


「グノシアは普通に魔力があるから、カード無しで同じ効果を試してみると良い。魔法の練習にもなるよ」


 俺は早速試して見ることにした。っと、その前に。

 ライフカウンターを取り出して、表記を見てみる。

 俺のMPは・・・・・・「6800000」


「「ええええええっーーー!!!!」」


 ミリアとカティーナの絶叫。


 どうやら俺は、魔力チートだったらしい。


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