1.佐竹廉
人には選択のときがある。
佐竹廉もまたその選択の岐路に立たされていた。
(まじで漏れる...!まじでやばいぞこれ)
佐竹廉の思考回路は排便に支配されていた。
目の前では退屈な数式が踊り、それを教師が指揮している。
周りを見渡すと、ある者はその舞踊を舐めるように楽しみ、またある者は自己領域を展開している。
しかし、胃が締まり尻も締まっているような者は他にいなさそうだ。
(誰か漏れそうなやつおらんのかよ...)
廉はものすごくトイレに行きたい。それは今目の前にとんでもない美人がいて誘惑してきても迷わず排便に向かうほど。
しかし、彼は教師にその願望を伝えるという選択ができずにいた。
廉は6年前、小学5年生だったときを思い出した。
同じように授業中漏れそうだったため、教師にトイレに行ってもいいか打診したところ、クラスの悪ガキが、
「こいつウンコ漏れそうなんだってよ!!ウンコマンだ!!」
とか何とか言ってからかってきたのだ。
すると他の奴らも同じようにからかい始め、廉は当分「ウンコマン」と呼ばれるようになってしまった。
(あの時みたいな辱めは絶対に受けたくない。。けど、まじでやばい!!)
廉は苦悩していた。
その時、隣の席の中山航大が不意に手を挙げた。
「先生!廉が体調悪そうなんで保健室行かせてもいいですか!!」
「...佐竹、体調悪いのか?大丈夫か?」
「え...あ、はい、ちょっとやばくて...」
「てことなので、連れてきます!!」
廉は航大に強引に手を引かれ教室の外に連れ出された。
航大は廉を連れて廊下を走る。
「航大、航大!!」
「おまえウンコ漏れそうなんやろ?はよ行ってこい」
「なんで、それ...」
「だってめっちゃ足動かして、変な汗かいてたし。となりで脱糞されるの嫌やし。」
「悪い、行くわ!」
廉は個室に駆けこんだ。
いつもは一番奥の個室を使うが、この有事にそんなことは気にしてられない。
トイレから出ると航大がスマホを触りながら待っていた。
「でかいの出たか?」
「最上の解放感を感じた」
「なんやそれ」
「まじでありがとな、航大」
「いや、漏れそうやったらはよ先生言わんと。脱糞するで」
「...」
「あれか、授業終わるまで耐久チャレンジみたいなしてたんか」
「...そ、そう!」
さすがに過去のトラウマから我慢してたなんて言えない。
「まあ、俺ら保健室行ったことなってるし行こや。お前のおかげでサボれるし」
そう言うと航大は歩き出した。
廉も後をついていったが、もし航大がいなかったら自分は今頃盛大に脱糞していたと考えると体中の産毛が逆立った。
(まあ、航大が言わんくてもさすがに先生に言ってたけどな)




