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第95話 女神の島からの脱出


 イチが先導し、タケミとクロがその後についていく。


「オラァッ!」


 進んだ先でタケミが壁を壊すとそこにはネラ達がグロリアとその部下との戦いの真っ只中にいた。


 彼女らを取り囲む敵を二人の一撃で後退させる。


「タケミ!」


「ユイ、ネラ!ん?なんかネラの様子がいつものと違うな」

 彼は黒布を纏ったネラにそう言った。


「アア、タケミか」

「なんか話すの下手になったな」

 彼がネラとそんな話をしていると後ろからイチが出てくる。


「タケミ、この人たちが?」

「そうだ、話したおれの仲間だ!」

 彼はそう言うと彼女らにイチを紹介した。


「そうなんだ、タケミが色々世話になったみたいだね」

「僕も色々と話を聞かせて貰ったよ、とりあえずここから出よう!」


 タケミ達は外に出る。


「シツコイッ!!」


 ネラは追いかけて来る相手に対し、黒炎を放つ。


「ハァ……ハァ!」

「ネラ!」

 倒れそうになるネラ、ユイは彼女に肩をかす。


「魔力の消耗が酷い、その状態ぜんぜん大丈夫じゃないじゃん!」

「なに、コレグライ」

 明らかに調子が悪いネラだった。


「もう後は逃げるだけだから、ちょっと休んで!」

「クロ!ネラを乗せてやってくれ」

「がう!」

 タケミに言われ、クロはネラを掴んで自身の背中に放り上げた。



 彼らはそのまま上級女神の街の中を走り抜け、下級女神の領域を突破する。


「あの子達!」


 その先では女神見習い達が女神に拘束されていた。


「貴様らが侵入を許したのだな!」

「ご、ごめんなさい!」


「あの人たちはまだここから出られる!お願いだ一緒に連れてってくれ!ここは僕が抑える!」

 それをみたイチはユイに呼びかける。


「おれも手伝うぜ!クロもユイ達と一緒に行ってくれ!」

 イチとタケミはユイとネラそしてクロを先に向かわせ、敵を足止めする。



 ユイとネラは女神達を倒し、見習い達を開放した。


「女神さま!」

「残念死神さまで……し……た」

「もう!ネラは無理しないで!みんな怪我はない?一緒に行こう!」

「がう!」


 クロはネラをおぶり、開放した見習いたちと共に最初に降り立った場所に向う。


「時間ピッタリね、さあこっちへ」

「テルーおばあちゃん!タケミ、イチくん!ゲートが開いたよ、早く!」

 ゲートが開き向こう側にテルーの姿が現れる。


 クロとネラがゲートに飛び込み、ユイは先に見習い達をゲートをくぐらせる。その後からユイもゲートに入る。



 その頃、タケミとイチの前にグロリアが現れた。


「随分と偉そうなのがきたな」

「御名答、このお山の大将さ」

「へぇ、そりゃあいいな!」


 タケミとイチが攻撃をしかける。

 だがグロリアはそれを魔力を横に薙ぎ払うように放ち、彼らを吹き飛ばす。


「無駄な抵抗を、世界の流れに逆らう羽虫が。我々の崇高な道に踏み入るでない」


 グロリアがそう言い放つと瓦礫の中から2人が出てくる。


「まったくお前らは、口を開くたびに人の神経逆撫でしてくれるな」

「本当にね」


「行くぞイチ!」

「おう!」

 タケミは黒夜叉を発動させ、イチは魔力を身に纏った。


 イチは一瞬でグロリアに距離を詰める。


「無駄だ!貴様は絶対に私に傷をつけられやしない、そういう誓約なのだ!」

 彼は攻撃を放つが弾かれてしまう。


「じゃあ彼のはどうかな?」

 イチの影からタケミが飛び出す。


「なに!」

「ぶっ飛べ!」


 強烈な一撃によりグロリアは勢いよく吹き飛んだ。

 同時にタケミの拳から血が噴き出る、この一撃で彼の拳は損傷したようだ。


「随分と硬えな、いや違うかこれは?」

「タケミでもそうなるのか、やはりグロリアには何かあるね。まあアイツがぶっ飛ばされるのも観れたし、ここはゲートに向かおうか」


「了解!」

 2人ともゲートに向かって走り出す。


「あ、あれ?」

「どうしたの?」

 ゲートの向こうでユイが女神見習いに話しかける。


「1人いないんです!」

「あ!あの子、女神様が来た時に隠れたんだ!きっとまだあの村にいる!」


「テルーおばあちゃん私……」

「ごめんなさい、このゲートは一方通行なの。戻ることは出来ないわ」

「そんな!」

 見習いたちとユイはゲートの向こうをみる。



「この魔力っ!」

「ん?誰かが泣いてる声がするな」

 ゲートに向かって走っている時、2人は村のそばで立ち止まる。

 

「タケミ!」

「ああ、村に逃げ遅れたのがいるな」


 2人は村に入り、逃げ遅れたものを探し始めた、女神たちがやったのか村の建物は壊されていた。


 タケミが瓦礫を押しのけると壺が現れる、その中に1人の少女が潜んでいた。


「隠れた壺ごと瓦礫の下にいたのか」

「よう、かくれんぼ上手だな」

「お兄ちゃんは、さっきご飯くれた。でもさっきと違う、怖いかお」

 黒夜叉状態の顔をみて少女は少し怯える。


「怖いってさ」

「じゃあこっちのイケメンが抱えた方が良いな」

「さあ、一緒にここから出ようね」

 イチが少女を抱き上げ壺から出す。


「追手が来てる急ぐぞ!」

 タケミが後ろにつき、イチと少女を先行させる。

 

「調子に乗るなよ」

「っ!?」

 背後から飛んできた一筋の光がタケミを避け、イチの脚を貫いた。


「イチ?!」

 イチは倒れそうになるも少女を落とさないように姿勢を保とうとする。


「倒れんか、ではコレはどうだ?」

 追撃の光がイチ目掛け飛んでいく。


「タケミ!この子を!」

 イチは自身に攻撃が届く前に少女をタケミに渡した。

 光線はイチの胴体に複数命中する。


(まずいな、グロリアの攻撃か。これは僕には修復できない)


「イチ!お前、待ってろすぐに担いでユイに治してもらおう!ユイがダメでもマリスに頼んで……」

 

(グロリアに加えてあれ程の女神の数、もし奴らがゲートにたどり着いたら閉じるのを阻害するだろう。そうしたらゲートの向こうにいるタケミの仲間も、一緒に逃げた見習いの子達も危ない)


 タケミが担ごうとするがイチはそれを断った。


「おい何してんだ早く行くぞ!」


(タケミのこの状態。強力な分、消耗も著しい。それなのに解除出来ないところをみると完全に制御ができていない、最後の手だ)


 もしこのままグロリアや女神たちがタケミを追撃したら彼らは窮地に立たされる事を、イチは悟った。


「行くんだ!タケミ!」

 血を吐き出しながらもイチは声を上げ、少女を抱えたタケミをゲート方面に押し出した。


 イチは魔法の障壁を展開する。自分と女神たちを閉じ込め、タケミ達を追えないようにドーム状のものを作り出した。


「おい!何してんだイチ!!」

 ドームの外から障壁を叩くタケミ。


「ごめんね、せっかく誘ってもらったのに。本当に嬉しかった、でも僕にはやるべきことがあるって事が分かったんだ。君は前に進むべき人間だッ!」


 イチはタケミに背中を向けたままそう話す。


「ッざけんなァ!なに勝手な事言ってるんだよ!お前この島にずっといて良いのかよ?!外に出たいんだろ!俺と一緒に旅すんだろ!」


「行ってくれ!僕の為にも!」

彼に向かってそう叫ぶイチ。


「っ……!」

 歯を食いしばり、拳を握りしめるタケミ、その拳からは血が流れ出ている。


 抱えている女の子に目を向ける。


「ねぇあのお兄ちゃんどうしたの?だいじょうぶなの?ケガしてるよ」


「……ああ大丈夫だ。あの兄ちゃんは凄い強いんだ、心配ない」


 タケミは少女にそう伝えてゲートの方に振り向き走り出した。


 後ろではイチが自身が発生させた障壁の中で戦っていた。彼は攻撃を受けながらも反撃し、障壁を突破させないように足止めしていた。



(タケミ……こんな形で別れてしまって)

 イチの声がタケミの頭に響く。


「イチッ!」

 彼は頭の中で彼の言葉に返そうとするがうまく行っていないようだ、イチから返答がない。


(君は確かに聞くことは出来るけど、どうやら話すのは少し苦手みたいだ。じゃあ僕が一方的に話すから聞いてほしい)

 彼は話し始める。


(僕はこの島で生まれてずっとあの地下にある実験施設で過ごした、色んな人に会って来たけど皆実験で死ぬか、それともどこかに連れてかれた。きっとあの村の子達もそうだ。でも生きていくしかない、酷い話だよね)


 きっと彼は今も尚戦っているんだろう、それだと言うのに彼の声は非常に優しかった。


(そんな時に君の話をきいた、実は少し前から君の事は噂で知ってたんだ。最初はなんて無謀な事をしてるんだろうって正直理解できなかったよ。でも今日君に出会って、話を聞いて、僕の中で何かが変わった)


 タケミはただ黙って走りながら彼の話を聞いている。


(これを希望っていうのかな、君を見ていると自然と自分の内に光のような、温かい気持ちが湧いて来たんだ。地下の皆も喜んでたよ)


 彼の声は震えていた。


(確かに僕はこの島を出たかった、でも後悔はない……)


(君はそのまま道を進んでくれ!例えそれがどんな結果になろうともだ!それが僕の人生において、一番の友人への一番の願いだ!)


 この言葉を最後にイチの声が途切れてしまう。



「ッ!!」

 タケミは一瞬顔を後ろに向けようとするが、それを止め、ただひたすらに進む。そして彼らはユイが魔石で出した光の門に跳び込む。


「流石にこれだけ魔力がぶつかり合ってる状況じゃ、この距離が限界か」

 彼は満身創痍、もう生きているのも不思議な状態だ。


「ここまで……か」

 イチが霞む目で迫りくる敵を見る。


(お兄ちゃん!!)

 すると突然子どもたちの声が頭の中に響く。


(イチお兄ちゃん僕たちの力使って!!)

(最後まで一緒に頑張ろうよ!!)

(そうだよ!)


 彼の内側から力が溢れてくる。


(みんな一緒だから怖くないよ!)


「ん?なんだ、奴の魔力が急に」

 グロリアが彼の異変に気付く。


「無駄だNo.0111、その魔力を使って戦った所で貴様に勝機はない。そうだNo.0111、降参すれば昔のように生かしてやろう、地下で実験生活だ」

 彼女は手を彼に向けて伸ばす。


「どうだ?No.0111?」


「あんたらのそう言うところが反吐が出る程嫌いだ。そうやって自分以外を見下し、軽んじて、それが正しいかのようにふるまうお前らが!」

「ふん、それが答えか」


「あともう一つ、僕は……」

 イチはグロリアに向かって剣を向ける。


「僕の名前はイチだッ!」

 彼がそう叫ぶと周囲の障壁が収縮していく。


「ッ!?貴様ッ!」

 グロリアや他の女神達が彼に目掛け攻撃を放つ。だが彼はそれをかえりみず、その直撃を受けても尚立っていた。


「僕一人じゃ死なないッ!!」

 彼は限界を超えた魔力を引き出し、彼の肉体にヒビが入り、そこから青い炎が噴き出す。


 障壁は収縮し、彼の身体は光を放った。


 障壁内で大爆発が起きる。その衝撃は勇者や女神もろとも消し飛ばすほどの勢いだった。残っていたのは傷を負っていたグロリアと体が崩壊したイチだけだった。


「……っ実験体の出来損ないが!私にこれ程の傷を!」

 損傷していても徐々にその部分が修復されていくグロリア。


 彼女を道連れに出来なかった、それでも彼は笑っていた。


(これから僕は死ぬって言うのに、終わるって感じがしないな。なんでだろう……そうかタケミがいてくれたからか)


(ありがとうタケミ……僕のロクでもない人生は君によって意味あるものになった)


 崩れゆく体、両足が崩れ地面へと落ちる。イチは消えていく最後の瞬間まで笑顔のままだった。


 こうしてイチはこの島から解き放たれた。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

今後も投稿していこうと思うので評価、コメントなどして頂ければ励みになります!

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