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liar~嘘吐きな殺戮人形~  作者: まぼ
広がる世界
12/14

 *


 アスの部屋――つまり寮監室に戻った夜は、先程まで座っていたソファへ腰を下ろし、黙り込んでいた。

 本当にあれで良かったんだろうか。もう一度行くべきではないのか。

 何の反応も示さない扉が脳裏を過ぎる。

 そもそも、何故フィンとアスは部屋に人がいるとわかったのだろう。本当に、気配も、物音一つさえもしなかったのだ。

 夜は目の前にいるであろうアスをチラリと見上げる。――と、こちらを見ていたアスと目が合った。


「!」


 夜が黙考している間、アスはずっと夜を見つめていたのだ。

 ようやく自分を見てくれたことが嬉しいのか、アスがニコッと笑みを浮かべる。


「なんですか?」

「いや……何も、ない」


 たどたどしさを残すアスの話し方は、夜を、子どもと話しているかのような感覚にさせる。

 そういえば、アスは性格や雰囲気も幼さを漂わせている。にも関わらず、ふとした拍子に大人っぽさを感じさせることもある。本人は特に意識していないようだが――。

 アスの返事により、再び静かな時が訪れた。

 壁に掛かる銀の時計の音だけが、リズム良く刻まれていく。

 アスの視線は夜から離れてはくれない。


「……あの、」


 夜は思い切って訊くことにした。気になっていることの全てを――何故だか、アスは答えてくれるような気がしたのだ。

 考えるのは、それからだ。

 夜が気持ち唇に力を込めると、アスの笑みが深くなる。

(あ、今……)

 雰囲気が変わった。蛹から、蝶へと成長するみたいに、アスは艶やかさを纏わせる。その空気がなんとも形容し難いものなのだ。そして、そういう瞬間が、アスと出会ってから時折夜の前に現れる。


「何……」


 口調は変わらないのに、別人のように感じる。

 アスの笑顔は、夜が訊こうとしていることを、すでに知っている――とでも言いそうな笑顔だ。

 夜は訝しみながら、それでも言葉を続けた。




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