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第63話 注文の多い秘湯


オオエドという何やら聞き馴染みのあるような名前のする街にやってきたタケミ達。


名物をつまみながら彼らは温泉を目指した。

すると一つの看板が。


【秘湯ありマス】


看板に案内され彼らは小屋にたどり着く。


大きくもなく、かと言って小さすぎる事もない小屋。

まあ3人ぐらいなら入れるだろう、というその小屋に彼らは入っていく。


中に入ると看板と3つの籠が置かれていた。


【服を脱いでこの籠にお入れクダサイ】

看板はこれだけでなく奥の扉にもかけられていた。


【中にお入りクダサイ、手拭いはサービス】


「ここで衣服を脱いでください……ってここで?男女別とかじゃないの?」


「あれ、次も部屋だ」

「本当だ」

既に服を脱ぎ終わり、肩に手ぬぐいをひっかけたタケミとネラが扉を開け次の部屋に入っていた。


「いやもう脱いでるし……ああもう!」

ユイも二人に追いつく為にさっさと服を脱ぐ。


自分の服に加えてタケミとネラが脱いだ服も一緒に畳み籠に入れるユイ。そして彼女は杖と手ぬぐいで前を隠しながら次の部屋へと入った。


「2人共せめて手拭いで前隠しなよ」

「こんな布じゃなんも隠せねぇだろ」

「ちょっ!めくるな!ひっぱるな!」

ネラがユイの手ぬぐいを掴みながら話す。


「また看板あるぞ!」

タケミは次の看板の前でそう言った。


【身体のヨゴレを石鹸を使って綺麗に落としてクダサイ】


木製のシャワーが3か所あった。

彼らは各々身体を洗い始める。


「なあ、温泉ってこんな部屋区切んのか?おれが入ってた風呂は全部1つの部屋で終わらせてたぞ」

水を浴びながら話すタケミ。


「それも気になるが一番気になるのは」

「うん、建物の中明らかに広いよね?」

ネラとユイは身体を洗いながら周囲を見渡す。


「外見とは全然違うな。小屋に見えてめっちゃ奥行きがあるタイプの間取りかもしれないし。まあ武器はあるからなんとかなるだろ」

「それもそうか。次こそは温泉かなー」


二人は横に自分たちの武器を置いて話す。



身体を洗い終えた3人は次の扉を開ける。


「まだ温泉じゃねぇみたいだな」


【こちらの頭髪用洗剤を使って髪をお洗いクダサイ。当秘湯はあれやこれやと注文させて頂いておりますが、どうかご承知クダサイ。秘湯はこの次にご用意してゴザイマス】


【この頭髪用の洗剤は髪をぬらさずに使えますので】


「これいいな、髪乾かすの面倒だから便利だな」

「にしても部屋が多いな」


3人は髪を綺麗にし、次の戸を開ける。



「あ、外だ!風呂があるぞ一番乗りー!」

「外だね、小屋は最初にみた感じと一緒だ。走ると危ないよ」


ようやく温泉にありつけたタケミ達。


「みて、ネギが浮いてる!なにこのお風呂」

ユイは温泉に浮いている網袋に入ったネギを手に取る。


「他にも生姜、ニンニク?菖蒲湯とか柚子風呂は聞いたことあるけど、こんなに色々入れるのか。これが身体に良いとかか?」

タケミも周りにある網袋を手に取って中身を見た。


【肩までしっかり浸かって、砂時計の砂が落ちきるまでオネガイシマス】


「だってよ、砂時計ってこれか。よいしょっと」

ネラは看板の上にあった砂時計を持ってひっくり返した。


「はあ〜こんな広々とした風呂なんて初めてだ」

「本当、気持ちいい〜身体の疲れが溶けていく」

「ああ、悪くねぇ。ご自由にお飲みくださいって酒まで用意してくれてたぜ」


タケミは軽く泳ぎ、ユイは空を仰ぎ、ネラは酒を傾けながら温泉を堪能する。



「そういえば昔読んだ本でさ、これと似たやつあったんだよ」

「なんてやつ?」


タケミの話にユイが反応する。


「なんか山奥にあるレストランを見つけた2人の話でさ。店の前に看板があって中へどうぞみたいなのが書いてあったから2人は中に入ったんだ」


「それで?」


「そしたら体をキレイにしろだの、髪を整えて靴の泥を落とせだの言われるんだよ。それと確か身体に塩を塗るんだっけ?」


「え、それで最後どうなるの?」


そう言われるとタケミが次の発言に詰まる。


「……あれ、どうなるんだっけ?」

「ちょっと大事なところじゃん!」


少しだけ考えるタケミ。


「ああそうだ、結局そこは自分たちに料理を出してくれるレストランじゃなくて、自分たちを料理するレストランだったんだ。で、それに気付いた二人は逃げ出した」


話を終えてタケミは首を傾げる。


「おかしいな、この話めっちゃ読んだ筈なのに結構忘れてるな。2人は何してて小屋を見つけたんだっけ?」


タケミは深く考えるのを止める。


「フィクションだし!あっちはレストランでこっちは温泉だからな全然違うか!」


「……まあ、そうかな。なんだかちょっと不安になってきた」


ユイが目線を下してそう言った。


「変わった話もあるもんだな~」

ネラは相変わらず酒を飲んでいる。




3人が温泉に浸かっていると、突然竹の塀の向こうから何者かが現れた。


「カヅチ・タケミ、お覚悟!って、え!?」


そう勢いよく現れたのはまるで忍者のような恰好をした者だった。


「おー忍者だ!!」

タケミが湯船から立ち上がる。


「え!忍者?!」

「ほー忍者かー」

ユイとネラも忍者を見て反応する。


突然現れた刺客、なのだろうが何やら様子がおかしい。


「ななな、なんで!なんで服を着ていないんですか!?」

相手は顔を背けたままタケミ達に指を差す。


「そりゃ風呂だからだろ」

タケミが腰に手を当てて答える。


「で、ではなぜ男女同じ風呂に……!?」

「そりゃあ風呂一つしかないからな」

「まあその点は……まあそうか、なんかごめんね」

答えながら湯船から立ち上がるネラ、その隣でユイが申し訳なさそうにする。


「と、とにかくお覚悟!それとそこの黒髪の方!せめて前を隠してください!」

「前隠したら武器構えらんねぇだろうが」

忍者に向かって武器を構えるネラ。


しかしそんなネラの前にタケミが出る。


「ネラ、手ぇ出すなよ、おれが名指しされたんだ。2人は先に進んでくれ、タイミングよく砂時計も終わった所だしよ」


ネラは武器を下す。


「分かったよ。この先ご馳走が出てきても待ってやんねぇからな。モタモタしてるとユイが全部食っちまうぞ」


「何!ズルいぞユイ!」

「まだ何もしてないでしょ!」


そう言ってネラとユイは先へと進んだ。



「侍の次は忍者か。温泉の感じもあって絵になるなー。さてやるか」

「丸腰なのに随分と自信がありますね」


タケミは構える。


「そりゃあ普段からこうだからな」

「ふ、普段から全裸なんですか!?」

「違うわ!おれは武器持たねぇってこと!」


そう言われると忍者は刀を構える。


「だとしてもこちらは手加減しませんよ!」


「ああ、是非そうしてくれ!」



ここまで読んで頂きありがとうございました!


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