第93話 イチとタケミ
タケミはイチを仲間に誘った。
「一緒に来いよ!まあ色々とある旅だけどさ」
イチは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐにその表情は曇る。
「凄い嬉しいよ、誘ってくれて、でも無理なんだ、僕は君に付いていくことは」
彼は首すじを見せる、そこには何かのマークがあった。
「呪印って言うんだ、これが有る限りは島から出られない。女神達の所有物の証だ。自分では外せない呪いの魔法なんだ」
「うーん魔法か、そうだ!俺の仲間にネラってやつとユイってのがいるんだけどさ、片方は元女神で、もう片方は魔術に詳しいんだ。なんとかなるかも知れないぞッ!」
タケミの提案についてイチは少しだけ考えた。
「それなら……それなら何とかなるかも!凄いよタケミ!確証は無いけど、もし、もし成功したら君と一緒に旅が出来る!」
彼は今までで一番目を輝かせ、そして涙を流し始める。
「おい、どうしたんだよ」
「ごめん、こんなに嬉しい気持ちになったのは初めてで。初めてだよ希望があるって思えるのは、こんなにも心強いんだね」
「なんだよ、大袈裟だなー」
タケミとイチは互いに声をあげて笑った。
「はあ少し落ち着いたよ、ありがとう」
「全く、まだ成功するって決まった訳じゃねえんだ、とりあえず行こうぜ」
タケミは立ち上がる。
「この子達はどうするか」
魔力の子ども達を見てタケミがそう言う。
「僕たちは大丈夫だよ」
「この子達は魔力体だからね、この空間だからこそ体を保ててるんだ……」
「うーん……」
クロと遊んでいる子ども達は二人の周りに集まってくる。
「だいじょうぶ!僕たちはイチとずっと一緒にいるから」
(こんな感じでね!聞える?)
(イチ兄ちゃんじゃないから、タケミ兄ちゃんには聞こえないよ)
子ども達の声が突然タケミの頭の中に流れる。
「いや、聞こえてるぞ。なんだか変な感じだな頭の真ん中から声がする」
「え!君にも聞こえるのかい?凄いな!これ女神達でも聞けないのに、僕たちはこれを秘密の通信みたいに使っているんだ」
驚いた様子のイチ。
「それじゃあ、みんな、僕はここから出てタケミと一緒に旅にでようと思う。そして強くなって皆の事を絶対にここから助け出す!外にはまだ見ぬ世界があるんだ、ここで本を読んだだけじゃ分からないような事がいっぱい!」
イチは立ち上がる。
「おっと、そうだおれも陽動しなきゃいけないんだった。すっかり忘れてたぜ」
「ああ、それなら問題ないよ。もう君の仲間は主神とあっている」
立ち上がるタケミにイチはそう言った。
「え?そうなのか」
「そうなのかって、こんな巨大な魔力の衝突が気にならなかったのかい?」
「ああ、おれ魔力探知とか全然出来ないんだ。もう分かってるだろうけどおれ全然魔力無いんだよ」
「魔力が無い……ふむ、確かに一見するとそうだけど……」
「前ユイに教えてくれって相談して、ちょいちょい教えて貰うんだけど、魔力が無いから全くできなくてさ」
話していると突然地面が大きく揺れる。
「ッ!?!なんだ?」
タケミは子ども達が怪我してないか目を向けるとイチ同じ方向を見ていた。
「タケミ!急ごう、恐らく君の仲間だ!」
(この異様な魔力、女神たちの実験体か?それに対峙しているこの魔力も異質だ)
「何をしてるんだ。No.0111」
突然女性の声が響く。
「なぜ侵入者の危険人物が無傷でそこにいるんだ?お前の役目はここの管理と防衛だろ?さっさと始末しろ」
それはネラから逃げていたグリーディだった。彼女は他にも女神や勇者の部下たちを引き連れている。
「もう来たのか、タケミ!」
「お早いね」
タケミが彼の前に立った。
「イチ、子ども達が巻き込まれないように安全な所へ」
「分かった、みんな早く戻るんだ。ここでは魔力の影響を受けてしまう」
イチは子どもたちをその場から非難させる。
「さーて、そんじゃあやろうか!」
タケミが構えると女神達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。
相手の一斉攻撃程度ではタケミはひるむ事なく、突撃し二人を掴む。
「グっ!」
「はなせ!」
「よおッ、ちょっと飛んでみるか?」
そう言ってタケミは首根っこを掴んだ二人をぶん投げる。
「おわっ!?」
「そらおまけだ!」
投げつけられた相手もまとめてタケミは殴り飛ばした。
「どうした!どんどん来やがれ!!」
人数差をものともせず一斉に相手にするタケミを少し離れた所から魔法使いが狙っていた。
「ここだッ!」
魔術を発動させる魔法使い、しかし魔法を放った瞬間タケミの姿が消えた。
「随分と呑気だな」
「ッ!」
彼女が見上げるとそこには拳を振り上げたタケミが跳んでいた。
「オラァッ!」
そのまま彼に叩きつぶされてしまう。
「おいおいこんなもんかよ?」
「クソッ!!」
グリーディが悪態をつき手をかざすと更に大勢の部下が光と共に現れる。
「結構多いな、今度はもう少しもつかな?」
相手は先ほどの倍以上はいる、だがそれでも彼はものともせずに応戦していく、彼に対してこの程度数、数には入らないようだ。
「な、なんて奴だ」
グリーディの顔がひきつる。
「お待たせ!」
今度はイチがタケミに加勢する。
彼を見てグリーディが何かを思いついたようだ。
「ふっ、私としたことがすっかり忘れていた、なんの為に主神様からこの権限を許諾されたんだ。おい!No.0111」
彼女はイチを呼び、彼に手を向ける。
「まさか!やめろ!」
イチはグリーディに攻撃を仕掛けた。
「被験体No.0111命令だ。侵入者カヅチ・タケミを殺せ」
彼女がそう呟くと彼の動きが止まってしまう。
「ぐっ、た、タケミ!逃げるんだ……!!!」
イチは何かに抵抗するような声を出しながら、ゆっくりとタケミの方を振り向く。
「おいイチ?どうした?」
タケミが心配そうに声をかける。
振り向いたイチの目は白くなっており明らかに異常な様子だ。
「さあ、殺し合え!」
グリーディの命令に応えるようにイチはタケミに襲いかかる。
「どうしたんだよ!イチ!」
「やつら……僕を操って……対象を抹殺する!」
理性は辛うじてあるが身体が言うことを聞かない様子のイチ。
「何を言っても無駄だ!そいつは私達の支配下にいる!我々が生み出した最強の勇者の力を見るが良い!!」
グリーディがそう言って高らかに声を上げる。
イチは絶え間のない攻撃を仕掛けてきた。
(やっぱり強いなッ!だけど動きが変だ)
「そいつは無意識のうちに自分の能力にストップかける癖があってなぁ、主神様も困ってたんだ。そこで呪縛の印に細工したのさ、いざという時にコントロールできるようにな」
自慢気に話すグリーディ。
「勝手に生み出した上に無理やり操るってか、知れば知る程どうしようもない連中だぜまったくよ!」
タケミはイチを押しのけてグリーディに攻撃を仕掛ける。だがすぐにタケミの目の前にイチが現れ、彼を攻撃を阻止した。
「ほらほら、そいつを倒さないとな」
彼女は余裕そうに笑う。
「目ぇ覚ませ!イチ!」
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