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liar~嘘吐きな殺戮人形~  作者: まぼ
広がる世界
13/14

 夜が学園に来て、今日でようやく一週間が経った。

 この一週間、様々な出来事があった。

 寮の部屋については、夜はもう諦観している。未だに夜の同室者は、夜を迎え入れてくれる気がなさそうなのだから――。

 現在はアスの部屋で寝泊まりしている。アスの方から提案してくれたため、比較的気遣わなくて済んでいるが、やはり何日も世話になるわけにはいかない。なんとかしなければと夜は思っていた。


「よーる」


 女の声だ。

 夜が振り向くと、そこにはキャロルとユノが立っていた。

 キャロルは顔に意味深な笑みを浮かべている。

 この二人は、夜の転校――ということになっている――初日、フィンとともに夜を庇った二人だ。


「こ、こんにちは」


 ユノは俯き気味に挨拶をする。キャロルが言うには、「ユノは人見知りが激しい」ということだった。


「こんにちは」


 夜の淡白な物言いに、ユノの肩がビクリと揺れた。それでもその場から離れることはない。

 キャロルは全く気にしていないようで、キョロキョロと夜の周囲を見回してから「フィン知らない?」と訊ねた。


「知りません」


 何故フィンの居場所を自分に訊くのだろうか――と、夜は嘆息を漏らした。


「そっかぁ。もう、どこ行ったのよ!」


 キャロルの長い髪が揺れる。

(フィン……)

 夜は、一週間前の翌日を思い出した。


 *


「夜、はよ!」


 教室に足を踏み入れた夜を、一番最初に迎えたのがフィンの声だった。

 一瞬動きを止める。昨日の激しい負のオーラを纏ったフィンとは別人のように思えた。

 瞳は宝石のような輝きを取り戻していたし、顔色も良い。


「おはようございます」


 あまり感情を込めずに返す。フィンの変化に戸惑っていることを悟られたくはなかった。

 結果的に冷たい反応をしてしまったわけだが、フィンは嬉しそうに微笑んでいる。

(別れた後、一体何が……?)

 夜は思わず訊きたくなったが、グッと堪える。他人に興味を示すなど、自分らしくない。

 その後、フィンからキャロルとユノを紹介され、そのこと――昨日のこと――については触れられないまま時は過ぎてしまい、結局わからず終いとなったのだった。


 *


 そんなことを思い返していると、夜は背後から強い衝撃を受けた。痛みを感じたわけではないが、不快なのには変わりない。

 微かに眉を寄せながら、後ろを振り返る。


「よお、『家名なし』」


 そこには、ニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべながら夜を見下ろす少年がいた。

 見覚えのない顏に、夜は僅かに首を傾げるだけだ。




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