第50話 試練の後に襲撃者
タケミはとある部屋で目を覚ます。
「ん?ん-、よく寝たな」
彼は周囲を見渡す。
「あれ、ここは?最初にいた部屋か?」
彼は玉座の間にいた。
そこに用意された大げさなサイズのベッドの上で目を覚ましたのだ。
彼は体を起こし、部屋の扉を開ける。
中庭では皆が何か準備をしている。
「タケミ様!」
「おお!皆のもの!我らが花婿だ!」
マートル姫とベロニカがそう言って駆け寄って来た。
「カヅチ・タケミ殿、お体の調子は如何でしょうか」
「ああ、もうすっかり元気だ!よく寝たしな」
「流石ですわ、あれほどの怪我を殆どご自身の治癒力で完治してしまうとは」
二人はタケミの身体をみて改めて彼の自然治癒力に感心する。
「そういえば皆なにかしてるけど、これって」
「祝宴の準備ですわ!言葉を変えればそのぉ~」
マートル姫がもじもじする。
「ほら姫様、勇気を出して」
後ろからベロニカが囁く。
「け、結婚式です!あなたと私たちの!」
「え?!結婚?」
驚くタケミ、それもそのはず。
彼は試練を受けはしたが、その試練がなんの為のものかは全く知らないままだったのだ。まさか花婿を見つける為の試練だとは夢にも思っていなかったのだ。
「そういえばまだカヅチ・タケミ殿に説明してませんでしたね。我々の種族はグランドオークと言って女性しか生まれないのです。そんな我々はより強い子孫を残す為に他種族の男性を探すのです。その過程で生まれたのがあの試練、毒などに耐性があるか、病原菌はどうか、火や水、雷によってもその命は保たれるのか、などなど。簡単に言いますと戦闘力などをみるものですね。」
「で、それをおれは乗り越えたから結婚って事か?」
タケミはここでようやく試練の目的を聞かされた。
「そう言う事ですね」
「あー、そうか……うーんそれっておれはもうここに住むって事か?」
「ええ、既に花婿が住まうための部屋をご用意させていただいていますわ」
そう言われるとタケミは申し訳なさそうな顔をする。
「そうなのか、いや悪いな。おれはまだここには住めないんだ」
「え!?」
「ど、どうしてですか!」
動揺する二人。
「もしかしてもう既に他の女性と結婚されてるのですか!?その点はご心配なく我々はその方も新しい家族として迎え入れますので。そもそも我々全員の夫として貴方様には住んで頂くつもりですので」
「いや、そういうんじゃないんだ。俺の仲間との約束があってな、それを果たす為に旅してんだ。それが終わらないと」
ベロニカたちにそう説明するタケミ。
マートル姫が頷いた。
「そういう事でしたのね。分かりました、ではここに住むという話は一旦保留で。祝宴だけでも行いましょう」
彼女はタケミにそう言った。
「いいのか?待たせるような事して」
「少しばかりの外出くらい何てことありませんわ。それが貴方様の進むべき道というなら私たちは全力で応援いたします。私は、そして里の者はタケミ様を愛していますので」
この時の姫の声はとても優しい声だった。
タケミはこの声を聴き、胸が温かくなるような感覚をえた。
初めての感情だった。
「では私達は祝宴の食材調達に向かいますわ」
「調達?ああ、そっかおれが飯散々食っちまったからな。おれも行くよ」
里の門で出発の準備を終えたマートル姫にタケミがそう言う。
「いえいえ、花婿様にそのような事はさせられません。ここでお休みください、里の警備を兼ねて数名程ここに残しておきますので。チョコ、パープル!」
ベロニカがそう言うと二名のグランドオークがやってきた。
1人は黒髪に赤のメッシュ、もう1人は黒髪に青のメッシュだ。
「ホットチョコって言いまーす。このメッシュは最近いれてみました、良かったらタケミちゃんも入れてあげましょうか?」
「ディープパープルでぇす、姫様の近衛だけど姫様の命で村のお留守番兼タケミくんの護衛につきますぅ」
二人が自己紹介をする、マートル姫やベロニカに対してかなり軽いノリの二人だ。
「ちょ、ちょっと二人共!いくら何でも距離を詰め過ぎよ!」
「そうだぞ!なんだその呼び方は!」
二人を注意するマートル姫とベロニカ。
「だってもう花婿なんでしょー?いいじゃないっすか」
「そうそう、お二人共硬すぎだよぉ」
チョコとパープルは両サイドからタケミに抱き付く。
「あああ!」
マートル姫が顔を真っ赤にする。
「ほらほらぁ、姫様も呑気にしてると私達に先越されちゃうよー」
「越されちゃうよぉ。それともぉ私達にとられるの怖いんだったら交代しますぅ?」
「ぐ、ぐぐ!べ、ベロニカ!すぐに食料調達終わらせますわよ!」
そう言ってマートル姫は足早に里の門から外に出ていく。
「さっきまで他の女性がいても大丈夫って懐深い感じだったのに。急に変わったな、どうしたんだ?」
「そりゃあやっぱり里の中で一番最初に結ばれたいって言うのはあるでしょうよー。姫なんてめっちゃ早い段階からタケミちゃんにベタ惚れだったんだからさ」
「まぁ、私達もタケミくんの事好きだから簡単に譲る気もないけどねぇ」
まだ抱き付いている二人はそう言った。
「そういうもんなのか?まだよくわからねぇな、そういうの」
それからしばらくして
「いけぇチョコちゃん」
「ぐぬぬぬ!」
「うおッ!やっぱ強いな!」
ホットチョコとタケミは腕相撲をしていた。
その様子をディープパープル含め里に残った者たちが観戦していた。
「よっと!」
「チョコちゃん負けたぁ」
「いてて、流石だわーじゃあ次これ!」
今度はチェスのようなもので一緒に遊んだ。
「はい、私の勝ち!」
「あれ!?またかよー強いなぁ」
タケミは全然勝てずにいた。
「タケミちゃん直線的すぎ―、手が読みやすいよ。もっと色々な手を使わないとどんなに強い手も対策されたらしんどいよー?」
「はっはっは!まるで今のおれその者だな!試練も、最後にマートルが受けるんじゃなくて避けてたらおれに勝ち目なかったしなぁ」
ホットチョコの言葉にそう答えるタケミ。
「でもタケミくんはその一手が滅茶苦茶強いんだよねぇ。それを極めるでも良いと思うけどぉ」
「なるほど、色々な手を用意するのととっておきの一手を極める。両方とも試す価値ありだな」
そんな話をしているとディープパープルが部屋の外に目線を向けた。
「うん?なんだろぉ?何かきてるねぇ」
「あ、本当じゃーん。これって勇者の魔力じゃない?結構来てるねー」
ホットチョコも気がついたようだ。
「なんだ勇者が来んのか?知り合いなの?」
「違うよー、この前喧嘩売ってきた勇者何人か攫っちゃったから怒ってるのかな?」
「というかタケミくんって魔力探知マジでできないんだぁ。そんなに強いのに不思議だねぇ」
ボードゲームをやめた三人は外に出ていく。
「なんだ、魔力を感知するなんてそんなに皆できるもんなのか?」
「そうだね。全員が全員じゃないけどー、少なくとも私達は生まれた時から出来るし。ヒト族も訓練したら出来るはずだよ」
「基本強い人は殆ど出来るよぉ。というか魔力で身体能力強化したり魔法使うからぁ。純粋な身体能力だけで戦うなんてタケミくんぐらいだよぉ」
ホットチョコとディープパープルにそう言われたタケミは今まで出会った相手を思い出した。確かに皆何かしらの方法で魔力を使っていた。あのソウトゥースも魔力の扱いが苦手とは言え炎や爆薬を魔力や魔法で生成し自分の技を強化していた。
里の正門近くに勇者達が大勢集まっていた。
「よし、全員里に到着したな。他の奴ももうすぐ来るな」
「女神様が自身の目を誘拐された勇者の身体に仕込んでたお陰であっさりと見つかったが。魔力探知をさせない結界にかなり近くまで来ないと目視出来ないし音も聞こえないとは、かなり厳重だな」
里の正門越しに見える部分を注意して覗き込む勇者達。
「テメェらなんのようだ?」
そんな彼らに向かって正門の上からタケミが呼びかけた。
「なんだお前!オークじゃないな?」
「お、おい!あの大男だ!大領主と戦ったっていう!なんでこんな所に?!」
タケミをみて勇者達が驚く。
「さてはオーク共に攫われたのか!?まさか反逆者の一味までいるとはな」
勇者のうち一人が武器を構える。
「まあ、まてよ」
「そう欲張りなさんな」
その中で少しばかり偉そうな男女の二人組が前に出た。
「今の最優先事項はこっちじゃないだろ?」
「そうそう、まずはこのオーク達の里だ」
二人はそういってタケミを見上げた。
「どうだ?俺達と手を組まないか?ここから出してやる。その代わり一緒にこの里を襲撃してくれないか?」
「あんたも相当強いんだろう?私達の仲間になってくれたら、女神様に頼んで命だけは助けて貰えるようにしてあげるわ」
(ま、そんな保証どこにもないけど。コイツは戦力になるわ)
タケミに交渉を持ちかけた二人。
「ふーん、そう言う事か」
そう言うとタケミは姿を消した。
「あ、あれ?どこ行った!?」
「あ”あ”あ”ッッ!?」
「な、なにするのよ!!」
見上げていた勇者達は声のする方を見る。
先ほど交渉をもちかけた二人が頭をタケミに掴まれていた。
「な、なんだ!いつのまに!!?」
勇者達が武器を構える。
「や、やめッ!」
「はなしてッ!」
タケミは掴んだ二人の頭を一気に握りつぶした。
「里に手出しはさせねぇぞ、おれが将来住む場所だからな」
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