ぎこちない
図書室の古びた木の扉を開ける。
「ちぃーっす」
「ふん、遅いぞ」
俺のやる気の無い挨拶に少しムッとした顔の少女が返す。
少女の名は………ユウ?だったと思う。
間違えていたらごめんなさい。
「で、今日も同人誌だったけかを読んでんの?」
「違う。あれは同人誌じゃなくてラノベだ」
「ふぅ~ん、まっどうでもいいけど」
少女が扉に一番近い席座っていたので、俺は対角線の一番遠い席に座る。
「どうしてそんなところに座るんだ? 私の隣か前に座ればいいだろ」
「うっさい、俺は女に免疫が無いんだよ。特にオマエみたいな可愛いやつにはな」
「えっ!? あ~…そのぉ………っ」
顔を赤らめて手に持っていた本で顔を隠す少女が可愛らしかった。
ちなみにさっきのは確信犯で、どんな反応をしてくれるのかを観てみたかったのだ。
素であんな恥ずかしいことを言えるのは人間の屑だと思っている(キリッ)。
「と、とにかく私の隣に来い! その、あのぉ……は、話が出来ないだろ?」
「そうですか」
俺は素直に隣には座らず、少女と机を挟んだ向かいの席に座る。
不服そうな顔をする少女は、手に持っていた薄めの本を自分の鞄にしまうと立ち上がった。
(もう帰んのかな?)なんて考えていると、少女は無言で土足で机に上り、机の上を歩いて俺の隣の席に何事も無かったかのように座った。
あまりに自然な動きだったので、よくも分からず口を半開きにして隣に座る少女を見つめていると、「は、恥ずかしいではないか……」なんて口を尖らせて言う。
そして再びぱっと立ち上がると、高らかにこう宣言する。
「よし! マンガを描こう」
照れ隠しで言っているようでは無かった。
「マジで言ってんの? オマエマンガ描けんの?」
「ふっ、当たり前だのクラッカー! 小学生の頃は『鶏ガラ 明』と呼ばれたほどだ」
ドヤ顔でこちらを見てくる少女。
「面白くないぞ」と告げてやると、悲しそうな顔をして席に座った。
「―――まぁとにかく私はマンガを描ける!」
「昨日の小説は酷かったよな? 本当に大丈夫なんだろうな」
「あれよりかは多少マシだろうな」
「んじゃあ期待しとかない」
十数分後、驚きの速さで少女のマンガは完成した。
しかし、あまりの酷さの為どういったものなのかは言えません。
ただ、描いた少女自身が「小学生……いや、幼稚園児並みだな…」と言っていました。
「もうしんどいし、今日は帰るか?」
「そうだな……って違うぞ! 今から会話を始めるんだ」
ノリツッコミのようなものをした少女は、あごの肉をつまんで思考を巡らせる。
今のうちに帰ってしまおうかとも考えたが、前にも言った通り俺は普段女子と会話しない、出来ない。
こんな残念なやつが心の支えだなんて………はぁ……。
「ふむ、これだな。―――え~、お前に彼氏はいるのか?」
「俺はホモじゃねぇ。それを言うなら彼女だろ?」
「そんな細かいことは気にするな」
「気にしなきゃ何かが終わる気がすんだよ」
「ふ~ん、そうなのか」
「そうなんだよ」
「………………………」
「………………」
会話終了!!
やばよやばいよ! どうにかして場を繋ぎ留めないと………。
「え~、まぁあれだ。俺には彼氏……じゃなくて彼女はいねぇけどさ、オマエの方はどうなんだ?」
「全然いないぞ。そもそもそんな生物が本当に地球上に存在するのかを疑っているくらいだ」
「………なんか悲しいな」
「どこが?」
「全体的に」
「そうか……」
「………~と、趣味ってなに? ほら、これから三年間一緒に部活していくわけだしさ」
「特にないな。強いて言えば読書だけど、基本的には暇つぶしだしな」
「で、どんなの読むの?」
「昨日読んでたようなやつ。ラノベの方がギャグが多くて好きだから」
「ふ~ん」
「あ~、お前も文芸部に入るくらいだし読書するんだよな?」
「まぁな。ここ入ったのだって図書室が使い放題だったからだし」
「そうか―――――で、どんなジャンルが好き?」
「オマエみたいなタイプ」
「ん? ―――って、はぁ!!? それって、あの、ぃや……タイプって…っ!!」
「冗談冗談、本気にすんなよ。てか本当に面白いな。中学女子校だったとか?」
「そ、そうなんだよ! 小学校も女子だけだったし、男の人に慣れてないっていうか……なっ?」
「同意を求められても困る」
そんな感じで会話を続けていった。
『ユウとのラブラブ度が少し上がった』
嘘です。




