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第90話 地下にいる化物


 地下道を進んでいくタケミ。薄暗い地下道とは違い明るい白を基調にした施設のような場所に来ていた。


「なんだここ?」


「外と違って、なんか病院みたいなところだな。苦手なんだよな病院」

「ぐるぅ……」

「なんだクロも嫌いなのか?」

 どこか元気のなさそうなクロ。


「じゃあ一緒に行こうぜ」

「がう」

 タケミとクロは先に進む。


「何してる所なんだろうな?とりあえずぶっ壊しておくか?陽動になりそう」

 周囲にある施設を破壊しようとするタケミ。



「おっと」

 タケミとクロの背後から何者かが攻撃をしかけて来た。


「扉が開いたから様子を見に来たら妙な気配を感じたので来てみれば。こんな所に何の用ですか」


 物陰から現れたのは白衣を着た男だった、タケミくらいの年齢だろうか。


「あー、そう!観光だよー、うちの女神に連れられてさぁ。それで道に迷っちゃってさ、いやー済まない!ここは見た感じ関係者以外立ち入り禁止って所だよな。すぐに出てくからよ」


 相手は問答無用で攻撃を仕掛けてくる。


「そんな冗談が通用するとでも」

 相手は魔力で形成した剣を取り出し攻撃を繰り出す。その剣速は凄まじく、一振りで斬撃が飛ぶ。


「やっぱダメか」

 タケミはその斬撃を避けながら話す、彼はプロエ戦で学んだ構えと動きで今まで以上に俊敏に行動できるようになっていた。


 踵を地面に着けずに素早くステップし移動する。


「その体格で随分と素早く動くね、一体何者ですか?」


「カヅチ・タケミだ。今絶賛不法侵入中だ、あと破壊行為をしようとしている所だ」

「随分と正直な人だね」

 正直すぎる自己紹介をするタケミ。


「お仲間だって言って信じてくれるのか?」

「無理だね、女神でもなく勇者でもないのは一目瞭然だからね」

 相手はきっぱりと言い切る。


「女神に勇者ね……確かにおれって魔力全然無いみたいだし」


「だけど不思議だ。魔力は様々な動力源、それが極めて少ないというのに。君からは別の力を感じる、魔力よりも根源的な……」

 タケミを興味深そうに見る相手。

 

「そういうあんたはなんだ?勇者とはちょっと違う感じがする」

「どうしてそう思うんだい?」

 タケミは相手の身体を指さした。


「この部屋は消毒や殺菌につかうの薬剤の臭いがする。その服からも同じ臭いがするし、後は呼び方だ」


「呼び方?」

 相手は首を傾げる。


「”女神に勇者”と呼んで”様”をつけてない。それにもし勇者だったら"俺たち勇者"って言うだろ?」

「なるほど、確かに僕はちょっと違うかな」

 相手はタケミの説明を聞いて頷いた。


「あんたは悪いやつに思えないけどな」

「奇遇だね、僕もちょうど今それを思った所だ」


「クロ!噛んじゃダメだぞ」

 相手の後ろに向かってそう言うタケミ。


「ッ?!いつの間に背後にいたんだ」

「さっきから、ほらこっちおいで」

 相手の背後で待ち構えていたクロをなだめるタケミ。 


「全く気づかなかったよ、魔力探知には自信があるんだけど」

 相手はクロを見て驚いた。


「それでどうする?戦うのか?」

「やめておく、さっきはごめんよいきなり襲いかかって」


「いいよ、おれ侵入者だし」



 タケミとクロは相手に案内される。


「ここはなんの施設なんだ?」

「実験施設さ」

「実験?」


「お兄ちゃんだれ?」

 タケミの足元に半透明の子どもが立って彼を見上げていた。


「ん?あれいつからいた?」

「ずっとだよ」

 気付けば周囲には他にも子どもがいた、いずれも半透明の身体をしている。

 

「その子達は魔力体なんだ、つまり魔力のみがこの世界に残って漂っている状態」

「ほーん、幽霊の親戚みたいなもんか」

 子ども達の頭をなでるタケミ。


「ぼくたちオバケ!」

「はっはっは!元気だな」

 子ども達はタケミやクロの周りを駆けまわる。


「みんな嬉しいんだ、ここには滅多に人が来ないからね。そういえばどうやってここに入ってこれたんだい?地下を通って来たと思うけど、いくつか分厚い鋼鉄の扉があっただろ?」


「なぐって壊した」

「ガウ」


「なるほどね、あれそんな簡単に壊せる代物じゃないはずだけど」

 



「そういえばお前の名前は?」


「僕に名前はないよ、No.0111と呼ばれてる」

「なんだそれ?呼びにくいからイチで良いか?」


 タケミにそう言われて少しポカンとするNo.0111。


「なんでイチ?」

「1(イチ)が多いからだ、分り易いだろ」


 そう言われ彼は少し考える。


「分かった、それで行こう、この会話中は僕の事はイチと呼んでくれて構わないよ」

 イチはそう答えた。


「なぁ、この子達はなんでその魔力体になったんだ?」

「実験の一過程でね。この島の端に村があるんだけど」

「行ったよ、女神見習いの子達が住んでる場所だろ?」


 イチは頷く。


「そう、あの場所にいる子達はこの天界という環境で生活し順応する事で下界の者に比べより多く高純度の魔力を体内に取り込めるようになるんだ」


「高い山で練習して空気の薄い所に体を慣らす感じか」

「他にも色々ここでは行われていてね。この子達はその過程で生まれたんだ」



「僕はね主神から加護を受けたんだ」

「主神?それじゃあ勇者じゃないのか?」

 タケミの言葉に首を振るイチ。


「ちょっと違うかな。そもそも主神の力は巨大すぎて力を与えるのもまたその力を扱うのも非常に困難だった、故に成功例が殆ど無いんだ。下級女神ですら拒絶反応が出てしまう人間がいるんだからね、当然のことだ」


 彼は続けて話す。


「でも僕は主神から一瞬で相手の特性を見抜ける眼力、魔術に関する知識を含めあらゆる情報を高速で処理するための頭脳、魔神の一撃にもびくともしない強固な肉体、そして魔神や上級女神にも劣らない圧倒的な魔力量、これらぜーんぶ授かった」


「随分と贅沢だな」

 タケミが言うとイチは真剣な顔でこういった。


「そう、そしてここは僕みたいな贅沢な化物を生み出すための施設さ」


「化物って」

「ウソじゃないよ。僕も全容を把握している訳じゃないが、女神達は恐ろしい化物を生み出そうとしている」


「タケミ、君はここを潰そうとしに来てくれたんだよね。正解だよ、今連中が作ろうとしている物、それは僕なんか比じゃないぐらい凶悪なものだ」


 イチの表情から、それは決して大げさな話しではないというのが分かる。


「それはなんなんだ?」


「何かは分からない、僕はこの中にいながら様々な情報を得ることが出来るがそれだけはどうしても見つからないんだ。つまりそれだけ連中が厳重に管理している何かがある」


「厳重にね……」

 タケミはイチの言葉を繰り返す。


「自分で言うのもなんだが、僕の存在は奇跡に近いんだ。僕以外に実験の成功例がいないからね、きっと実用性が低いとふんだんだろう、最近はここに女神達はこなくなった」


「お前ほどのものを横において勤しむ研究か……連中はそんな事をして何をする気なんだ?つまりそれだけ色々な戦力を作り出してよ」


「それは分かってる、戦争だよ」



ここまで読んで頂きありがとうございました!


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