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第57話 グロトとネリア、そしてユイ


街の中を走っていくユイ。


「まてコラ魔法使い!」

「よくも魔法をバンバン撃ちやがったな!逃げんなッ!」


「隙だらけなのが悪いんだよー!」

後ろから追いかけて来る二人を挑発しながら進む。


(ここまで2人は魔法を使ってこない。転移魔法や飛行魔法を使わずにダッシュで追いかける。魔力量は凄まじいけど、使い方に関しては全くの素人。だったら勝ち目は十分ある!)


ユイはわざと相手との距離を開きすぎないようにしながら走り続ける。


「クソ!この身体だと走りづらい!」

少年の姿をしているグロトは急に足を延ばし下半身だけ陸上アスリートのような姿になった。


「うわ!なにそれアンバラスすぎない?」

「うるせぇ!テメェが逃げるからだろ!オレ自慢の姿を崩させやがって!」


ある程度走っていくとユイは立ち止まる。


「全く逃げ足だけは一丁前だな!」

「ようやく止まったなこのヤロー!」


グロトとネリアが怒鳴る。


「まあ、これぐらい離す事ができたら十分でしょ」


「え?離す……」

「ああ!!族長、じゃなくてグラトニーナさま達からめっちゃ離されてるじゃん!グロト!」


ユイの言葉を聞いて後ろを振り向くグロトとネリア。

二人はまんまとユイに乗せられた事に気付く。


「うるせえ!なんで気が付かなかったんだよ、ネリア!」

「うるさいうるさい!グロトが馬鹿みたいに追いかけるから!」


グロトとネリアはまた喧嘩し始めた。


(なんだこの人達、ずっと喧嘩してるな)

そんな事を思って二人を見ているユイ。


「いやちげえな、ネリア。なんで俺たちはこんなに走らされたか、よーく考えろ」

「そうだね」

怒鳴り合っていた二人は急に口論を止め、ユイの方を向く。


「「テメェのせいだ」」

ユイを指差す二人。


「えー、いきなり意見が一致するの」

ユイが嫌そうな顔をする、このまま二人がずっと口論をしてくれれば良いのにと思っていたのだろう。


グロトとネリアは体を変形させる。


(まるで液体みたいに、さっきもやってたけどそういう魔法?違う、魔法を使えるならもっと早く出してるはず)


「ネリア、お前は右からだ、俺は左からだ」

「りょーかい。コイツムカつくけど美味そうだし、半分こだね」


二人は体の一部を液体化させてユイを襲う。


(二人は魔力の塊みたいな存在。どんな行動にも魔力の流れがある、私にとっては動きを予測しやすい!)


瞬時に二人の魔力の流れを察知したユイは、相手の攻撃が来る場所を予測し回避した。


自身の上を通り過ぎた二人の身体、それが背後にあった岩に触れる。

すると岩は、触れた部分から削れるように消えていった。


(岩が無くなった?この液体の身体が触れた部分が消化される現象、間違いない)

これをみたユイは二人が一体何者なのか気付く。


「あなた達スライム族でしょ?」


「言ってなかったか?そうだ!俺たちは無敵の種族!スライム様だ!」

「私達はなんでも喰って強くなる!もちろんアンタのことも喰ってやるよ!」


胸を張ってそう言うグロトとネリア。


「スライム族ってもっと小さいんじゃないの?両手に収まるサイズって図鑑に載ってたけど。それに捕食スピードも遅いから動かない土や草木とか食べてるんじゃないの?」


「そんな落ちこぼれ連中と一緒にするな!」

「そうだ!私達が真のスライム属なんだ!」


二人の話を聞いて色々と考えを巡らせるユイ。


(二人の話から察するに過剰成長した特殊な個体?他の者も一緒だろうな)


「ふぅーん、そうなんだー」

ユイがそう言うとグロトとネリアがまたイラつき始める。


「あ!お前なんか真に受けてないって感じだな!」

「馬鹿にして!」


「そういう所は鋭いな。にしても何で人の格好してるの?スライム族ってそんな感じなの?」


どんなに成長しても姿かたちがこんなに大きく変わる訳はない、恐らく彼らは人間の姿に擬態してるのだとユイは考えた。


「変身してるの、こっちの方が人間は油断するでしょ?」

「でもネリアはバカだから人間の女になんか変身してんだ。そんなんじゃ一部の人間しか寄って来ねぇ。俺みたいに子どもになりすましとけば、すぐに色んな人が寄って来る。楽だぜ向こうから飯がやってくるんだからな」


「うわー、性格悪」

二人の説明を聞いてユイは若干ひく。




「おい、ネリア。コイツは一気に片付けちまおう」

「そうだね。すばしっこいし、魔法ウザいし」

二人は体を液体化させる。


「「融合!」」

液体が互いに混ざり一つの身体になった。


「融合した俺たちは身体の変形スピード、捕食スピード両方ともに劇的にパワーアップするんだ!」


「そうですかッ!」

ユイは火炎魔法を放つ。


「ネリア!」

「分かってる!」

魔法を包むように体を腕を変形させるグロトとネリア。


「魔法が呑み込まれた!?」


「なんだコイツの魔法?本物の炎みたいだ、勇者たちのと違う。通りで食いにくい訳だよ」


彼らの身体に吞み込まれた魔法はみるみるうちに小さくなっていき、最後には完全に取り込まれてしまう。


(言う通り変形のスピードと捕食スピードも上がってる。さっきは通用してた魔法まで食べられちゃった。でもそれには色々と制限があるみたいだね)


ユイはグロトとネリアの周りを飛び回りながら魔法を放つ。


「右だよグロト!次は後ろ!」

その間ネリアはずっとグロトに攻撃が来る方向を教えていた。


当然グロトもユイの攻撃を見て反応しているが、死角から来る攻撃はネリアが報告していた。


(やっぱりそうだ、2人でコントロールするものを分担してるんだ。グロトって方が肉体変形をコントロールして、ネリアって方が捕食をコントロールしてる)


ユイは相手の融合の意味を理解していく。


「クソッすばしっこいな!!だが!」


「っ!これは!?」

地面に着地した瞬間、ユイの脚を何かが掴む。


グロトとネリアの身体だ。


「ハハハ!テメェが地面に降りた時にすぐ掴めるように根を張っていたんだよ!!」

「ナイスじゃん、グロト!このまま捕食ってあれ?あ!コイツ鎧みたいなのつけて捕食の邪魔してる!!」


「そりゃあそれぐらいの対策はしておくでしょ」

ユイは相手の特性を知ってからすぐに自分の周りに魔力の鎧のようなものを纏っていたのだ。


「だがその魔力も俺たちにとってはただの飯だ!そのまま食い破ってやる!」

「まずは脚だ!」


「離しなさい!」

ユイは自身の脚を掴む相手の身体に杖を突き立てるが弾かれる。


(しょうがない、こうなったら最大火力で!)


すると突然、二人が伸ばした身体が切断される。


「なんだ?!」

「切れちゃった?!」




「大丈夫か!」


何者かがユイの側に現れる。


「あなた達は!」


側に立っていたのは弓を構えた男性と鋼鉄のかぎ爪を腕に装着した女性だった。


「キングとクイーン!?」

「久しぶりだな、ほら立てるか?」


驚くユイに手を貸し、立たせるクイーン。


「まさかこんな事になってるなんて」

「地下にいたお陰で連中の襲撃を免れたみたいだ」

周囲を見渡すキングとクイーン。


「おいみろよ、また雑魚が出て来たぜ」

「勇者?キャハハ!今さらそんなのが出てきてどうすんの!」

グロトとネリアがキングとクイーンをみて笑っている。


「言ってくれるね」

「手痛いな、本当の事だけどさ」


「二人とも良いタイミングで来てくれたよ!手伝って欲しいんだけど、良いかな?」

ユイは二人の手を取って話す。


「そのつもりで来たが、連中の言う通りだ。俺たちの魔力はもう殆どないし、例え全盛期の力があっても大した力になれない」

「あんたへの攻撃を一回阻止できただけでラッキーさ。次はもう私達自身が壁にでもならないと……」


キングとクイーンが申し訳なさそうに話す。


「じゃあ2人に魔力を分けるよ!」

ユイがそう言うと二人は呆気にとられた顔をする。


「え?」

「いや、これはただの魔力譲渡で済む話じゃなくてだな……」


「ちょっと背中見せて」

キングとクイーンは言われた通りユイに背中を向ける。


ユイは二人の背中に手を当てる、すると光が二人を包み込む。


「魔力が湧いてくる!」

「っ!なんだこれ!」

キングとクイーンは自分に起きた変化に驚きを隠せないようだ。


「どう?」


「凄い、こんな事ができるなんて」

「すげぇ、今がまさに全盛期って感じだ!」


そう言う二人にユイが顔を近づける。


「じゃあ二人に私が見つけた相手の特性を伝えるから、それに気をつけて動いてね。時間を少し作って欲しいの」


「よし、分かった」

「今の私達なら出来る!」


キングとクイーンがユイに加わり、合体したグロトとネリア攻略を開始する。



ここまで読んで頂きありがとうございました!


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