第55話 静かになった街
大領主バアル・ゼブルの館。
そこでバアルはフォルサイト達と話をしていた。
「それで、どうだった?」
「街2つは壊滅。女神率いる勇者達がいましたがこちらも全滅、いや厳密にはあと5分後に全滅しますね。とにかく装備品等を残して跡形もなく消えていますね」
「あの食欲バカ、メチャクチャしやがって。巨人も色々調べる前に食いやがったし」
マリスはソファにドカッと座りお菓子を食べる。
「連中が向かっている先は?」
「あの山です」
フォルサイトからの報告をきいて、嫌そうなため息をつくバアル。
「はぁー、やはりそうか。流石に今回ばかりは見過ごせんな。だがこっちもすぐに向かう訳にいかないしな。アイツらに知らせるか」
「それなら問題無いかと、もうネラ殿が気付く頃合いでしょうし」
「アイツら丁度襲われた町にいるぞ、小さい方、多分これから魔力の痕跡でも追ってオスティウムに向かうんじゃないのか?」
「2人が言うなら問題ないな、では我々は目の前の事に専念させて貰おうじゃないか。いやはや、早速連中を生かした恩恵を授かれるとはな」
バアルがそういうとマリスは残念そうな顔をする。
「あーあ、あそこ色んなお菓子が集まって楽しかったのにな。ゼブル様の宿は元々予約制で予約無い日はクローズしてるから被害は特になかったけど」
「まあ、形あるものはいずれ無くなる。幾度もみてきた光景だ。さて、では我々のすべきことをしに行こうか」
バアルはそういって立ち上がる。
荒野を5人組が歩いていた。
その者達の周囲には剣や鎧がいくつも転がっている。その他にも地面の焼けた後、大きな爆発でもあったのだろうか。
「勇者ってーのもゴミよりはマシってぐらいだね。たまーに美味いのが混じってたけど。女神は中々美味かった、良い魔力してたね」
5人のうち一人の女性が周囲に散らばった装備品を蹴とばしながらそう話す。
そんな彼女に不機嫌そうな少年が話しかける。
「ネリア、お前さっき俺の分の女神もつまみ食いしただろ!」
「良いじゃん別に、そんな取られたくなかったらグロトの名前書いときなよ」
初老の男性が言い合いしてる二人の間に割って入る。
「喧嘩すんなよ家族でよ」
「サーフィのじぃさんは口挟むんじゃねぇよ」
「そーだそーだ!」
「テメェらさっさと行くぞ!急がねぇといつ魔神王のやつがこっちの動きに気付くか分からねぇんだからな!」
5人の先頭を進む者が3人に向かってそう声を上げる。
「へーい族長」
「はーい」
「……」
3人は会話を止めて再び歩き始める。
「族長じゃねぇ、女帝グラトニーナ・レッカーマウル様と呼べっつってるだろ?僕はいずれこの世界の全てを喰らい尽くすんだ」
女帝を自称するグラトニーナという者は胸を張ってそういった。
「まったく女帝様も色々と影響され過ぎだぞ。その名前も、ワシらが人の形をとっているのは都合が良いだけなんだからな」
「まあそう言うなよ、良いじゃねぇか俺たちのグラトニーナ様が天下を取る。カッコイイじゃねぇか」
サーフィの後ろから青年の見た目をした者が話しかけてきた。
「まったく、そりゃお前のように能天気なら気にする事でもないだろうがな、ガツ」
その様子を物陰に隠れながら見ている女神がいた。
「ミディカ様!グリーディ様!」
隠れながら魔石に可能な限り小声で話しかける。
「報告は」
グリーディが応答する。
「全滅です、私以外!」
「じゃあなぜ帰還しない?すぐにゲートを開けばいいだろう?」
ミディカがそう言うと隠れている女神が首をふる。
「他の女神もそうしました、だけどダメなんです!ゲートに入る前にみんな食べられて!私は一体どうしたらっ!」
「食べられた?」
女神の報告の一言に引っかかるミディカ。
「れ、連中は人の形をしてますが人じゃない、身体がうねって、皆が喰われて!」
「お、まだ喰い残しがいたか」
と報告をする女神の背後から声が。
振り向くが何もいない、水溜りがそこにあるだけだった。水溜りは自分の片足にまで広がっていた。
「え?」
次の瞬間、女神は身に着けていたものだけをそこに残し消えていた。
「おい!どうした!返事をしろ!」
「無駄だ、もう返事は来ない」
呼びかける部下にミディカがそう言う。
「どうされますか?」
部下がミディカとグリーディの方を向く。
「放っておけ、あの街は下級連中に管理させておくのに丁度いい場所だったが。今は構ってられん、切り捨てるしかない」
「そうよミディカは忙しいの、この前グランドオーク達に返り討ちにあったって話ですし」
グリーディがそういうとミディカが立ち止まる。
「マリンネで死神相手に尻尾巻いて逃げ帰った奴がなにかさえずっているか?随分と余裕ぶっているじゃないか、予定通りと言わんばかりにな。まあいい、私は新薬の開発に戻る。邪魔をしたら消すからな」
この言葉を置いてミディカは部屋を出ていった。
「……」
グリーディの眉間に皺が寄る。
「そ、そのグリーディ様……」
グリーディは部下の女神に声をかけられると咳払いをし、表情をもとに戻す。
「私もこればかりはミディカと同意見よ。今は無駄な厄介ごとに首を突っ込んでる場合じゃない。特に今回は相手が悪すぎるわ」
部下にそう伝えるとグリーディも部屋を出ていった。
タケミ達はネラを先頭に荒野を突き進んでいた。
「で、どうしたんだよ急に走り出して!」
「マズイ事が起きてる、いやこれから起きようとしてる。ユイ探知範囲を最大まで広げろ!出来るだけ前方向に!」
「分かった!」
「おや!皆様お急ぎですか!!!?」
すると突然ウェルズが三人の前に現れた。
「ウェルズ!」
タケミがそう言うと彼は帽子を取ってお辞儀をした。
「ハハハハハッまたお会いしましたね!」
ネラはウェルズに近寄る。
「そうだウェルズ!馬貸してくれ!」
「ええ、そう言われるだろうと思ってすでに」
彼の後ろから黒い首無し馬のウェイキーが現れた。
「それで行き先はどうします?」
彼は馬に三人が乗るのを確認し、行き先を尋ねた。
「オスティウムだ」
ネラが答えた。
「おお!あそこですか、良いですよねここら辺ではお買い物スポットとして有名ですよね」
「だが今回は買い物目的じゃねぇ」
ネラは街の方向に目を向けていた。
「のようですね!さあっ!駆けよ我が愛馬よ!!!」
彼の号令と共にウェイキーが駆ける。
彼らが馬を走らせていると周囲に装備品などが散らばっている場所を通過する。
他にも地面の焼けた跡などからみるに激しい戦闘があったようだ。
「おい、さっき転がってたのって」
「勇者達の装備だね。ついさっきまで戦闘があったみたい」
タケミとユイがそう話しながらも先に進んで行く。
「さあ、見えてきましたよ!」
ウェルズが相変わらず馬に振り落とされそうになりながら前方を指さす、するとオスティウムが見えてきた。
「どういうことこれ?」
ユイ達が過ごしたのと同じオスティウムとは思えない程静かだった。
「何にもないな」
「ああ、人っこ一人いないぞ」
街に入ったネラとタケミも周りを警戒しながら、他の者と馬に乗ったまま街中の大通りを行く。
「それだけじゃない、見ろ、肉屋の籠の中も空だ」
以前彼らがそこにいた時には籠の中に商品の鳥が入っていた。
「ああ、生きたままそこで捌くやつだね、最初見た時ちょっとビビったけど」
ユイがそう言って他を見渡す、動物を入れていた籠は壊れている訳ではない。まるで最初から何も入っていない空の状態で設置されたのかと思うほど綺麗な状態であった。
「随分腹空かした客が来てたんだな」
どの屋台も食料になりそうなものは全て無くなっていた。その代わり衣類や貴金属を扱っている所はそのまま残っている。
「タケミ、動物の臭いとかするか」
ネラがタケミにそうきくと彼は首振って答える。
「匂いは全部痕跡程度で、生きた奴の匂いはしないな」
「みんなでピクニックでも言ったのでしょうか」
ウェルズは地面にぶつかりそうな帽子を押さえながら、ウェイキーに揺られ街中をゆっくり進む。
「笛吹男でも現れたか」
「ああ、彼ならこの世界にはいないですよ、今頃は子供たちの面倒を見るのに苦労しているでしょうな。音楽や狩猟は彼の得意分野ですが子育てはどうなんでしょうね」
タケミとウェルズが話をしながら街中を見渡す。
「にしてもこんな奇妙な光景、中々お目にかかれませんね。大体失踪するときは食事はそのままで人だけ忽然と姿を消した〜ってのがお約束なのですが。ここはお料理もなければお花すらありませんね。あんなに賑やかだった街がこんなにも静かになる事があるなんて」
話しているとネラがウェルズの元に来る。
「ウェルズ!もうここは良い、次の場所に連れてってくれ!」
「畏まりました!皆様と初めてお会いしたあの街ですね!」
ウェイキーに乗って進んでいくとユイが何かを感知する。
「ネラ!」
「どうしたユイ、もしかして」
頷くユイ。
「うん、見つけたよ。もう街のかなり近くまで来てる、5人」
「強そう?」
タケミが後ろからユイに話しかける。
「強いかどうかはまだ分からない。けど、魔力量が」
そう話すユイは驚きを隠せないといった表情をしていた。
「魔力量が多い、マリスさん達よりも」
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