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第79話 最強の拳闘王


「タケミ様お疲れ様でした!」

「おう、マートル」

試合後のタケミをマートル姫が出迎える。彼女は沢山の料理が並んだテーブルに案内した。


「次はいよいよチャンピオン戦、しっかり英気を養ってくださいね」


「ありがとうマートル。丁度腹減ったーって思ってたところだったんだ、最高のタイミングだよ。頂きまーす!」

タケミは食事を口に運ぶ。


(今はとにかく闘いに集中だ!その為にも体力回復させておかねぇとな!)


「んー!上手いな!これ外に売ってたやつか?」

「はい!私とベロニカでタケミ様に精がつくものをと、本当は私が作って差し上げたかったのですが」


「ありがとうなマートル、ベロニカ!」

タケミの笑顔にマートル姫とベロニカは顔が熱くなる。


「えへへ、そんな!当然の事ですわ」

「え、ええ、そうですね。わざわざお礼を言われなくとも」



 一方その頃バアル・ゼブルは闘技場を離れ、ある人物にあっていた。


「本当にお一人で来るとは、驚きました」

その人物とはカシンだった。


「まずは証拠品とご所望でした交渉の席に持っていく"手土産を入れる鞄"です」

カシンは封筒と何やら大きな鞄を渡す。


「この性能は確かかな?交渉前にダメになられると困る」

「ご安心を、そこに入れておけば向こう一ヶ月は溶けませんよ」

鞄をみて唾を飲むカシン。


「本当にそれを使うのですか?」

「ふん、我が友人の言う通りだ。君は殺し屋にとことん向いていない正確だな」

バアルはニヤリと笑った。


「お仲間なのでは?」

「確かに、辞めたとはいえ元は同じ軍にいた者同士。それで言うと我がこれからする行動はケジメかもしれん、誤った道をゆく同胞は止めねばならん」

バアルは封筒と鞄を受け取る。


「そうですか、では最後の荷物です。こちらに」

カシンはそう言って近くのレストラン店に入っていく。


 レストランの中には客は殆どおらず、店員すら見当たらない。そんな場所に2人の男がランプに顔を照らされて座っていた。


「彼らで間違いなですか?」

2人の内1人はあのカジノにいたディーラー長だ。


「トリッカー、チープコインは残念だったな。久しぶりだなそれとバンクラプト」


 バンクラプトと呼ばれたもう一人の男、片目に丸いメガネをかけたその男は身体を震わせて座っていた。顔が先程から光っているのは汗だろうか。他の者もどうように酷く怯えた様子で座っていた。


「あ、ああ!」

「バ、バアル・ゼブル……様どうして?」

男たちは立ち上がろうとするが、カシンに目を向けるとその動きを止めた。


「どうかご無礼をお許しください。その殺し屋に許可無く立てば殺すと脅されて」


「構わん、どうせ我はもう抜けた身だ」

そう言ってバアル・ゼブルは大きなソファに腰掛ける、目の前には窮屈そうに座る2人。


「さて、商談といこうか」



『さぁ、皆さま準備はよろしいでしょうか。いよいよ、いよいよチャンピオン戦が始まります!』

既に日は落ち、太陽の代りに闘技場のライトが空を照らしていた。


『それでは改めて、挑戦者とチャンピオンを紹介させて頂きます!』


『もう皆さんご存知、その鍛え上げられた肉体が誇るタフネスと圧倒的なパワーでここまで勝ち上がってきました!試合の見応え充分な挑戦者!』


『怪力剛拳カヅチィィ・タケミィィィィィッ!!』

ゲートが開くとタケミが入場し、彼にスポットライトが当てられる。その後ろからネラも現れる。


「うぉぉぉ!タケミ!お前なら出来るぞ!」

「このままお前がチャンピオンになっちまえ!」


『なおチャンピオン戦はセコンドとして一人付き添わせる事が可能です!他のルールについては後程説明いたしまーす!』


「すげぇ人気だな。ちょっとパフォーマンスぐらいしてやったらどうだ?」

ネラが後ろからそうアドバイスする。


「そうだな」

タケミは大きく息を吸いこむ。


「うぉぉぉ!やってやるぜ!」

大声を張るタケミ、それに呼応するように会場全体が沸き上がる。


「キャーッ!タケミ様ァァ!!」

マートル姫が立ち上がり声援を送る。


「フォル様に譲って貰ったんだ、まけんなよ!」

「楽しんでくださいねータケミ殿ー!」

クレイピオスとフォルサイトも観客席から応援している。


『そしてこの最強の挑戦者を迎え撃つ、闘技場の覇者!』


『その拳の前にあらゆる挑戦者が打ち砕かれてきました。最強の拳闘王!』

ゲートが開きスモークが上がる。


『プロエェェェェェェッ!!』

スモークの中から現れたプロエにスポットライトが当たる。


 豪雨のごとき大歓声が彼に降り注ぐ。

それに応えるように拳を突き上げるプロエ。



 『この決勝戦はルールに多少変更があるのでご説明させていただきます、まずはこちらにある砂時計!』

巨大な砂時計が隣に置かれている。ウェルズがそれに触れると砂時計から光が放たれ闘技場の上空に”3:00”という数字が現れた。


『上にある砂が完全に下まで落ち切った際にどんな状況であれ試合を中断、1分のインターバルを挟みまた試合が再開されます!その間戦士におつきのセコンドと呼ばれる人と共に作戦を立て直すも良し、休息に集中するも良し!』


 ボクシングを始めとするスポーツ格闘技のようなルールを採用しているようだ。恐らくこれも勇者達が持ち込んだものだろう。


「良いか、相手はあのバアル・ゼブルを素手で倒したという男だ」

「分かってる、油断はないよダマトさん」

プロエとダマトはタケミをみてそう話す。


「セコンド?って奴アタシで良かったのか?」

「お前この大会始まってから観てばっかだろ、ちょっとは手伝えよ」

タケミはネラと共に立っていた、彼らの後ろにはスペースがありそこでネラは試合中待機することになるようだ。


「にしても随分と大掛かりだな」

「これで相当稼いでるからな、なんせ女神印の腕輪を賞品にするくらいだし」

ネラがそう言って特別観戦ルームにいるベラードを睨む。



 観客席にはバアルを除いた全員が集まっていた。

「マリス先生にフォルサイトさんお帰りなさい、ってめっちゃ買いましたね」

「ユイも結構食ってるじゃん。ほら、みんなの分も買って来たぞヤキソバって奴」

マリスからヤキソバを受け取るユイ。


「にしてもこのルールってまどろっこしいな、普通に戦えば良いのに」

「確かボクシングだっけ?多分それから持って来てるんでしょうけど」

マリスがユイの隣の席に戻る。


「闘技場で行われる試合はこの街にとって重要な稼ぎですからね、観客が一番注目するプロエ殿の戦いを少しでも長く見せる為でしょうね」

「流石フォル様見事なご意見!お隣どうぞ!」

準備をするタケミをみながらフォルサイトはそう言ってクレイピオスの隣に座る。


「ん?このヤキソバ見た目は知ってるのと一緒なのに凄いエスニックな味!」

「エスニック?ちょっとスパイシーだなこれ」

ヤキソバを頬張るユイとマリス。




『それでは皆様お待たせ致しました!一世一代の大勝負!チャンピオン戦……』

ゴングに向けて狙いをつけるウェルズ。観客は一気に静かになる。


『開始ィィィィィッッ!』

ウェルズがゴングを鳴らす。


「行くぞッ!」

ゴングがなると同時に飛び出すタケミ。


『挑戦者カヅチ・タケミいきなり仕掛けた!素晴らしい挑戦者精神ですね!』


(荒々しいが素晴らしい拳だ。どれも必殺級の威力を持っている)

タケミの攻撃をステップで躱すプロエ。


「赤鬼ッ!」

赤鬼を発動し速度を上げるタケミ。


(次は当たる!)

タケミの拳が相手を捉えようとしたその時。


「……ッ!嫌だめだ!止まれタケミッ!」

ネラが叫んだ。


 タケミにネラの声が届くよりも先に鋭い打撃音が。


「え?うそ、なんで?!」

ユイが唖然とする。


『おーっと!どういう事だ!拳を放ったタケミ選手が何故か倒れています!』


「タケミ!タケミィッ!起きろッ!」


 倒れてはいたが、まだタケミには意識があった。彼の頭の中は混乱していた。自分が拳を突き出した筈なのに、倒れているのは自分、一体何が起きているのか。

(なんだ?何が起きたんだ。なんにも見えなかった)


「どうだ挑戦者、王の拳は効いたかね」

ダマトは倒れたタケミをみてそう言った。


「まだ、まだぁッ!」

立ち上がるタケミは更に蒸気を身体から吹き出し、プロエに向かって走る。


「ほう、やはり立ち上がるか!」

「これはどうだッ!」

拳を大きく後ろに引いた。


(この連打なら!)

必殺の一撃を連続で放つタケミ。以前スライム族のグラトニーナーと戦った際に行った技だ。


 拳が放たれる度に破裂音が発生する。


『なんという連打!まるで暴風雨のようだ!王者プロエ!この攻撃を正面から受けてしまった!果たしてあの攻撃に巻き込まれ生きていられるのか?!』


「すげぇ、なんだあれ」

「あんなの喰らったら……」

口を覆うクレイピオスとアスタム。


「あんなのを喰らったらタダでは済まないでしょう。当たればの話ですが」


「え?それってどういう……」

フォルサイトの発言で振り向くユイ、しかし答えを聞く前に会場全体から驚きの声が上がった。


『な、なんということだ!またしても!またしても!』


 会場に目を向けるユイ。


「そんな、なんでよ!タケミ!」

闘技場中央で倒れていたのはタケミだった。


『倒れたのはタケミ選手だァァァァッ!?』


「いつものチャンピオンと闘い方が違くないか?」

「確かにいつもならもっと攻撃を仕掛けてすぐに終わらせてるのに」

「さっきから殆ど動いてない、もしかして魔法を使ってるのか?」

会場にいる常連らしき者達も混乱しているようだ。


「魔法、そう見えてもしょうがねぇ……滅多に見れないプロエの本気だ」

ダマトはプロエの背中を見てそう呟いた。


「ぐっ、くそ!なんだ?両足に力が上手く入らねぇ!」

立ち上がろうとするタケミ、しかし上手く行かない。


「無理をするな、脳を揺らされると人はそうなるんだ。少し休むと良い、倒れている君に私は手を出さない」

「誰が休むかッ!ーーーーーッ!!」

ふらつきながらも立ち上がるタケミ。


「歩けねぇのは慣れっこでな、こんぐらい何てことねぇよ」

「ふふっ、素晴らしい。そう来なくてはな」

タケミとプロエは構える。



「な、なんなのあれ?タケミが攻撃したのに!魔法も使ってない!」

「魔法ではありません。あれがプロエ殿の拳」

フォルサイトが真剣な表情をする。


「あれが拳を極めた者です」



ここまで読んで頂きありがとうございました!

今後も投稿していこうと思うので評価、コメントなどして頂ければ励みになります!

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