第88話 女神の島
タケミ達はテルーの作り出したゲートをくぐり、天界と呼ばれる場所にきていた。ゲートを抜けた先は砂浜だった。
「ここは浜辺?」
「みろよ!海の向こう側がねぇぞ」
「この島は空を飛んでいるからな」
ネラが2人に説明する。
「空……すごい星空だね」
ユイが空を見上げる。
「成層圏ぐらいか?確かにこの高さは簡単に見つからねぇな」
タケミも景色を見渡す。
「島の中心にこれ見よがしな壁や建物があるだろ?あそこが上級女神と主神がいる場所だ。とりあえずあそこを目指すか」
ネラが歩き始めた。
「なんか村があるな。随分とさびれてるけど」
浜辺から見える所に、それは村だろうか、ボロボロな家屋が密集した場所があった。
「なんだろうこの魔力、彼女らとちょっと違う?」
「誰か来るぞ」
「……」
タケミとユイが身構える、ネラは何も言わずに歩き続きけた。
「あー!女神様だ!」
「女神様!女神様が来たよ!みんな!」
随分と若く元気な声が響く。
「なんかぞろぞろ来たぞ、敵意は無いみたいだ」
「え?こども?」
「そういうことかよ」
ネラ達は子どもたちに囲まれた。
「女神様に勇者様!お出迎え遅れてしまい申し訳ありません、にしてもなぜこのような場所に?」
子ども達の中では最年長と思われる少女が頭を下げてそう言った。
彼女らはネラ達の事を女神と思い、そしてタケミのことを勇者だと思い込んでいるようだ。
「あー、えっとこっち女神様は人混みが苦手でして、静かなこの場所から天界に入る事を選ばれたんです」
ユイが咄嗟にフォローする。
「そうでしたか!」
「みんなは女神なのか?」
タケミが興味本意で質問する。
「え?違います、私達は女神見習いです」
「見習い?」
「勇者さま天界に来るのは初めてなんですか?」
「そうなんだよ、ここがあの名高い天界とはね。あの村は君たちの村なのか?」
タケミは女神見習いという少女たちの後ろにある村を指差す。
「そうです!ここで修業をして立派な女神になれるように頑張っているんです」
「女神に……ねぇ」
ネラが眉間に少しばかりシワを寄せた。
「さあみんな!歓迎パーティの準備をするのよ!」
見習い達はネラ達を案内しようとする。
「か、歓迎!?そ、そんな悪いって!」
「さあ、どうぞ!」
気づけばネラ達は村の中心に設けられた椅子に座っていた。
「どれも美味そうだな!」
「どうぞ召し上がって下さい!」
「頂きます!」
「がう!」
タケミとクロが料理に食らいつく。
(タケミとクロが食べてるなら毒とかはないんだ。でもこんな豪華な料理を出せるのに、この子達の身なりは……)
ユイは目の前に並んだ料理と少女たちをみてそんな事を考えた。
「御口にあいましたか?」
「ああ!めちゃくちゃ美味い!」
タケミは笑顔で答える。
「申し訳ありません、私含めてみんな女神様や勇者様にお会いすることが滅多になく、はしゃいでしまって。ご迷惑ではありませんでしたか」
「歓迎されて嬉しい限りだよ。あれ、みんなは食べないのか?」
タケミは少女たちに向かって料理の皿を出した。
「え?いや、私達は……」
「食べるなって言われてんだろ?」
ネラの言葉に少女達が小さく頷いた。
「そちらは女神様のものなので」
「ごちそうさん!残りはお前らで食べてくれ。私は上級女神様に用事があるんだ」
「え?」
取り分けられた分を平らげ、ネラは皿を置いて立ち上がった。
「え、でも良いんですか?」
「女神様からの命令だぞ?」
戸惑う見習いたちにネラはニヤッと笑い言った。
「そういうわけだ、残飯で悪いがよろしくな。ごちそうさま!」
「それじゃあね!」
「がう!」
皆は礼を言って立ち上がる。
「あ、ありがとうございます!」
年長者の少女が頭を下げ、タケミ達は手を振り返した。
「なんかあの女神様方、他のお方と違うね、見たこと無い方だったし」
「たしかに、でもゲートを使ってたし。あの魔力からして凄い女神様よきっと!見覚えがないのも、人混みが苦手って仰言っていたから、きっと普段は表に出ない方なのだわ!」
「さあ女神様からのお恵みよ、食べましょう」
「やった!食べていいんだって!」
「頂きます!」
子ども達が生まれて初めてのご馳走を前に、感謝の言葉をのべ食事を口にした。
「うーん!果物ってこんなに甘いんだ!」
「美味しい!こんな美味しいものを恵んでくれるなんて!」
「少し予定が狂ったけど気を取り直して行くぞ。もうじき下級女神の領域になる、ここから別行動だ。私は一直線で【主神の塔】に向う。お前らは好き勝手暴れてくれ」
「りょーかい!」
「任せて!」
「じゃあ頼んだぞ」
ネラはタケミとユイの元から離れた。
「さーてどうやって暴れるか。おれたちも別れた方が良いか?」
「確かに陽動なら二手に分かれた方が良いかもね」
タケミの意見に賛同しユイは開始の合図を考えた。
「私が火柱を上げるよ、夜だからよく見えると思う、それを合図に始めよう!」
「よーし分かった、それまでになるべく離れた場所に移動しておけば良いんだな!」
「そういう事。私はタケミの魔力を探知して動くから。合図まではなるべく人目につかないようにね」
「善処するよ」
2人は別々の方向に移動する。クロはタケミについていく。
「本当にどこみても女神と勇者だなー。どうしたクロ?ん?」
建物の屋上に潜むタケミ。通りを歩く女神や勇者を観察しているとクロが後ろをみて唸っている事に気づく、タケミはクロが向いている方向に振り向いた。
「意外と潜むのが上手いのね。カヅチ・タケミくん」
「ネラの妹か」
上級女神のリベリオが立っていた。
「リベリオ様!ここにいた、あれ?……え?タケミさん!?」
円盾を持つ勇者イサムが屋上にやってきた。
「イサムだっけ、よう!」
「ようじゃないですよ!何してるんですか!こんな所で!というかどうやって?」
イサムは酷く驚いた様子で聞いて来る。まあ当然の話ではあるが。
「テルーおばちゃんでしょ?」
「ああそうだ」
リベリオの発言に頷くタケミ。
「素直なのね。私を疑わないの?」
「悪いやつじゃなさそうだなってダメだったか?」
話していると街の反対側に火柱が上がる。
「お!ユイからの合図だ!暴れてやるぜ!二人も来るか?」
タケミはリベリオたちを誘う。
「嬉しいお誘いだけど無理よ、だって上級女神以上の者に危害加えられないんだもん。私」
「そうなのか?でもネラが親玉の首取っちまえば良いんじゃないのか?」
首を振るリベリオ。
「そうじゃないの、直接身体に呪いが仕込まれてるから上級女神以上は殺せないの私。ほら、私の能力って暗殺向きでしょ?だから良からぬ事しないための首輪をつけられてるの」
「タケミくん、悪いけどここで戦わせて貰うね。立場的にも君を見逃すことは出来ないからね」
リベリオはドレスの胸部分にさしてあるバラを取り出し、それに魔力を込める。
バラは細い刀身を持つ剣へと姿を変える、その刀身から察するに斬る剣というよりは突き刺す剣のようだ。
「そっか」
タケミは構える。
「イサムくん、下がっててね」
「え?あ、はい!」
言われるがままに盾を構えて下がるイサム。
「来るぞクロ!」
「ガルルッ!」
「行くよタケミくん!」
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