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間違った文芸部の活動  作者: 馬鹿面
1/3

始まり

 『桃太郎』 by私


 昔々あるところに、ファンキーでギャラクティックなおじいさんと、サディスティックでエロティックなおばあさんがいました。ファンキーでギャラクティックなおじいさんは首狩りに、サディスt(以下略)なおばあさんは川に洗濯に出かけました。

 s(以下略)が服に付いた赤黒い染みを落としていると、

 どんぶらこっこ どんぶらこ

 なんと、川の上流から巨大な桃が流れてきたではありませんか。最初は尻かと思いましたが桃でした。(略)は早速その桃を獲ろうと川に飛び込みましたが、昨日の雨の影響で流れが速く、すぐに流されてしまいます。桃を浮き輪代わりにして生き延びようとしましたが、結局死にました。


                                    おしまい。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「よし、最高傑作だ!」

 「何処どこがだ!!」


 俺は目一杯に声を張り上げる。

 しかしこの物語、というか小説らしきものを書いた張本人である少女は、満足そうに首を縦に動かすだけだ。

 俺はピンク色のノートパソコンに映し出された文字群を指差しながら、


 「何所が最高傑作だよ!? 是非ともご高説(こうせつ願いたいね!」


 少女は「ふっ、これだからセンスのないやつは……はぁ…」とつぶやきやがった後、朗々と語り出す。


 「この作品の素晴らしさは『私が書いたもの』それだけで全て説明がつく!」

 「ついてねぇよ!! もっと詳しく丁寧に、いったい何処らへんが素晴らしいか言ってみろや」

 「む、そもそも口が悪くないか? 私たちはまだ出会って30分と経っていないぞ」

 「その30分の間に嫌われた自分を恥じろ」



 いきなり言われてもよく分からないだろうから、まずはここまでの経緯を話しておこう。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


 高校に入学して5日目の放課後。

 『文芸部』の入部届を持って部室であるはずの図書室まで来てみれば、先生はおらず、たった一人の少女が夕日に照らされながら少し薄めの本を読んでいるだけだった。


 「あ、あのぉ、ここが文芸部、でいいんでしょうか?」


 今より遥かに初々しい俺が少女に言った。

 この時は(何この娘、ちょ~可愛いんですけどぉ!)とテンションが上がっていた。

 今思えば『黒歴史』確定だったりする。

 少女は読んでいた本を勢いよく閉じ、しばらくしてから俺の目を見ることなく口を開く。


 「我に話しかけるな、下賤な豚めが」


 は?

 最初は全く意味が分からなかった。

 10秒ほど経ち、ようやく少女の言っている言葉の意味を理解できたが、受け入れるのにはさらに20秒を要した。

 (うっへぇ……マジの中二病初めて見た)若干の感動を覚えつつ、俺は少女に、


 「写真を撮っていいですか? 友達にメール送りたいんで、『リアル中二病発見(笑)』って」

 「本人を前にしてそれを言うか……」


 少女は苦々しく言った後、


 「えぇ~こほんこほん……我―――じゃなくて私は、読んでいる小説の影響を受けやすいのだぁ!」


 少女はそう言い(頑張って元気に言っているせいで馬鹿っぽかった)、俺の目の前に手に持っていた薄い本を突き出す。

 その本のタイトルは、『マサオ君、魔界でインゲン豆とたわむれる(外伝)』だった。


 「いかにも面白くなさそうだな…………」

 「なっ!? このシリーズはマニアの中では特に評価が高んだぞ!」

 「何処のマニアだ、キモオタか?」

 「……………」

 「否定出来ねぇのか………」


 気まずくい空気を払拭ふっしょくすべく、俺は新たな話題ふってみる。


 「アンタも文芸部員、なん…だよなぁ………はぁ……」

 「私はいかにも文芸部員だが、何か文句でもあるのか? あるなら殴るぞ」


 小さな拳を握り締める少女。

 全く怖くなかったが面倒そうだったので、圧倒的な数を誇る文句を力技で捻じ伏せて話を進める。


 「で、先生は? 入部届出したいんだけど」

 「それならお前が入ってくるちょっと前に出てったぞ」

 「ん、分かった。で、その先生なんか言ってなかったか? いつ戻ってくるかぁ~、とか」

 「何も。でも、たぶん戻ってこないと思うぞ。昨日もそうだったし」

 「ふぅ~ん、そっか」


 会話が途切れる。

 このまま終了にしても良かったが、女子とまともに会話したのが久しぶりだったので続けてみた。


 「オマエも1年だよな。胸の校章の色、赤色だし」

 「女子の胸を見るとは最低だな」


 少女は胸の前で両腕をクロスさせ、上半身だけを後ろに退くことで身を守るフリをする。

 その顔が半笑いだったのが無性に腹立たしいが、振るえる右手を左手で押さえつけ、元々訊こうとしていた事を訊くことにする。


 「オマエは昨日も部活してたんだよな?」

 「そうだな。私が部に入ったのが昨日だからな」

 「ならさ、文芸部って何やんの? 説明会でも何言ってんのか分かんなかったし」

 「確かにあの先生はウザかったな。滑舌悪いし鼻息荒いし」

 「あいつが顧問……なんてことはないよな?」

 「あったら私は入ってないよ。―――え~っとまぁ話を戻すけど、文芸部自体はテキトーだな。本読んだり小説書いたり。そもそも先輩が誰一人として居ないから手本が無いし、テキトーでいいんじゃないか?」

 「そっかぁ……で、オマエは変態本を読んでたと」

 「ち、違うわぁ!!」


 少女が近くに置いてあった『マサオ君、魔界でインゲン豆と戯れる(外伝)』を投げつけてくる。

 その様子には可愛らしいものがあったが、投げられた物が投げられた物なのでキュンとはこなかった。


 「ふん! 私は小説を書くんだからな!」


 少女は鼻息を荒くして、足元に置いてあった革の鞄から薄いピンク色のノートパソコンを取り出すと電源を入れた。

 (意外と可愛らしい趣味を持ってんだなぁ)と、少し感心して起動画面を覗き込んでいると、しばらくしてデスクトップが現れた。

 そのデスクトップの右下には『マサオ君、山奥でツチノコに食われる』と書かれてあり、真ん中には蛇とアルマジロを足して2で割ったぐらいの無駄にリアルな化物が描かれてある。

 その化物の口には、ミニスカートとピンクと白のストライプのピチピチパンツに二本の白い脚が生えていた。

 その左下で頭を抱えて嘆いている冴えない少年がマサオ君なのだろう。


 「ふっ、どうだ? 凄いだろ!」

 「全然」

 「……そ、そうか…」


 少女は少し肩を落としながら、慣れた手つきでワープロのソフトを起ち上げた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「と、こんな感じだったのだ」

 「誰に話しかけてるんだ?」


 ふて腐れた少女が頬を膨らませながら俺の顔を覗きこんでくるが、なるべく目を見ないように心がけた。

 少女は性格に多少の難があるが、顔は無駄に良い。

 もし少女に告白なんかでもされようものなら、俺は0.1秒でOKをする自信がある(念のために言っておくと、俺がモテないからとかそんなんではない、きっと!)。


 「なんで泣いてるんだ?」

 「うっせぇ黙れ」


 俺はいつのまにか頬に付いていた水を右手で拭いとると、顔は動かさず目だけを動かして少女を見る。

 やっべぇ、可愛い······。

 俺の通っていた中学はブスばっかりだったので、余計に可愛く見える。

 肌とかマジ綺麗だしな············こうして二人きりで居ると、(自分でももしかしたら······!)と思ってしまうのが男というものだ。

 もっともっと会話したい!

 俺が少女に話しかけようと口を開く、その直前に、俺の耳に少女の甲高い声が響いてきた。


 「私と付き合え」

 「·········は、はぃいぃぃ~~!?」


 ごめんなさい、即OKなんて嘘でした。

 俺が即答できずにオロオロしていると、少女は何かを思い出したように、ポン! と手を叩く。


 「うん、それがいい! そうすれば私は恥ずかしくないし、お前は入部届を出せるしな。うんうん」


 何度も頷く少女を前に、俺はただただ口を開けてポカンとしていた。


 「え? それって、どっか一緒に行こ的なやつ?」

 「ん? それ以外に何がある?」

 「あっ、そですか」


 ······························。

 同じ方向の手と足が同時に動く、宙に吊られてるような歩き方の少女の二歩後ろを歩きながら、俺はこう思っていた。


 「(本当に文芸部なんかに入っていいんだろうか·········? 嫌な予感しかしない)」


 そんな事を考えていたせいだろうか?

 いつのまにか、少女は俺の10メートルほど先に進んでしまっていた。

 すぐに俺が遅いことに気付いた少女は、ぎこちなくこちらを振り返り、


 「早くしないと置いてくぞ」


 笑ってそう言うと、少し速度を落としてまた歩きだす。

 その笑顔と気遣いに惚れてしまった·········と言えば問題かもしれないが、俺の心情は、まさにその通りだった。


 「アンタのこと何て呼べばいい? そのぉ······同じ部の部員なんだしさっ」


 俺の口は勝手そんなことを口走っていた。

 (ナイス俺!!)と叫ぶ俺の心の声など関係なしに、少女はその場で立ち止まると、柔らかそうな唇に人差し指を押しあてしばし考え込む。

 3秒ほどしてからだろうか、少女の口が二文字の言葉を紡ぎだす。


 「ユウ」

 「ゆう?」

 「そ、ユウ。カタカナ二文字は格好いいからな」

 「その原理はわかんないけど、ユウ、ユウ、ユウっと。よしっ、覚えた。え~、俺はぁ······」

 「お前はフクな」

 「はっ!? んでだよ、俺にも名乗らせろよ!」

 「貴様にそんな権利なぞ無い」

 「······はぁ、何かもう良いです······。で、どうしてフクなんだ?」

 「ユウときたらUFO、UFOときたらお前はホーのはずだ。だがホーは言いづらいし、ホーからフクロウに換えてフクにしてやったんだ。ありがたく思え」

 「ははー、分かりますたー(棒読み)」


 少女改めユウは、もう一度屈託の無い笑みを見せると、


 「フク、行くぞ」


 そう言い、再びゆっくりと歩きだす。

 俺は、そのきしゃな背中を今度はしっかりと追いかける。

 足取りは軽かった。

 空でも飛べてしまいそうな気分だった。


 「ユウ、これからよろしくな!」


 俺は溢れる嬉しさを隠すこともせず、前を歩く少女に告げる。

 少女は前を見て歩きながらも、笑顔が想像できる声音でこう言う。


 「こちらこそよろしくな、フク」



 こうして俺達、文芸部は、波乱と万丈(仮)に満ちた活動を開始するのであった。

 僕は男言葉の女子が大好きです!

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