第74話 不気味な相手、そして師弟対決
第二試合、黒兎のクレイピオス対勇者アンノウン。
何度クレイピオスが蹴り倒してもアンノウンは肉体を再生させ立ち上がる。
「女神からの魔力供給無しで、そんなスピードで回復出来るなんてな。回復に特化した能力を授かったのか?」
「女神様と共にいる、女神様と共にいる」
相変わらず相手は同じことを呟き続けるだけで会話にならない。
「はぁ……つまんねぇな!」
今度は少し力を入れて蹴るクレイピオス。
鋭い蹴りはいとも簡単に相手を真っ二つにへし折った。そんな致命傷を負ってもアンノウンは身体をひっつけ立ち上がる。
(妙に脆いから力が集中させられねぇ。今のでぶった切るつもりだったのに)
「うああ、ああ」
うめき声を上げながら立ち上がるアンノウン。
その顔をみてクレイピオスは驚いた。
「うわ、なんだその顔!」
アンノウンの顔は爛れて、一部肉が崩れ落ちている。どうみても平常の顔ではない。
「うわ!なにあれ!」
「まるでゾンビみてぇだな」
ユイとタケミがそう反応する。
「ゾンビ?ああ蘇った死人か、作り話とかで出てくる奴な」
「もしかして回復が過剰に働いて、身体がおかしくなったんじゃないか?」
タケミはアンノウンの肉体をみてそういった。
「うえぇ、気持ちわりぃ」
「あああっ!!」
襲いかかるアンノウン、クレイピオスは飛びあがり避けた。
「今のテメェには、直で触りたくないな。じゃああれ使うか」
そう言うと彼女の口から黒い煙が出始めた。
「うあああ!」
うめき声と共に、飛び上がったクレイピオスに襲いかかるアンノウン。
「ふっ」
追いかけ飛び上がったアンノウンに向け、クレイピオスが一息吹くと黒い気体が放たれる。
アンノウンの身体は黒い気体に触れた所から変化していく。
『おおっと!どういうことだ?!アンノウン選手が石像になった?!うう、なんか今ブルっと来ました、誰かが空調を強めたのでしょうか?』
「石像ってか氷像だな」
クレイピオスが着地し、入退場用のゲートに向う。
「じゃあな、ゾンビ野郎」
彼女の後ろで黒い氷像と化したアンノウンが地面に落下。
芯まで黒い氷となったその肉体は砕け散った。
『アンノウン選手、復活する様子はありません!試合終了!』
ウェルズはゴングを鳴らした。
『勝者クレイピオス!!!』
「おいおい、勇者というのは大したことないではないか。もう全滅か」
「ええまったく、それを統括してるあの女神の底も知れたものですね」
カテナ・ベラードと部下は女神達を嘲笑っていた。
「にしてもあのクレイピオスとやら、いつも鎧を着ている所しか見た事ないがまさか獣人だったとは。バアルの奴めどこであのような珍しいものを見つけたのか。奴隷として売れば高い値がつくだろうな」
「カテナ・ベラード様!ここであまりそのような話は」
「ああん?うるさい、誰かが告げ口でもするとでも?そんな事をしたらどうなるか分からん者はここにはいない、もしいたら既に死んでいるからな」
カテナ・ベラードはそう言うって高笑いする。
一方その頃女神たちは、こちらも部下と話していた。
「ヒーリングコアは機能していましたね」
「はい、回復力だけで言えば私達に匹敵するクラスです」
二人はアンノウンの戦いについて話していた。
「ふうん、なんと呼びましょうか」
「呼び方ですか?」
「そうだ”選ばれた勇者”とでも呼んでおきましょう」
「素晴らしい呼び名ですね、志願者も増えそうです」
そう言うと女神達は荷物をまとめる。
「まあこんな所でしょう。実験体の実戦データは十分取れたので帰りましょう。ここにこれ以上留まるのは良くないと、主神様も仰られているので」
光のゲートを開ける女神。
「畏まりました」
「ああそうだ、そこのワインは土産として持って帰りましょう」
女神は部下と共に光のゲートの中に消えていった。
『さあそれでは第三試合!こんどはまた飛び散ったりするのでしょうか、ちょっと清掃員の人が嫌そうな顔をしていますが、次はもう少し処理しやすい決着が欲しいものですね!』
ウェルズの言葉で会場で笑いが起きる。
先ほどから爆発したり氷となって粉々になったりとかなり過激な展開ではあるが、観客たちはむしろ盛り上がっていた。
『さぁ次もまた異色の組み合わせ!なんと両者共に魔法を得意とした魔法使い!杖を置いた彼女達は一体どんな戦いをみせてくれるのか!!』
ウェルズが闘技場に手を向ける。
『身長170cm、体重は……言ったら炭にすると言われたので省略。烈火のごとき髪を持つ魔法使いは熱い戦いをみせてくれるのか!イトォォォウ・ユイィィィッ!!』
「はぁー出番来ちゃったな」
「気張ってけー!ユイ!」
ゲートが開き入場するユイ、共に控室にいたタケミが後ろで応援している。
『そして相対するは!身長140㎝、体重40kg、海帝族の末裔、海の支配者は闘技場も支配してしまうのか!レクスゥゥゥゥ・マリィィィス!!』
「海帝族知ってるなんて、物知りだなアイツ。さて、行くか」
「楽しんで来てくださいねー」
フォルサイトが後ろで手を振って送り出す。
両者入場し見合う。
(マリス先生、この前は槍の重さと魔力コントロールを駆使した戦い方をしてたけど。武器無しだとどうなんだろう。まあ体格的に私の方が有利だし)
ユイは構える。
(なんとかなる!)
「とでも思ってるんだろうなー」
そう呟いてマリスがニヤリと笑う。
『第三試合開始ィィ!!』
ウェルズがゴングを鳴らす。
「いくぞ!」
開始のゴングと共にマリスは攻撃を仕掛ける。
水流を発生させ、その勢いを乗せた飛び蹴りを放つマリス。
「うああ!いきなり?!」
ユイはその攻撃を防ぐ。
「私は魔法だけじゃないんだよ」
マリスは尻尾をユイの足に絡ませた。
「しまった尻尾!」
「そらっ!」
尻尾を使ってユイを振り回してぶん投げるマリス。
空中で身を翻して受け身を取るユイ。
マリスは自分の尻尾だけで地面に立っていた。
「こっちだって!」
ユイも攻撃を仕掛ける。
マリスはユイの攻撃をいとも簡単にさばいていく。
「体格差があるから有利だと思ったか?今まで何をみてきたんだ?」
「ッ……!!」
逆にカウンターで尻尾の一撃を貰ってしまうユイ。
(リーチの差があると思ったけど、尻尾でそれも返される。というか身長差がありすぎて逆に戦いにくい!)
「プロークルッ!」
ユイは雷を手から放った。
「へぇー雷系の魔法も前よりだいぶ良くなってるな」
しかしマリスは水流を生み出し軽々と流してしまう。
「だったら!……!」
次の魔法を放とうとしたユイだったが痛みで動きが止まってしまう。
(さっき打たれたとこ?なんでまだこんなに痛いの?)
それは先ほど尻尾の一撃を喰らった場所だった。
「驚いてるな、って事はどういう仕組みか分かってない訳だ。やっぱりな」
マリスが尻尾で立ちながら話す。
「魔力を応用した近接戦闘の方法を教えてやるよ。私は先生だからな」
「やっぱり……授業みたいになるのね」
そういってため息をつくユイ。
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