第51話 溶岩と猛毒
試練を終えたタケミ、彼を花婿として迎え入れる為の祝宴を行うという事でマートル姫たちは食料調達に里を出る。
その間留守番をしながらグランドオーク達と遊んでいたタケミ。
すると勇者達が里に押し寄せて来た。
どうやら何かを求めて里を襲撃するらしい。
「て、テメェッ!!不意打ちとは卑怯だぞ!!」
タケミに向かって剣を向ける勇者。
振り向くタケミの足元には、頭を握り潰され灰へと変わっていく勇者2人の身体が転がっていた。
「ああん?テメェらが勝手に油断してただけじゃねぇか。それじゃあ宣言してやるよ、テメェらをここで叩き潰す」
「な、なんでそんなにここの肩持つんだよ!お前攫われたんじゃないのか?!」
勇者の1人がタケミに向かって叫ぶように質問する。
「なんでだろうな。テメェ等が気に食わねぇってのもあるんだろうが。うーん」
タケミは顎に手を当てて考える。
「きっと愛してるからだと思う」
「はあ!?」
「まだこの気持ちがそうなのか誰かに聞いた訳でもねぇが。この里はおれの大事な人達のものだ、テメェ等が勝手に踏み荒らして良い場所じゃねぇんだよ」
「そ、そんな事でこの人数を相手にするのか!!」
そう言う勇者たちの後ろには更に多くの勇者達が来ていた、どうやら後続の者たちが到着したようだ。
「するねッ!」
そう言ってタケミは勇者達に向かって攻撃を仕掛けた。
タケミが正門から押し寄せる勇者達との戦闘を開始した直後、正門とは別の方向から勇者達が来ていた。
「おい、どうやら向こうは始まったみたいだぞ」
「みたいだな、今のうちに潜入だ。ちゃんとこのマントつけてるか?魔力を抑えないと連中にすぐに見つかっちまうからな」
勇者の集団にいる重装備の者が走りながら作戦を再度確認し始める。
「正面の連中が注意を引いて、別働隊の俺たちがその隙に秘薬を入手する。良いな、任務遂行が最優先だ!例え仲間が何人死のうが先に進むんだ!」
彼らはグランドオークに伝わる秘薬を求めてやって来たようだ。
里の側面の岩場を進む勇者達。
するとその内の1人が先頭を走る重装備の勇者を呼び止めた。
「あれ、ちょっと待ってくれ……」
「なんだよ!止まるなって言ったのが聞こえなかったのか!!」
呼び止める声に、前をみながら返す重装備の勇者。
「違うんだよ!進もうとしてるんだけど足が動かなくて……」
「何言ってんだ?」
重装備の勇者が振り向く。
後ろを走っていた何人かがその場で立ち止まっていた。
「お前ら……それどうした?」
彼らの足元を指さす重装備の勇者。
「なんだよ……え?」
彼らが自分達の足元を見るとそこには泥だまりがあった、しかしそれは先ほど雨が降って出来たとかそういうものではない。
その泥だまりは彼らの足をどんどんと呑みこんでいく。
「底なし沼?!こんなちっさい底なし沼なんてあるのか!?」
すぐに抜け出そうとする勇者達。
彼らの殆どが既に体の半分程吞み込まれている。
彼らが沼に気付いた直後、沼がボコボコと音を鳴らし始め、赤く発光し始めた。
「あ”あ”あ”ッ!?なんだごれッ!!だずげでッッ!!」
沼に沈んだ者達は必死で助けを求める。
しかしあっという間にその赤く発光した沼に沈んでいく。
「あれ、泥じゃねぇ、沼でもねぇよ!」
赤く発光し周囲が歪んで見える程の熱気を出すそれを見た勇者達が動揺する。
「溶岩だ!!走れ!もう見つかってるぞ!」
一目散に走り始める勇者達。
すると今度はその溶岩が周囲を溶かしつつ勇者達を次々と呑みこんでいく。
「流石タケミちゃんだねー!アイツらは不意打ちとか大好きだからきっと正面以外にもいるって話だったけど本当だったねー」
走る勇者達の前にホットチョコが現れる。
「そんなに急いでどうしたのー?そんなに秘薬欲しいの?」
「お、オークッ!!」
勇者達が武器を構える。
「あー、やっぱダメだなー。タケミちゃんをみるとすっごい体が熱くなるのに、アンタら観てるとむしろ冷めるわー」
彼女は手元に武器を生成した。
作り出されたのは鎖鎌だった。
「あたしの武器キュートっしょ?」
鎖鎌の分銅と呼ばれる、金属の塊の方を振るホットチョコ。
「クソッ!」
勇者の1人が盾を取り出し防御の姿勢を取る。
「あー、ダメダメ、センスゼロ!」
分銅は盾ごとその勇者に絡みつく。
鎖と分銅が赤く発光すると、一瞬でその勇者を高温で焼き切った。
「な、なんだよ今の?」
「いちいち驚いてくれるのはウケるんだけどさぁ、察し悪すぎじゃない?この状況をみたら私がさっきの溶岩作ったのわかるっしょ?」
ホットチョコの周囲から溶岩が噴き出す。
「もういいや、さっさと終わらしてタケミちゃんと遊ぼーっと」
溶岩の波が勇者達に覆いかぶさる。
一方その頃ホットチョコがいる反対側
「早く走れ!あのブーメランどこまで追っかけてくるんだ!!」
また別の勇者達の部隊が全力疾走で森の中を進んでいた。
彼らは後ろから迫るブーメランに酷く怯えている。
幾つものブーメランはまるで意思でもあるかのように木々の隙間を縫って彼らを追跡していく。
「はぁッはぁッ!なにここ……!まだ走り出してすぐなのに息がっ、苦しいっ!!」
走っているうちの一人がスピードを落としてしまう。
「おい何してんだ!!後ろッ!」
他の者が注意する。
しかし次の瞬間その走るスピードを落とした者の頭にブーメランが直撃する。
その者の頭が吹き飛んだ。
「クソッ!!急げ!!」
そのまま走っていくと突然、先頭集団がバタバタと倒れていく。
「おいおい、今度は何だよ!!」
残された勇者は周囲を見渡すが誰もいない、しかしよくみると彼らの周囲に紫色の霧が漂っていた。
「これは毒か!」
「あれ?そういえばさっきのブーメランは?」
周囲を警戒していると、どこからか声がし始める。
「へぇ、あなた達ちょっとだけ毒に耐性あるんだぁ。でも……」
紫色の霧の中から紫色の針が飛んできて彼らに刺さる。
「ゴハッッ!!なんで毒が効くんだ」
「やっぱりぃ、ちょっと毒性を上げるだけですぐダメじゃんねぇ。タケミくん程じゃないなぁ、つまんなぁい。秘薬欲しいって言ってたけど秘薬もあなた達には猛毒だから扱えないとおもうよぉ、そんな弱い毒耐性してたらぁ」
毒針で倒れていく者達の前にディープパープルが現れる。
周囲を溶岩で覆ったホットチョコは里に向かって歩き出そうとする。
「ふあーあ、つまんな。と思ったけど」
すると背後から水の弾が彼女に目掛け発射される。
背中を向けたままホットチョコはそれを鎖鎌で斬り裂いた。
「へぇ、溶岩の中でも生きられるやついたんだー」
ゆっくりと振り向くホットチョコ。
そこには重装備の勇者が溶岩の上に立っていた。
「クソ、バレてたか!だが良い、お前の溶岩は俺の能力の前には無力だ!」
重装備の勇者はそう言うとポケットから瓶を取り出し一気に飲み干した。
「うん?何それ?」
「エリクサーだ!俺たちの力を引き上げてくれる神薬!いいぞ!力がみなぎってくる!これで任務を遂行する!」
彼はそう言って溶岩の中に飛び込んだ。
まるで水の中を泳ぐように溶岩の中を進む勇者。
それを見てホットチョコはため息をつく。
「なーんだ、女神様からの能力か。まいっか、ちっとは遊んであげるかな」
その頃ディープパープルの方でもまだ戦闘は終わっていなかった。
「おぉ、パープルちゃん特製ミストが流されていくぅ。ブーメランも届かないねぇ」
ディープパープルの周囲では突風が吹き荒れている。
その中心に一人の男が立っていた。
「俺の能力は風だ!貴様の毒は俺には届かねぇッ!!作戦遂行のため貴様らにはここで死んでもらうぞ!オーク共!」
そう話す勇者の足元には瓶が転がっていた。
エリクサーだ。
「へぇ、そんなの使っちゃうんだぁ。ま、チョコちゃんもまだ遊んでるみたいだし私も遊ぼぉっと」
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